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事件発生

店長が、スタッフに話してくれて 皆に周知してくれた その女の人は、俺が出てる時間に来ては、長居するようになった 俺が居ないと、早々に帰るらしい その人が居る間は、俺はなるべくホールに出ないで、裏方の様な仕事をする そんな日が続いたある日 そろそろ俺、バイト来ない方がいいんじゃないかと思い始めた頃 「すいません!水無瀬君呼んでもらえますか?」 叫んでる訳ではないけど 周りの人が、驚いて見るくらいの声 心臓がドキドキいってる 「申し訳ありません、お客様。どんなご用件でしょうか?」 店長が対応すると 「個人的な用件です」 「水無瀬は、バイトの1人です。個人的なご用件は困ります」 「…私の連絡先聞いておいて無視するんです!」 ……え どうしよう バイトの俺がそんな事したなんて このお店に迷惑かかる 違いますって、出て行くべき? 裏からホールに出ようとしたところで 「お前は、引っ込んでろ」 八神さんに止められた 「でも…」 「責任者が対応してんだ。邪魔すんな」 「……はい」 だけど… 店内は静まり返っている 「それは…この前のお会計の時、忘れ物だと思って、水無瀬が届けようとした、あのメモの事でしょうか?」 「っ!…そうよ!教えて欲しいって言われたのよ!」 言ってない… 「では…何故水無瀬は、すぐにそのメモを持って、店長である私に相談しに来たのでしょう?」 「知らないわよ!なんでもいいから、水無瀬君出しなさいよ!」 「他のお客様のご迷惑になるので、お静かに。聞いてもらえなければ警察を呼びますが?」 「勝手にしなさいよ!ここの従業員は、客をたぶらかした挙げ句、客を犯罪者扱いするのね!水無瀬く~ん!ほんとは居るんでしょ?!出て来なさいよ!!」 その人が、テーブルの上のカトラリーを、床に落としたところで… 「八神君」 店長が振り返って、八神さんに合図を送ると 八神さんが、警察に電話し始めた とんでもない事になった 俺のせいで 警察沙汰になったお店に…してしまった 警察が来るまで、その人は色々叫んでて 立ち上がっては、なんとか落ち着かせて 店長が離れられないので 八神さんは、俺を休憩室に移して 働いてくれて そのうち、パトカーの音が近付いて来て 店内は大騒ぎで 俺は…何も出来ずに ただただ心の中で、ひたすら謝ってた コンコン 「水無瀬君、警察の人が話を聞きたいそうだ」 「~っ…店長…すいませんっ…俺のせいでお店に迷惑かけてしまって…」 立ち上がって、深々と頭を下げる 「水無瀬君が謝らなければならない事は、何もないよ」 「でもっ…警察呼ぶなんて…お店にも…お客さんにも…凄い迷惑…」 「そんなのは、学生バイトの水無瀬君が気にしなきゃならない事じゃない。むしろ、君を雇ってる側として、ここで働いてる間は、ちゃんと守るのが当然だからね。話…出来そうかい?」 「はい……ありがとうございます」 外に出ると お客さんは居なくなってて お店は閉じられ ちょうど、お店のオーナーだという人まで来て 俺1人の為に… お店…閉めちゃった… お店を閉めたので、という事で お店の中で、実際座ってた場所等確認しながら、事実確認 なんか… お店の外…カメラとか見える たっぷり時間をかけて、警察の人との話が終わると もう、夕方になってた 大変だ… 凌久のとこ行くはずが、連絡もしないで… きっと、凄く心配してる 「すいません…ちょっと連絡して来ていいですか?」 「ああ、なんかマスコミっぽい人も来てたし、弟君心配してるかもね?もうすぐ帰れるからね?」 休憩室に戻り、携帯を確認すると ?! いろんなとこから、凄い連絡の数 え? このお店の事? とりあえず、暁、凌久、母さんに 後で、落ち着いたら連絡するね とだけ送っておく 結局、それから1時間位して、ようやくお店を出て 歩きながら電話する 「もしもし、暁?」 「悠兄…大丈夫?」 「俺は全然大丈夫なんだ。色々話しなきゃならなくて、遅くなっただけ。今から帰るから」 「うん。分かった」 次は凌久 「もしもし凌…」 「悠稀…良かった。怪我はない?」 「ないよ。心配かけてごめん。今日は、このまま家に帰るね」 「分かった…はぁ…良かった」 「後でまた、ゆっくり連絡するね」 「いや、悠稀が無事ならいいんだ。