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強く
「胡桃坂…くっ付き過ぎ!」
「なんだよ?間宮だって、こんくらい、くっ付いてる事あんだろが」
「俺はいいんだよ」
「何でだよ?!」
さっきから、優琉と胡桃坂、喧嘩ばっかり
「やめろって。水無瀬が困ってるぞ?」
「広瀬、こういう時、どうすればいいの?」
「こういう時はな?」
グイッと広瀬に引っ張られる
「こうすればいいんだよ」
「そうなの?」
「「んな訳あるか!」」
わぁ…
息はぴったり
俺達が、ワイワイ騒ぎながら歩いてると
少し離れた場所で立ってる人が
こっち…見て…?!
「見~付けた」
あいつだ…
「水無瀬?」
「暁?あいつなのか?」
「うん……」
「へぇ~~?水無瀬 暁って言うんだ?苗字まで変わってたとはな。じゃあ、この前のは、ほんとに新しくできた兄ちゃんか」
ゆっくりと、こっちに近づいてくる
皆が、俺の前に出る
「待って…皆は下がってて…」
「何かしようもんなら、すぐ警察呼ぶぞ」
「はっ!呼べば?捕まったって、あいつら、ずっと見張ってる訳じゃねぇからな?何回だって来れるぜ?で?水無瀬 暁君?お前の、とんでもなく財布の紐も、ついでに股も緩い母ちゃんの借金、どうしてくれんの?」
笑ってる
全然…
警察に捕まる事、怖がってない
「警察の人…母さん…探すって言ってた…」
「探して?見付かるのか?見付かって、金返せんのか?あの女が、そんな金、持ってる訳ねぇよな~~?お前なら分かるだろ?」
持ってる訳ない…
と、思う
でも…
「母さんの借金は…俺には関係ないって言ってた…俺は…もう水無瀬 暁だ」
「へぇ~~?たった何年?何年前から水無瀬になったの?曽川 暁よりは短いんだろ?」
!!
「まあ…曽川 暁の記憶なんて無くしたいか。お前…ごみ溜めの中のゴミみたいだったもんな?」
「やめろ!!」
「警察呼ぶぞ!」
「水無瀬、警察呼ぶからな?」
「うん…」
優琉が警察に電話してると…
「はっ!お前ら知ってんの?こいつの母親はなぁ…いい男、金のある男とありゃ、すぐ股開く様な…」
「やめろ!!」
「聞けよ!騙されてんだぞ?お前ら!ほんとのそいつは、こんな小綺麗じゃないんだ!ふはっ!水無瀬 暁だ?必死に普通のフリしたってな?お前には、あの女の血が流れてんだよ!マトモになんか生きてけるか?!俺が、お前に合ったとこ連れてってやるって言ってんだよ!」
胡桃坂や、広瀬が、必死に何か言ってるけど
聞こえない
ずっと頭の奥に追いやってた事…
俺は…曽川 暁には…母さんの…
曽川 愛の血が流れてて…
だから…
だから俺…
槇田さんとあんな事して
あんな事されて…喜んでたんだ
「お前にピッタリな仕事紹介してやるよ!お前みたいのに突っ込みたい変態が山程居るからな!ケツ振って金稼げんだ!ピッタリだろ!」
母さんと同じ…
男の人のもの挿れられて
あんな声出して
俺…母さんと同じ…
「んっ…ぁあ~~っ!…あっ!」
「おい、ガキ!向こうすっこんでろ!」
「母さん…大丈夫?」
「あ?ああ…大丈夫だから、向こう行ってろ」
寝てる間に、母さん帰って来てたんだ
なんで母さんも、あの男の人も、裸なんだろう
なんで母さん…あんな苦しそうな事してるんだろ
母さんの苦しそうな声…聞きたくないのに…
耳塞いでも聞こえる
……静かになった
こそっと覗くと
「シャワー借りるぞ?」
「はいは~~い♪︎」
母さん…元気だ
機嫌いい
お金?
何日かに1回
知らない男の人が来て、同じ様な事が起こる
母さんの声は嫌だったけど
その後の母さんは、いつも機嫌良かった
……静かになった
男の人…シャワー浴び終わった
母さん…シャワー浴びに行った
きっと母さん機嫌いい
シャワー浴びて来たら
少しは…母さんのとこ行ってもいいかな?
?
