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覚悟しろ

「…ほんとは、嘘だろ?俺が嘘吐く時の癖なんて…」 「なんとなく…そうかな?って思ってたんだけど…多分、間違ってない。凌久…嘘吐いてる」 「何?俺が嘘吐く時の癖って何?」 「教えない…凌久は優しいから…すぐに優しい嘘吐くから…秘密」 全然思い付かない これから先、悠稀に嘘吐いても、全部バレるって事? 「凌久…教えてくれないの?」 悠稀が、すっかり忘れてた俺の涙拭いてくる 「いや…言う程の事じゃないから」 「こんなに泣いてるのに?」 「俺…被害妄想激しいから」 今何かが起きてる訳じゃないのに 勝手に先の未来想像しただけ… 「……俺とセックスしてる時に…誰かの事考えてたの?」 「かっ…考えてない!悠稀の事!」 「俺の事考えて、こんなに泣いてたの?」 「あっ…悠稀が、どうってんじゃなくて…だから…」 「だから?」 「勝手に先の事想像して…泣いただけ」 マジで なんちゅうタイミングで俺… 「……凌久と俺の先の事…なんの涙?」 「え?」 「嬉し涙でいい?」 「え?」 嬉し涙… 悠稀…そんな風に思ってくれてんのか 「凌久…違うの?」 悠稀が、抱き締めてくる 「悠稀…ごめん。続きしよ?それ…辛いだろ?」 「そんなの、どうでもいい。凌久…答えて?」 だって… だってさ 悠稀は、男とか関係ないって言ってくれるけど 悠稀のおばさんも、きっと、それでいいんだって言ってくれるけど 俺は、男を好きなんだって自覚した時から覚悟してきたけど 結婚とか、自分の子供とか そんなんとは無縁の人生なんだって分かってたけど 悠稀は… 悠稀には… そうじゃない未来の選択肢ある それしか選べないんじゃなくて どれでも選べる 俺を選ぶ選択肢は 俺を喜ばせてくれる選択肢は 俺が選べなかった 選びたくても選ぶ事が出来なかった 色んな事を諦めるって事 「凌久…なんで黙ってるの?俺は…凌久が居てくれればいい…凌久は…違うの?凌久…今1番気持ちいい事したいと思うのが俺なだけ?」 「違う!そうじゃない!俺は、とっくの昔に諦めたし…どれだけ憧れても、どうしようもないけど…悠稀は選べるから…そりゃ…俺だって……俺だって、悠稀との楽しい未来を想像したいけどっ…」 悠稀の事が好きだから 悠稀の事が大切だから 悠稀の未来を想像すると 俺以外の相手の方が 色んな事して笑ってる悠稀が想像出来る 悠稀には… 色んな事して笑ってて欲しい 俺じゃない誰かとでも 俺とじゃ出来ない事して笑えるなら そっちのが… 「じゃあ……じゃあ…凌久…別れて」 「え?」 悠稀から離れる 泣きそうな… 「俺と居て…泣く様な未来しか想像出来ないなら…いつか凌久と離れなきゃならないなら…少しでも早い方がいいっ…~~っ…凌久とっ…居れば居る程っ…別れるの辛くなるっ…」 「悠稀…」 悠稀の言う通りだ 大学生だって、結婚の話とかしてる奴居る だって…俺達もう結婚出来る歳だから 20歳になったら… 大学卒業したら… 実際出来るかどうかは別として そういう事考えてもおかしくない年齢 そういう事考えて 付き合う人選んでも、おかしくない年齢 本気で悠稀のそういう未来や可能性 奪う覚悟もないのなら 少しでも早く離れるべきなんだよな 「分かった…ごめん悠稀…悠稀に言わせてっ?!」 悠稀が勢い良く抱き付いてきた 「悠稀?」 「~~っ…凌久の馬鹿っ……なんで今、嘘吐く時の癖してくれないの?」 「悠稀…」 だって… 嘘…吐いてないから… 「なんで俺の嘘…気付いてくれないの?」 「え?…嘘?」 「俺が凌久と別れてなんて…~~っ言う訳ないでしょっ…」 「そんな事ないだろ…」 「あるよ!凌久の馬鹿!何、本気で別れようとしてるの?!」 「本気で…悠稀の事好きだから…」 別れる時、こうして泣いても 最終的に、自分の家庭持って、笑い合ってる悠稀想像したら… 「凌久…俺の事見て?」 「え?」 