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2人だけの

「じゃあ、また明日ね」 「おお…」 「凌久?…んっ…んんっ…?」 こんな… もう帰るって時にキスなんて、された事ない キスして…キスして… 凌久が、ぎゅっと抱き締めてきた 「……凌久?」 「ごめん…ちょっとだけ…」 「いいけど…嬉しくて…帰りたくなくなっちゃうよ…」 「ん…ほんとは…帰したくない」 「え?」 そんなの…言われた事なかったのに… 「ははっ…大丈夫。ちゃんと帰すよ。ただ…今日は……」 「うん?」 「お前のせいだぞ?仮の話だって…言葉にしちゃったら…」 仮の話? 「今日…帰り道、歩かせたくないって、思っちゃうだろ?」 帰り道… 「あっ!ごめん!言われてないよ?占い師さんなんて居ないよ?」 「ん…知ってる。けど…ほんの一瞬でも、リアルに考えちゃったから…」 「ごめん、凌久…ちゃんと無事に帰って、明日も凌久に会いに来る!」 「うん…知ってる」 知ってるって言った凌久は 知ってるって言ったのに それまでよりも、強く抱き締めてきて 「でも…絶対じゃないから…今日悠稀と居られた事に…感謝」 「凌久……泣いちゃいそうだから…」 「それはマズイな」 そう言って、ようやく体離して ちゅっと軽くキスをしてくれる 「明日も待ってる。気を付けて帰れよ?」 少し困った様な、優しい笑顔で、頭撫でてくれて 帰りたくない! って、凌久にしがみ付きたい気持ちと もう溢れそうな物を堰き止めるのとに必死で 「うん…」 それだけ言うのが精一杯だった 凌久の家から出ると 勝手に溢れてきて 泣きながら歩いてたら、不審者だ ゴシゴシ涙拭きながら歩いてると タッタッタッタッ… 後ろから走って来る人の足音 少し道の端に寄って歩いてると 足音が近付いて来て ポフッ… え? 突然頭に…何か乗せられた 訳が分からず顔を上げると さっきまで見えてた服… 「これ被っとけ」 凌久が…帽子被せてくれたの? 「凌久…出歩いちゃ…危ないよ」 「ん…でも、何が起きるか分かんないの…悠稀も同じだから…」 「でも…」 「お願い…駅まででいいから、送らせて?」 キャップのツバで 凌久の顔見えない けど、きっと 困った様な優しい顔で見てる 「うん…」 「ありがと」 凌久と2人 駅に向かいながら思う 凌久って、声優になれると思う ありがと どうした? 悠稀… 凄く短い言葉に 凄く気持ち込められてる だけど言わない 凌久の声…沢山の人に聞かせるの勿体ないから 出来る事なら ずっと隣で俺だけに聞かせてて欲しいから 「ありがとう凌久。ほんとに、気を付けて帰ってね?」 「おお。悠稀もな?」 「うん。連絡する」 「俺も」 ああ…そっか こんな時… 男女だったら、ちょっと恥ずかしいけど もう一度抱き合えたかもしれない 凄く恥ずかしいけど キス…出来たかもしれない 凌久は… こういう寂しさみたいの知ってたんだ 凌久は… そう思っても出来なくて 傍で男女が抱き合うのとか 見てきたのかもしれない 電車に乗って凌久に連絡する 『帽子ありがとう』 『凌久の匂いがして嬉しい』 ヴヴ ヴヴ 『今 コンビニ』 『明日、悠稀と食べるアイス買う』 『どんなのがいい?』 皆と一緒じゃなくていい 凌久と俺の付き合い方 2人だから出来る 2人だけの付き合い方 『楽しみ』 『凌久と分け合えるのがいい』 『凌久、愛してる』 2人だから分かる 今のお互いの気持ち 他の人には分からない 俺達だけの大切な気持ち ヴヴ ヴヴ 『今コンビニって言ったろが!』 『しばらくレジ行けなくなった』 「ふっ…」 出来ない事があるから 出来る事が嬉しい お互いにしか分からない気持ちを 言わなくても分かり合えてるのが嬉しい 「暁、どうぞ」 「わぁ…ありがとう。久しぶりだ」 「そうだったね。ふっ…ほんと好きだね?ロイヤルミルクティー」 「うん!」 ふ~ふ~しながら まだ熱いのに、待ちきれず飲み出す暁を見ていると 「悠兄、あのね?俺、やっぱり優琉に挿れる側になってみたいなって思うんだけど…」 「…っ…ゴクン……ゲホッ…ゲホゲホッ…」 危なかった 暁に向かって、吹き出すとこだった 「悠兄…大丈夫?」 