シャワー浴びたら帰るのに
男の人が、俺の方に近づいて来てしゃがんだ
「お前………」
そう何かを言いかけて
「手…出せ」
言われた通り手を出すと
「ちっちぇ手だな…」
そう言って、何かを両手に乗っかるだけくれた
「チョコだ。食え」
そう言って、帰って行った
俺は…絶体に見付からないとこを探した
なんでか、母さんに見付かっちゃダメな気がした
大切に…大切に……
食べたいの我慢して
長い間かけて、全部食べ終えた
母さんが、見てくれなくても
母さんに怒鳴られて、叩かれても
連れて来た男の人に
外に出されても
何故だか
あのチョコがあるだけで
いつもより、ずっと悲しくなかった
「暁…帰ろう?」
?
悠兄?
目の前に、悠兄が居て泣いている
「悠兄…どうしたの?泣いてる…」
「~~っ…暁…暁が泣いてるからだよ?」
「………え?」
ほんとだ…
泣いてた
「ごめん……?…ここ…何処?」
「警察署だよ?暁…大丈夫?」
「警察署……」
いつ…
「あれ?あいつは?皆は?」
「警察の人、捕まえてくれて…皆は、俺が来たから、帰って行ったよ?」
「はぁ~…もう、大丈夫そうか?水無瀬」
「え?……柿内先生…なんで…?」
「皆から連絡もらってな?兄ちゃんの番号知らないから、先生来てって。水無瀬、泣いたまま…なんの反応もないから、心配したぞ?」
俺…
ずっと泣いてたの?
先生来たのも知らない
「水無瀬君、大丈夫かい?こんな時に悪いんだけど…今分かる事だけでも話してもらえるかな?」
「水無瀬、大丈夫か?また、明日とかにしてもらうか?」
「暁…今、考えれなくない?」
「……母さん…俺の母さん見付からないですか?母さん見付かっても意味ないですか?あいつ…警察に捕まっても、ずっと見張られてる訳じゃないからって言ってた……俺…どうしたらいいですか?」
「暁……」
誰が何て言ってくれても
あいつが納得しない限り
何度だって俺のとこ来る
「すまないいね。指名手配って訳ではないから、地道に探すしかなくてね…」
「水無瀬、先生達も交替で付けないか、相談してみるな?」
「~~~~っ…もう…いっそ…俺が仕事して返せばっ…」
「それは、ダメだ!そんな事する必要ないぞ?」
「~~~~っ…でもっ…先生っ…俺っ……皆と違うっ…からっ……」
「何が違う?違うってんなら、皆違うぞ?水無瀬も違う中の1人だろ?」
そうかもしれないけど
でも、俺だけ全然違うんだ
俺…おかしいから…
小さい頃、なんで母さんがあんな事するのか分からなかった
苦しそうな声出して、凄く嫌だった
でも、何日も居る人以外は、男の人が居なくなった後
母さんは、お金握ってて、嬉そうにしてて
ああ…
あれやると、お金貰えるから
母さん苦しくてもやるんだって分かった
欲しい物の為に…
俺も同じ
欲しいものの為に、あの人と…
悠兄と…
やっぱり俺……
母さんの子供だ
母さんと同じ
母さんみたいに…
「~~~~~~~~っ!…っ!…~~~~っ!」
「暁!」
あんな風にして母さんが稼いだお金で
そのお金で、俺生きてたんだ
「~~~~っ!~~~~っ!」
「暁!声出して!唇噛まないよ?暁!」
怖かった
気持ち悪かった
母さん苦しそうで、心配もしたけど
それだけじゃなくて
あんな苦しそうなのに
笑ってる母さんが怖かった
苦しそうなのに
男の人に腕を回す母さんが
気持ち悪かった
その全てを声にしてる様で
聞きたくなかった
あの人としてる時に
ふと、自分の出してる声が
母さんのものと似てると思った
けど…
それ以上考えないようにした
けど、変わらない
俺は、あの人に居て欲しくて
セックスしてたんだ
「~~っ!~~~~っ!~~~~~~~~っ!」
苦しそうなのに気持ち良さそうな
そんな顔を浮かべて
そんな声出して
あの人を繋ぎ止めたんだ
「暁っ!!」
悠兄の声は聞こえたけど
後は…もう、分からなかった
バンッ!
何?
こんな夜中に…誰?
「愛~~…お~~い…」
母さんの名前…
母さんは今日、居ないよ?
「お~~い!愛!居るんだろ?!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
怖い…
居ないよ…母さん…
「うるせぇぞ!何時だと思ってんだ?!」
「あ~~?!うるっせぇ!」
「あ?うるっせぇのは、てめぇだ!」
「あ?やんのか?てめぇ…」
「うるせぇぞ!お前ら警察呼ぶぞ!」
「ちっ!覚えてろよ!」
ガンッ!
