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バスケ部

夏休みが始まって間も無く 暁が旅行中に とんでもない行動に出てしまった俺を 凌久は、馬鹿にするでもなく 一緒に楽しんでくれた 俺は弱いから 1人残されるのは嫌だ 凌久が居なくなるなら、一緒に連れてって欲しい そんな事、ウジウジ考えてたら 凌久が嬉しい事言ってくれた ペアリング… 考えただけで、嬉しい 凌久と同じ物を凌久と選んで 凌久と同じ物を、いつも持って居られる 嬉し過ぎる 凌久の家に泊まって帰る時は やっぱり寂しかったけど お互いに気になるの探してみようね、とか言われたら なんだか…帰ってからも繋がってるみたいで 思ってたよりは寂しくなかった 暁が、沢山のお土産話を持って、元気に帰って来て 毎日、どんなペアリングがいいのか、見出したら、凄い時間経ってて… あっという間に、実家に帰る準備をし始めて 「戸締まりヨシ!エアコン止めてくの…ちょっと怖いけど…暁、忘れ物ない?」 「うん。大丈夫」 「じゃ、帰ろっか」 「うん!」 たった数ヶ月で、色んな事あったなぁ 暁も、全然違う暁になった 「暁…俺ね、この日はバスケ部の後輩達に会いに行こうと思ってるんだけど…暁1人で大丈夫かな?」 「大丈夫…だと思う…」 「分かんないよね?久しぶりに、実家だもんね?暁さえ良ければ、俺と一緒に行く?」 「…え?」 「暁は、沢山の人達居るとこ、苦手だろうなと思ったけど…もし大丈夫そうなら、一緒に行ってみる?」 今の暁なら 家で、母さん達が居なくなるのを見るより 外に居る方が安心かも 「まだ何日かあるし、考えてからでもいいよ?」 「うん」 「あと、凌久もだいたい同じ位居るから、会えるといいなって」 「凌久さん、早く会ってみたい」 「じゃあ、母さん達と出掛ける日とか聞いて、早めに決めちゃっていい?」 「うん!」 ついに… ついに、ようやくほんとに 暁と凌久が会うんだ 少し不安もあるけど それより楽しみで楽しみで 「母さん、ただいま」 「ただいま」 「お帰り~!2人共元気だった?」 「うん」 「母さん、この前会ったし、昨日も連絡したよ?」 「それでも、心配なのよ~」 暁を、ぎゅっと抱き締めてる 暁、嬉しそう 「明日、明後日はお父さんも休みだから、お墓参り行って、何か美味しい物食べましょ?何がいい?お寿司?中華?イタリアンな感じ?」 暁が、母さんの勢いに圧倒されてる 「母さん…とりあえず、荷物置いて来るよ」 「そうだった!行ってらっしゃい」 「暁、行こ?」 「うん」 久しぶりの自分の部屋 変な感じ でも、変わりない 変わりなくしてくれてる 安心する 荷物を整理して、暁の部屋に行くと ベッドの上に座ってた 「暁、下行こ?」 「うん……懐かしいなって思える位…俺、ここに居たんだね?」 暁の隣に座る 「暁にとって、懐かしいって思える場所になってて嬉しい」 「初めて来た時は、こんな風に思える場所になるなんて、全然思ってなかった」 「そうだね…俺も、暁とこんなに仲良くなれるなんて、全然思わなかった」 「うん……」 「暁、母さんのとこ、行こ?」 「うん」 関わらない方がいいのかなって思ってた 何処かで、他人事だったんだ 母さん達が居なくなって あの、衝撃的な事がなければ 俺達は、兄弟なんて呼べるほど、親しい関係には、なってなかったのかもしれない 母さんは、ずっと喋ってて 暁も楽しそうに聞きながら、母さんに聞かれては、自分の事を話す 自分の事… いっぱい話せる事があって そんな暁になれたのが、誇らしい 「暁~~!悠稀!よく帰って来たな~」 「父さん…お帰りなさい」 「父さん、お帰り」 父さんも、暁をぎゅ~ぎゅ~抱き締めている 「父さん、暁が潰れちゃうよ」 「あ…ごめん」 「ううん…大丈夫」 「あ~…仕事終わって帰って来て、暁と悠稀が居る…はぁ~…疲れが吹き飛ぶ~」 「あら…悪かったわね?いつもは私だけで」 「えっ?!…いや…違う違う!違うよ?違うんだよ…いつもは…」 キッチンに消えてった母さんの後を、焦った様子で追いかける父さん 久しぶりだな 2人共、相変わらず 「暁、あっち行って座ってよう?」 