「だっ…大丈夫……そっか」 「うん…優琉ね、俺の今までの事知らなかったから、挿れれる様に頑張ってくれてたみたいでね…俺に挿れられるの想像してたから、そうしてみたいって言うんだ」 「~~っ…そっ…そっか」 これ…俺が聞いちゃって良かったのかな 間宮君…まさか、こんなの俺に知られてるなんて思ってないよね… 「でも…俺、挿れる側ってした事ないし…悠兄みたいに、優しく出来るのかな?自分がされた様にって思って…あの人みたいに、優琉に酷い事とかしないかなって…不安だったんだけど…」 「暁…」 「優琉がね…沢山話してくれるんだ。ああ…そうかって、俺でも理解出来る様に…俺が安心出来る言葉…沢山くれるんだ」 そうだね 俺と凌久と同じ 2人にしか分からない 2人だからこそ分かる事…あるよね 「暁…暁がしたい様にしていいんだよ。暁の考えが変わったとして、間宮君は、きっと受け入れてくれるでしょ?」 「うん」 「じゃあね、相談じゃなかったら、間宮君との事…全部俺に言わなくていいんだよ」 「うん…」 言わないと、不安なのかな 相談じゃなくても、聞いて欲しいのかな 「ふっ…暁、おいで?」 「うん」 素直に、俺に抱き付いてくる 「言わないで欲しいって意味じゃないよ」 「うん」 「ただね…俺も、暁と間宮君が付き合い出して、ほんとに凄く心配だったけど…間宮君の話聞いてると、俺が心配しなくても大丈夫そうだからさ」 「うん…」 俺の胸に、すりっと頬を擦り寄せてくる 「きっとこれからは、俺より間宮君の方が、その時の暁の気持ち、分かると思う。2人にしか分からない事、増えてくと思う」 「うん…」 「きっと…どんな事も、2人だけの大切な思い出にしたいって…そう思う様になってくから…」 「うん…」 うんって言いながら 暁が、すりすりと言うか… ぶんぶんと言うか… 顔を俺の胸に擦り寄せる 「ははっ…もしかして、暁…甘えてくれてるの?」 「よく…分かんない。悠兄が言ってる事は、なんとなく分かるし、早く悠兄から卒業しなきゃって思ってたから、嬉しい事なんだけど…なんか…少し……寂しい」 「うん。俺も寂しいよ。暁の事、俺以上に分かってくれる人ができて、嬉しくて…寂しい」 「うん…」 ぎゅっとしてくる暁 家に来た時から比べると 背も伸びて大きくなった よく話して、笑う様になった 「恋人としては間宮君と話し合いながら、2人で考えてけばいいと思うけど、俺が暁のお兄ちゃんなのは変わらないよ」 「うん」 「いつだって、暁の傍に居るし、話聞いて欲しかったら聞くし、抱き締めて欲しかったら抱き締めるし、夜寝れなかったら一緒に寝よ?」 「うん…悠兄…大好き」 「俺もだよ。大好きだよ…暁」 友達ができて 恋人ができて 学校が楽しくて 俺から卒業するのが寂しいって思えてる 凄いね…暁… 「さ、もう飲んで寝よう?」 「うん。悠兄、今度ロイヤルミルクティーの作り方教えて?」 「いいよ。間宮君に飲ませたいの?」 「うん」 誰かに何かをして 喜んでもらいたいって思えてる 暁は自分で、その凄さに気付いてるのかな 「そう言えば、あさって俺バイト休みなんだけど、どっか行きたいとか、何かしたいとかある?」 「特に………あっ...」 「ん?何かあった?」 「優琉がね…また、たまには優琉の家にも遊びに来て欲しいなぁ…って言ってたんだ」 「そっか。毎日ここだったもんね?いいよ。送ってくよ」 「……うん…」 ん? そういう事じゃないの? 「えっと…あのね…明日、優琉と一緒に行って、泊まって来ちゃだめ?」 「ああ…間宮君がいいなら、いいよ」 「それで…そしたら、俺居ないから…凌久さん…ここに泊まってもらうのとか…どうかな…って思ったんだけど…」 「暁…」 そんな事… 言える様になったの? 「あ…凌久さんの家の方がいいなら、それでいいんだけど…なんか…なんとなく…俺のせいで来づらいのかなとか……あっ…でも、俺と悠兄がセックスしてきた家とか…嫌なのかな…」 「どうかな…凌久の気持ち、聞いてみないと分からないけど…でも、そんな風に考えてくれて、ありがとう。凄く嬉しいよ」 「うん」 凌久が…この家に泊まりに… 八神さんの家行った時は、緊急事態だったし 俺…ほとんど覚えてないし 凄く凄く嬉しいけど 暁が言った通り、複雑な気持ちかもしれない 凌久と間宮君は 俺と暁には分からない気持ち抱えてる それでも 大切な2人だけの事だから 明日 凌久に話してみよう

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