行った…
怖かった…
朝…
学校…行かなきゃ
ガチャガチャ…
ガチャ
あ…母さん帰って来た
「マジムカつく…あり得ねぇな…」
なんか…
機嫌悪そう
話し掛けずに
着替えて、顔を洗う
ランドセルに教科書を入れてると
「おい!お前!」
「……何?母さん」
「お前が居るせいだからな?!こんな…こんなに酒飲んで…男…男…~~っ!お前が居るから!お前のせいで!」
バンッ!
バッグが飛んできて
俺の顔をかすって壁にぶつかった
「ごめんなさい、母さん…」
「さっさとお前も働け!この金食い虫が!」
「俺に…出来る事ある?」
「~っ!ねぇよ!お前みたいなクソガキに出来る事ある訳ねぇだろ!」
「ごめんなさい…もっと大きくなったら働く…」
「お前…これ買って来い」
お酒…
「買えないよ…前に断られたもん」
「ああ?!使えねぇな!ほんと!」
「ごめんなさい…俺…学校行かなきゃ…」
「はっ!行って来いよ...その教科書も、鉛筆も…全部全部全部!まだまだ、どんだけ金かかんだよ?!」
「……ごめんなさい…行って来ます」
分からない…
どれだけかかるんだろう
なんで…お金ないのに学校行かなくちゃいけないんだろう
学校じゃなくて
なんでもいいから
仕事出来るとこ行きたい
あれ…寝てたんだっけ?
「おい、脱げよ」
え?
誰…
「おら、さっさと脱げって!」
ドンッ
そうだ…
ここ…中学校
俺…またこの人達に……
「さ、今日もちゃんとイケるかな?」
「くっくっくっ…おら、しっかり扱けよ」
「しょうがねぇな…やっぱ俺達の咥えないと、イケねぇのか?おら…咥えろ」
「あ?何顔逸らしてんだよ?こうだよ!」
「はいはい、口と手、頑張ってね~~」
「俺達とお前、全員イクまでだからな?」
なんでこんな事…
なんの意味があるの…
「はい、お疲れ~」
「お前、エッロ…そっちの仕事でもしてんの?」
「絶体初めてじゃねぇだろ?キモッ!」
初めてじゃない
もう何度、この苦さを味わったか分からない
俺…気持ち悪いんだ
そうだ…
俺が怖くて気持ち悪いと思ってた事
似た様な事してる
俺は気持ち悪いんだ
ふわっ…
あ…なんか…
いい匂い…
安心する
あったかい
良かった
1人で怖かったから
「暁…」
優しい声
こんな俺に
そんな優しい声掛けてくれる人…居るんだ…
「暁…好きだよ…大好き…」
あれ?
これ…
知ってる
「暁…愛してる…俺も、父さんも母さんも…暁の事…愛してる…」
悠兄だ
「……はる…にぃ…」
「暁…おはよう?やっと目覚めたね?」
「悠兄…俺…いっぱい寝てた?」
「今、夜の11:00位」
「心配かけて…ごめんなさい…」
「ううん…暁…大丈夫だよ?大丈夫だからね?」
悠兄の胸の中…
何度も何度も安心を貰ってきた場所
「悠兄…」
「ん?」
「俺の母さんね?男の人とセックスする仕事してた」
「~~っ…暁…それ…今思い出さなくていいよ」
「欲しい物の為にね?セックスしてたの…俺も同じ…」
「何言ってんの?!暁は、違うでしょ?!」
悠兄が、ぎゅっと抱き締めてくる
「違うって思い込んでたけど…そう思いたかっただけで…同じだった」
「違うよ…暁は、そんな事してない」
「今日、あいつに言われて気付いた。気付かないフリしてたけど、俺は槇田さんに一緒に居て欲しくて、セックスしてた…どうしようもない不安の中で、安心が欲しくて、悠兄とセックスしてた……欲しいものの為にセックスしてるの…一緒だったんだ」
悠兄が、ゆっくりと腕を緩めて
俺を胸の中から出す
そして、俺の頭を撫でながら目を合わせる
「暁…聞いて?」
「うん…」
「暁が、その人と一緒に居て欲しくてセックスしたのは、その人が、そう思い込ませてしまったからだよ?」
「…?」
「セックスをしたら、喜んでもらえる。セックスをしたら、褒めてもらえる。セックスをしたら、一緒に居てくれる。セックスが、どんなものかも知らない暁に、そんな風に思わせたのは、その人。暁が、そうしたくて、した訳じゃないよ?」