「うん」 ソファーに座ると、暁が振り返って父さん達を見ている 「悠兄…」 「ん?」 「父さんと母さんって、こんな感じなんだって…家族ってこんななんだって…ここに来て知った」 「暁…」 「ここで俺…色んな知らなかった事知って…色んな初めてを貰ったんだ」 13歳で知った…13歳なのに知らなかった… 13歳で貰った…13歳まで貰えなかった… 父さん達を見ている様で、何かを思い出してる様な… それまでより暁にとって良い環境だとしても 13歳まで育った環境とは、まるで別の世界に来た暁の気持ちは、俺にはまるで想像も出来ない しかも… 俺達が安全なんだって…初めは思ってなかったみたいだし… どんなに心細くて、怖かったろう… それが今は ここで初めてを知ったんだって こんな穏やかな顔で言えるんだ 「暁…凄いね。いっぱい頑張ってるね」 「?……悠兄達が居るからだよ」 「そう?…じゃあ、いっぱい一緒に頑張ってきたね?」 「うん!悠兄…大好き」 「俺も暁…大好きだよ」 お墓参り、外食、買い物… 2日間、家族で沢山一緒に過ごして 「じゃあ暁、行こ?」 「うん、行って来ます」 「行ってらっしゃ~い」 結局、暁を連れて学校へ行く事になった 「暁、学校まで一緒に行く?それとも、何処かで待ってる?」 「悠兄、バスケするの?」 「う~ん…どうだろ?流れでする事になるかも…」 碧と行くからなぁ なんか、相手してとか言われそう… 「じゃあ、一緒に行ってバスケしてるとこ見たい。でも俺、部外者なのに行って大丈夫?」 「ちょっと人が寄って来ちゃうかもしれないけど、俺の弟なのに、帰れとか言わないよ。人が沢山来るのは大丈夫?」 「大丈夫じゃなかったら、悠兄に隠れる」 「ふっ…いいよ」 大丈夫じゃないって、言わないんだ 凄いね、暁… 「悠稀~!」 「碧、お待たせ。弟も連れてっていいかな?」 「おお…溺愛の弟か!」 「初めまして…暁です」 「初めまして、宇沙美 碧音です。はぁ~…なるほど…可愛い弟だな」 「俺…行っても大丈夫ですか?」 「練習の邪魔しなきゃ大丈夫だろ…まあ…悠稀の弟ってだけで、群がられそうだけど…」 群がられる… 大丈夫かな… 「暁…どっか、その辺で時間潰す?」 「えっと…どうしよう…」 「大丈夫、大丈夫!俺と悠稀が言えば、皆ちゃんと大人しくしてくれるから」 「じゃあ…やっぱり悠兄がバスケしてるとこ見てみたい」 「はるにぃ!かわい過ぎか!」 暁が、ビクッとする 「碧…突然おっきな声出すと、暁ビックリするから…」 「おお…ごめん、ごめん。でも、体育館行ったら、皆声デカイから、ビックリするなよ?」 「分かりました…」 「そ~~っと…そ~~っと…」 「うわぁ…凄い真剣……俺達行って大丈夫かな」 「大丈夫だろ。こっそり入ってくぞ」 「気合い入ってるね…」 「お、あれ野口じゃね?」 「どこどこ?…あっ…ほんとだ!凄い声出してる」 「な?なんか、すげぇ先輩っぽくなってる」 少しの間見てると… 「あ~~っ!!水無瀬先輩!宇沙美先輩!」 「え…ああ~~!ほんとだ!」 見付かった途端、わらわらと寄って来た 暁が、ちょっと俺の後ろに来る 「暁…大丈夫だよ」 「はいはい!落ち着け~!今日は悠稀の弟君も来ている。運動部の迫力に慣れてない。声のボリュームを抑える様に!」 「はい!」 が、大きくて、暁がビクッとした けれど、その後は、碧の言う通り声のボリュームを抑えてくれたので 暁も、少し安心した様だ 「水無瀬先輩、弟さん大切にしてましたもんね~?」 「え?俺…なんか話した事あったっけ?」 高校の部活の… しかも1年の後輩に? 「いえ、試合や大会近くでも、弟さんが1人だからと部活休んでたので、皆とても大切にされてるのは知ってました」 「まさか、その弟さんに、実際に会える日が来るとは思いませんでした」 「あ…あの…初めまして…水無瀬…暁です…」 また、ちょっとだけ俺の後ろに隠れると 「あ…すいません。見過ぎました」 「つい…それにしても、さすが水無瀬先輩の弟さん…絶対いい人オーラが出てますね…」 「はいはい!暁君鑑賞終わり~!…で?今のキャプテンは?」 碧…ありがとう 「暁、大丈夫?」 「うん…」 あれ… 怯えた? 