悠稀から離れて、悠稀の顔を見る 「見えてるの?」 「見えてる…けど…?」 「俺、ここに居るでしょ?」 「ああ…」 「凌久も…今、俺の前に居るでしょ?」 「ああ…」 何が言いたいんだ? 「俺はっ…それでいい」 「え?それでいいって?」 「~~っ…俺っ…今日の帰り道でっ……交通事故に遭って…死ぬっ…」 「はあ?!なっ…何言ってんの?!」 「だからっ…凌久と会うの…今日が最後っ…」 「なっ…え?…何?…はあ?」 いや… いやいやいや 全然理解追い付いてないんですけど?! 「待て…待って…全然意味分かんない!それ、なんの冗談?何?どっかの占い師とかに言われたの?そんなの信じるなよ!」 「うん…当たるかどうかは分からない…けど…明日も会えるかどうかは分からない」 「会えるよ!何言ってんの?!絶対大丈夫に決まってんだろ?!」 悠稀を思いっきり抱き締める 何?その占い師 今時、そんな不吉な予言、ピンポイントでしてくる奴とか居るの? 「凌久…」 「大丈夫!大丈夫だから!そんな事は起きない!」 「凌久…」 「考えんな!そんな奴に洗脳されんな!俺の言葉を信じろよ!絶対事故になんて遭わない!明日も会える!」 「凌久…明日も会ってくれるの?」 「当たり前だろ?!」 「じゃあ…別れない?」 「別れ…え?」 体を離して、悠稀の顔を見る 泣きながら…困った顔してる 「占い師さんの話は嘘…」 「…え?…はあ?」 「けど…明日も会えるかどうか分からないのは、ほんと」 「…何?どういう事?…悠稀…なんか病気…とか?」 「…そうかもしれない」 「え?」 もう…訳分かんない 何が…どうなって… ほんとの話は何? 「どこか…痛いのか?調子悪いのか?」 「どこも…けど…病気なんて…いつなんて分からないでしょ?」 「は?」 「事故もそう…明日会えるかどうかなんて…誰にも分からない」 「…なっ…なんっだよ!仮の話かよ!」 なんなん?! こんな時に! 「仮が…いつほんとになるかは、分からないでしょ?」 「そりゃそうだけど、そんなん考え出したらキリがねぇよ」 「そうだよ?だから皆考えない。まさか、そんな事起きるなんて毎日考えない」 「そうだよ…ってか、悠稀…なんの話してんの?」 「……ある日…突然凌久が居なくなった日の話」 「っ?!」 突然居なくなった日… そうか そうだよな 俺にとっては、突然始まった地獄 突然悠稀から引き離された日 けど… 悠稀にしてみたら 何が起きてるのか分からないまま 突然俺…居なくなったんだ 「10年後も20年後も大事…だけど…俺は、そこまで奇跡的に続いてるか分からない未来の事より、今手に入れる事が出来てる幸せを大切にしたい」 「悠稀…」 分かる 分かるよ 俺だって今が とてつもなく幸せなんだから 「あの日の俺にとって、今は奇跡だから。明日、どっちかが居なくなってしまう未来がないとは限らない。今日…凌久と一緒に居る奇跡を大切にしたい。昨日も思ってた。明日も思うよ」 「悠稀…悠稀が言ってくれてる事…分かるよ…凄く嬉しい。けどさ、やっぱ…好きだからこそ、最大限に幸せになって欲しいって思う気持ち…分かるだろ?」 友達に自慢して 親戚にもお祝いされて 2人で結婚式考えて 一緒の苗字になって 2人で子供の名前考えて 気が早いのに子供の物買ったりして 全部全部 俺と居たら出来ない事だ 「また…俺が女の人好きになる話?」 「俺自身…憧れるからっ…」 「え?」 「女の人っ…好きになれたら良かった…そしたらっ…あんな事もっ…こんな事も出来るっ……いいなぁ…羨ましいなぁって…思う事あるからっ…」 「凌久…」 両親だって… 安心させてあげられる 「でも、俺は自分のせいだから、諦められる。だって…頑張ったって、男以外…好きになれないんだから…だけど…」 「俺だって、頑張ったって凌久以外好きになれない!」 嬉しいけど それは違うよ 「それは…意味が違う。付き合ってる恋人が思う気持ちであって…それでも皆…別れて…また好きな人と出逢って…って、出来るだろ?