そうだけど…
多分、あまり良くないものだっていうのは、分かってた
それでも、俺は…
「俺とするのも同じ。その人が、セックスで
、安心も不安も教えてしまったから、だから暁は、セックスでしか安心出来なくなってしまったんだよ?暁がそうしたくてしてる訳じゃない」
「……でも…結局俺はしてる」
「行為の意味が大切なんだよ?暁は…したくないのに…泣きながらするだろ?そんなの、自分でセックスしたいって思うのとは、かけ離れてるよ?」
意味…
色んな理由あっても…
俺が、セックスしたいと思ってるのに変わりないけど…
「俺、気持ち悪いでしょ?」
「何言ってんの…気持ち悪い訳ないでしょ?」
「俺は…気持ち悪いと思う…好きな人じゃないのに……あんな顔して…あんな声出して……それで欲しいもの貰えたら喜んで……気付いたら…~~っ母さんと同じ事してたっ……」
「暁っ…ねぇ…気持ち悪くなんてないよ?暁…俺は…全部知ってるでしょ?でも…暁の事気持ち悪いなんて思わないよ?」
悠兄が、額や頬にキスしてくる
「あいつがっ…言ってたんだっ…俺に合ったとこっ…~~っ…連れてってくれるってっ…~~っ…」
「ダメっ!ダメだよ?絶体行っちゃダメだからね?暁…行っちゃダメだよ?」
「~~っ…俺…皆と同じとこっ…居ていいの?」
「いいんだよ…俺の傍から…居なくなんないでっ…暁…俺の弟でしょ?俺…暁のお兄ちゃんでしょ?居なくなんないでっ…」
「~~~~っ…悠兄っ…」
優しくされると
益々…俺とは違う気がする
でも…
その優しさや安心出来る場所を
知ってる自分が居て
以前の自分じゃないんだって
少し安心する
「悠兄…ここが…いい………もう…あの生活…戻りたくないっ…」
「そうだよ?暁は、ここに居なきゃダメだよ?」
「母さんみたいにっ……~~っ…生きてきたくないっ…」
「そんな必要ないよ?暁は…俺の弟で、父さんと母さんの子供で、間宮君の彼氏で、柿内先生の生徒で……クラス皆に守られる暁を…生きてけばいいんだよ?」
「皆にっ…迷惑…」
「迷惑じゃない。心配なだけ。皆、心配で、暁の為に何かしたいだけ」
「悠兄~っ…」
1番落ち着く場所
悠兄の胸の中
どんな時も…いつでも…
俺を安心させてくれる
俺の1番落ち着く場所
俺が、どれだけ困らせても
無理な事言っても
絶対的に味方で居てくれる
絶対的な安心感
「暁……寂しいか?」
「……ん…?」
「1人は…寂しいよな?」
槇田さんも寂しいの?
「愛もな…寂しがり屋なんだぞ?」
そうなの?
全然俺と一緒に居ないよ?
「暁にも…いつか分かるかな?」
分かるかな…
「寂しいに負けると…傷つけてしまうんだ」
傷つけるって?
「強くないと…負けてしまうんだ」
強く?
「俺も…あんまり強くないんだ……」
あ…
悠兄にくっ付いたまま寝ちゃってた
悠兄も俺も、服のまま…
悠兄…寝てる
寝息聞こえる
………槇田さん
まだ…優しかった頃の記憶…
槇田さんは負けてしまったんだろうか
それで
俺に、あんな事するようになったのかな
俺には、まだよく分かんないよ
でも…
強くないと…大切な人…泣かせちゃうのかもしれない
俺が弱いから
皆が心配して、泣く事になるんだ
もっと…強くならなきゃ
「暁…ほんとに大丈夫?」
「大丈夫。皆も迎えに来てくれるし、あいつが来たら、また警察呼んでもらう!」
「そっか…なんか…暁、元気だね?」
「うん…俺…もっと強くなる。俺が弱いから、皆大変だから…もっと強くなる」
「暁……もう、十分強いよ」
ピンポ~ン
チャイムが鳴って行くと
「おはようございます。水無瀬…大丈夫か?学校行けるか?」
「柿内先生…も…来てくれたんですか?」
「心配でな。学校行けるか?」
「はい!」
皆みたいに強く
悠兄みたいに強く
俺は
ここで生きていく
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