「やっぱり、どっか行ってる?」 「ううん……悠兄…俺のせいで部活…休んでたんだ……ごめんなさい」 「暁…暁に頼まれた事なんてないよ?俺が勝手にした事だよ?」 「俺が…1人で置いとけなかったから…そう思わせたから…」 「暁…」 あの頃は暁… 自分の事で一生懸命で、そういうの考えられなかったんだ 当たり前だ 暁が悪い訳じゃないのに… 「大丈夫だよ、暁君」 「え…?」 いつの間にか、俺達の近くに皆集まってた 「悠稀は、俺のバディだったけど、どんなに休んでも、ちゃんと俺と一緒に試合出てたから。試合や大会は休んだ事ないし。必ずレギュラーで出てたよ?」 「碧…」 「ほんと?」 暁が、不安そうに聞いてくる 「ほんとだよ?」 「そうそう!結構休んだりしたら、レギュラーの座を!って、2年の先輩達必死になるけど、結局水無瀬先輩には敵う訳もなく…」 「そうだ!水無瀬先輩、宇沙美先輩、ちょっとだけ相手してくれませんか?」 「それがいい!せっかくだから、弟さんにも、水無瀬先輩のバスケしてるとこ、見てもらいましょうよ!」 「んな事言ってお前ら、俺らを使いたいだけだろが」 「え~~?いやいや…まさか~~」 なんか、前より接する距離が近く感じるのは 1年だった子達が、2年になって、先輩になったから…なのかな 「悠稀、行こ?」 「暁、行って来て大丈夫?」 「うん。見たい」 暁の前でバスケする日が来るなんて ほんとは凌久も見たいだろな… 「体鈍ってるから、相手にならないかも」 「そこは、技術でカバーだろ?行くぞ」 「うん」 久しぶりのバスケは、やっぱり楽しくて なんだか、色んな事あり過ぎて 引退してから、バスケする事もなければ 考える事も、殆どなくて 全然別世界に居たのに 「悠稀!」 碧とだって、たまにしか会わないのに 碧の動きが… 碧の考えてる事が分かる ああ…そうだ こんな感じだった こうやって…フェイント入れて… シュート…と思わせて… 「碧!」 「はぁ~~!楽しかった~!」 「碧…全然息切れてないね…俺は、もう限界」 「くっそ~~!2対5なのに負けた~~!」 「悔しい~~!どんなんでも、あの伝説のアオハルに勝ったって、自慢したかったのに~~!」 「伝説って…俺達去年まで部員だよ?」 「っつ~か、最初から正攻法で勝てないと思ってる時点で負けだな」 碧が、ピンッと2年のおでこにデコピンする 「無理言わないで下さいよ!間近で先輩達見てきてるんですよ?正攻法で勝てるなんて、思える訳ないじゃないですか!」 「うわぁ…思いっきりネガティブ発言」 「大丈夫だよ。来年には、俺達なんかより、ずっといいプレーしてるよ」 「水無瀬せんぱ~~い!ほんとですか~?3年の先輩達、すっごく心配そうに引退してったんです~」 え~? そんな去り方してくかな… でも、なんて言うか… 技術は、練習と経験から付いて来るだろうけど それよりも… 「それは、お前らに、そんな気持ちがあるから、そう見えたんだろ?」 「え?」 「自分達が引っ張ってってやる!見てて下さい!って顔してなかったんだろうよ?せんぱ~い!置いてかないで~…って顔してたんじゃないのか?」 「うっ…」 さすが碧… 「俺達だって、3年の先輩達引退した後は、不安だったよ?誰だって、初めから上手く先輩にはなれないし、上手く引っ張っても行けないよ。少しずつ、皆で考えて、話し合いながら成長してくんだよ」 「水無瀬先輩も?宇沙美先輩も?」 「そうだよ?」 「当たり前だ」 2年が、顔見合せてる 「この2人で上手く出来ない事なら、俺達が上手く出来なくたって、当たり前だよなぁ」 「な?そっか。そういうもんか」 「なんだ…なんか、ちょっと肩の力抜けたかも」 「俺も。確かに、3年が居なくなった途端、俺達のレベルが急激に上がる訳じゃないもんな?」 なんか…空気が変わったかも そっか 頑張んなきゃ!どうにかしなきゃ!って 余計に力入ってたんだ ちょっと…1年萎縮してる感じあったし… 「いいか?もう1年と2年で協力するしかないんだから、1年は2年の言う事よく聞く!」 「はい!」 「2年は、1年が尊敬して言う事聞ける様な先輩目指す!」 「はい!」 「以上!解散!」 「ありがとうございました!!」 