その相手の選択肢に女があるなら、悠稀は俺が憧れる世界を手にする事が出来る」 「俺は!女の人知ってる!!」 「……え?」 凄く大きな声… 悠稀じゃないみたいだ 「凌久より、ずっとずっと女の人知ってる!!」 「…そうだな」 「それでも!凌久がいいって言ってる!」 「そりゃ…今は、お互い好きで付き合ってるんだから、そう思うだろ」 嫌いになってる訳じゃないんだ ってか… セックス真っ最中だし 「違う!本格的じゃなくたって、好きになった女の子との未来…想像した事ある!だって、うちの両親仲いいし…結婚とか…自分の家庭とか…いいイメージしかなかったから…」 「うん…」 「けど!それ、全部出来なくたって…ほんとに好きな人がいい…」 「そういうの出来る好きな人…きっと見付かるよ」 悠稀が本気出したら あっちこっちから、わんさか女の子やって来る 選びたい放題なんだから きっと悠稀も好きになれる子居るよ 「~~っ!凌久の!馬鹿!」 ボフッ 「うおっ!」 悠稀が、枕投げてきた 「俺…前にも言った!あんな…幸せ感じるの…凌久だけだって!」 「聞いた…それは…凄く嬉しいけど…」 「けど!何?!」 「別に…そこまでじゃなくたっていいだろ?悠稀だって、今まで、それ気付かなくたって、好きだって思う子と付き合ってたんだろ?」 ほんとに好きな人とは結婚出来ないとか 好きな人でも経済力ないととか ほんとに、本気で好きだからってほど 結婚って簡単なもんじゃないんだろ? 「~~っ…気付いちゃったら…もうっ…戻れないもんっ…」 「大丈夫。俺が、こっぴどく振ってやる。俺の事なんか、一生許さない!ってくらい…好きな気持ち…全然無くなるくらい…」 「~~っ…無理だよっ……凌久がっ…どんなに酷い事したって…もう…凌久が優しいの知ってるもんっ……全部が俺の為だって知ってるもんっ…凌久が酷い事する度っ…凌久の優しさ感じちゃうよ…」 難しい 何が悠稀にとって1番いいんだろう 悠稀が、好きそうな女の子でも見付けてあげればいいんだろうか 「凌久…俺を見て」 「悠稀…悠稀には……誰より幸せになってもらいたいんだ…」 「凌久…目の前に居る俺を見て」 「~~っ…俺のせいでっ…選べるはずの悠稀の幸せっ…奪いたくないっ…」 「凌久…凌久を好きになった俺を排除しようとしないで…凌久を好きな俺…~っなかった事にしないでっ…」 あ... あれ? 「俺の事、好きなの…なかった事にされたからさ」 俺… 奏にも同じ様な事言われた あの時とは、全然状況違うけど 俺は…全然成長出来てないのかな あの頃と同じ様な事 好きな人に言わせるって あの時のまま? 「……悠稀は…悪くないから」 「え?」 「もしも…遠い未来…今とは違う選択肢が出てきて…それを選んだとして……悠稀は…悪くないから…」 「やめてよ…俺が、凄い浮気性みたい」 「違う…それは…物理的にどうしようもない事とか…今とは違った人生観とか……」 勇気がないだけ 悠稀のせいにして 結局…別の選択肢に怯えて、自分から離れようとしてるだけだ いい加減…覚悟しろ 「そんなの、凌久だって同じでしょ?」 この、可愛いくて優しくて、格好良くて、イケメンな 水無瀬 悠稀が、本気で俺と付き合ってんだ いつまでも怯えてんな 「だから…悠稀に別の選択肢が訪れるまでは…丸っと全部、俺のものだ」 「凌久…」 「悠稀の…未来…こうなっちゃったけど、知らないなんて言わない。どんな後悔も、羨ましいも、後ろめたいも…全部…全部…俺のものだから」 「凌久…嬉しいも、楽しいも、幸せも入れてよっ…凌久っ…凌久のごめんねも…全部入れてよっ…」 この日を、いつか後悔するだろうか それとも、笑えるだろうか 笑える程…世間は甘くないって知ってる 俺より嘘が上手くなってしまった 優しくて可愛い恋人が せめて…少しでも傷つかない様に せめて…少しでも笑える様に

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