ニュースになってたから、おばさんにも連絡してやれ」 「うん。ありがとう」 やっぱ、ニュースになってるんだ 次は、母さん 「もしもし、母さん?」 「悠稀、大丈夫?」 「うん。心配かけてごめん。ニュースになってるの?」 「なってるわよ。悠稀のバイト先だし、悠稀っぽい人、お店の中に映ってるし、心配してたのよ」 「そっか。でも、怪我とかはしてないから。ただ、俺のせいでお店に凄い迷惑かけちゃった」 「大丈夫。かなりお店の評判良くなってるから」 「?…どういう事?」 「あとで、自分で見てみなさい?」 よく分からないけど とにかく、帰ろう 俺が帰ると、間宮君も、ちょっと安心した感じで… 皆に、凄い心配かけてた 俺が帰って来たので、間宮君は早々に帰ってった 「そんなに、ニュースになってたの?」 テレビをつけながら、暁に聞くと 「うん…テレビより、ネットニュース。あの辺の人達のSNSとか…」 「ああ。そういう…」 「母さん、知らないだろうと思って、送った」 「あ、だから母さんも知ってたのか」 テレビではやってない だって、刃物とか持ってなかったしね 良かった 全国ニュースになんてなってたら、凄い迷惑だ 「悠兄っぽい人映ってた」 「母さんも、そう言ってた。どれ?」 「これ…皆が教えてくれた」 暁が、スマホを見せてくれる 「ほんとだ…こんなとこ撮られてたんだ」 店内の、遠い席からだけど 俺の後ろ側から撮られてる あの女の人、顔映っちゃってる 大丈夫かな… 「暁、晩ごはんは?」 「作ったけど、なんか落ち着かなくて、食べてない」 「そっか…間宮君、食べないで帰っちゃったんだ。悪い事しちゃったな」 「皆も心配してた。モテるって、大変なんだなって言ってた」 「えっ?いや…モテるって言うか…たまたま、あの人に気に入られたんだけど…」 「でも、いつも皆言ってる。イケメンな兄ちゃんだって」 「そ…そうなの?えっと…ありがとうって、言っておいて…」 「うん」 晩ごはん食べて、後片付けして 改めて、暁に色々見せてもらうと あの人の思い込みとか スタッフを守る理想的な店長とか 普段から、ここのスタッフは対応がいいとか 確かに、お店にとって 悪いイメージの意見はないようだ それは、ほっとしたけど あの人… ちょっと騒いだだけなのに そりゃ、お客さん不安にさせて 警察呼んで、お店は迷惑だったけど こんなに大事になっちゃって 顔まで撮られちゃって 大丈夫かな… 暁がお風呂に入ったので 凌久に連絡すると、電話がかかってきた 「凌久、遅くなってごめんね」 「暁も、おばさんも安心してたか?」 「うん。俺も安心した。全国ニュースじゃなくて良かったよ」 「まあな…あの人って、例の連絡先くれた?」 「そう。あの人が来てる間は、店長…俺を裏に引っ込めてくれてたんだけど…それが、頭にきたみたいで…」 「逆ギレか。店の事よりも、スタッフの身の安全を優先してくれるなんて、いい店長で良かったな?」 「うん…」 それは、そうなんだけど 俺は、凄く助かったんだけど 「ん?どうかしたのか?」 「あの女の人…すっかり顔、撮られてたから…大丈夫かなって…」 「まあな。けど、このご時世…何か問題起きたら、即SNSって頭回んないような歳でもないだろ?自業自得だ」 「うん…」 まあ… それも、そうなんだけど… 「ったく、人の心配より、自分の心配しろ。たいした罪にもならないだろうし、これからは店の外、付き纏われる可能性だってあるんだから、気を付けろよ?」 「あの人…なんで、そんなに俺の事、気に入ったんだろ?」 「はあ?お前の事気に入ってる奴なんて、わんさか居るだろが。それを行動で示すか示さないかの違いだけだ」 「居ないよ。そんな人」 「居るんだよ。お前が気付いてないだけ。分かったら、1人で出歩く時は、注意しろ。いいな?」 「うん…」 凌久に言われたくないんだけど… 心配してくれてるから、言えない 凌久との電話が終わって考える あの人は、いつからお店に来てたっけ? いつから、俺によく声掛ける様になってたっけ? これといったキッカケとか、何も思い浮かばない それが、なんだか不気味だった

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