学校からの帰り道 「なんか…変なスイッチ入って…俺…すっごくウザイOBになってなかった?」 碧が、なんだか元気ないと思ったら… 「全然?碧の話、皆キラキラした目で聞いてたよ?」 「そっかあ?……暁君は、まだキラキラしてるな」 暁は、ずっとぽ~~っとしている 「相当、兄ちゃんのバスケしてる姿、煌めいてたんだな?」 こくこくと頷いている 「暁に、そんな風に思ってもらえて嬉しいな」 ほんとは… 凌久にも、格好いいとこ見せたい… 「それにしても、碧…やっぱり部長向きだね?」 「俺は、そうは思わないなぁ」 「そんな事言って断ってたけど、今日見てて、やっぱり部長っぽかったよ」 「悠稀は、あんまり強く言わないからなぁ…けど、3年の時、既に1年から相談とかされてたろ?それはもう、悠稀の才能だな。話し掛けていいオーラ出しまくり」 オーラ… 暁に接して感じとか、少しは関係あるのかな… 「そうかな?でも、碧のお陰で1年も、もう少し萎縮しないで、2年と話せそうな雰囲気になってたね?」 「萎縮…してたか?」 「うん。何となく…やりづらそうだった。2年も気負いし過ぎて、そういう感じとか、伝わっちゃってたのかもね?」 「…ほんと、それは才能だな…あ~あ…また悠稀とバスケしたい病だ。なぁ、たまにでいいからさ、バスケサークル入んない?全然ガチな雰囲気じゃないから、気軽に体慣らす感じでいいからさ」 碧に、何度か誘われてるけど サークルって言っても、ただじゃないだろうし たまにでも時間取られるし 断ってきた 「な?入会費1000円払ってやるから!あと年会費、たった500円!」 「え?安いね?」 「だろ?!な?!元々週1だし、全然月1とかでもいいし、たま~に、ボール触りたくなる事あるだろ?」 「まあ…それは…」 「な?!な?!初心者居たり、入会から、イベント以外顔出してない奴居たり、ゆっるいサークルだからさ!」 確かに、年会費500円で 月1回位なら… 「ちょっと…考えてみる」 「マジで?!うわ!諦めないで言ってみるもんだな!」 「え?俺、入るなんて言ってないよ?考えてみるだけだよ?」 「でも!ちゃんと話聞いて、考えてくれんの初めてだろ?進歩!すげぇ進歩!」 「ふっ…そんなに喜ぶ事かな…」 「だって、ガチまではと思って、部活じゃなく、サークルにしたけど…それはそれで楽しいんだけど…やっぱ今日みたいなプレーするとさ…」 うん… それは分かる 血がね…騒ぐよね… 「じゃあな~!いい答えを待ってるぞ~!」 「ははっ…またね」 サークルか… 大学のバスケサークル入ったら… 凌久にも…見てもらえる? ……ちょっと…考えてみよう… 家に帰っても、ぽ~~っとしてる暁に 母さんは、俺がどんなだったかを聞き出し 中学、高校のエピソードまで語り始め 俺は、凌久に部活見学、暁も一緒に行った事を伝えた 『マジで?暁も一緒に行ったの?』 良かった 反応、普通 ちょっとだけ、心配だったから 『ほんとは、凌久にも見て欲しかった』 凌久に… サークルの事、相談してみようかな 反対なんてしないだろうけど 碧と一緒にってのが、きっと、いい気持ちはしないよな… 『俺も見たかったな…バスケ部の水無瀬君』 すぐ馬鹿にする やっぱ… やだよなぁ 俺だったら、俺が居ないとこで 部活だろうと、サークルだろうと 凌久が奏と一緒だって思ったら その数日前から…落ち込んで その日は、まともに授業もバイトも出来なそう 『凌久、あさって楽しみだね?』 あさって、いよいよ凌久と暁が会う ちょっと不安もあるけど きっと大丈夫 2人共会いたがってるんだもん 何より… 毎日会ってたのに、会えてない凌久に会える! 『当日でも、数分前でも、暁が不安そうだなと思ったら、中止でいいからな?』 優しい凌久 早く…会いたい… 『ありがとう』 『凌久、早く会いたい』 凌久の顔見たい 凌久の声聞きたい 凌久に、悠稀って呼んでもらいたい 『俺も』 『悠稀不足で、何もする気になんねぇ』 『楽しみだな?』 楽しみ! 凌久に会える! 『うん!』 凌久、凌久… 早くあさってになんないかな…

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