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悠稀の家
暁を間宮君の家まで送って
すぐに携帯を確認する
今日は、凌久の家の近くの駅で待ち合わせだから
この前、俺を送って来てくれたから
駅までなら大丈夫でしょって事になったけど
心配…
『暁送ったから、これから向かいます』
自然と早歩きになる
だってだって
何があるか分かんないもん
あと5分早かったらとか後悔するの嫌だもん
ヴヴ ヴヴ
『じゃあ、俺もそろそろゆっくり向かう』
ずっと電話してたいくらいだ
SPとか雇いたいくらいだ
駅に着いて連絡
電車に乗って連絡
近くの駅に着いて連絡
凌久…
『着いたよ』
何処?
駅の入り口かな
凌久…
ヴヴ ヴヴ
『キョロキョロし過ぎ』
凌久、無事だ
何処に…
トン…
キョロキョロしてたら、後ろから来た人にぶつかっちゃった
「あ、すいませ…」
「こちらこそ」
え?
この声…
「凌久!」
「はいはい」
「凌久…凌久…」
「ふっ…何年ぶりだよ。危ないから、こっち寄って」
だって
ほんとに心配だったんだもん
「こんなとこで泣くなよ?」
「うん。何もなかった?」
「ねぇよ。心配しなくて大丈夫」
「うん…ごめん…」
「行こ?悠稀ん家」
「うん!」
凌久が俺の家に…
泊まる!
「悠稀…」
「うん?」
「嬉しさ…滲み出てるのは、俺も嬉しいんだけどさ…」
「うん…?」
「いつも以上にオーラ半端ないから、もうちょい抑えてくれる?」
どういう意味?
オーラ…
抑える…
「凌久…そういうの見えるの?」
「いや…そうじゃなくて……ふっ…ま、いっか」
分かんないけど
凌久が、嬉しそうに笑ってるから
何でもいいや
出来れば、凌久の嬉しそうな顔
独り占めしたいんだけどな
チラチラ見てくる人達から
凌久を隠してしまいたい
「トマトだろ…生ハム…粉チーズってある?」
「あるよ」
「しめじ、玉ねぎはあるんだったな…トマト缶…」
「凌久、ほんとに作るの?外食でもいいよ?」
「なるべく長く、悠稀ん家居たいじゃん?」
「そっか」
凌久と買い物をして、家へと向かう
「お邪魔します」
「どうぞ」
「ふっ…俺が、お邪魔しますは、変な感じだな?」「うん。いつも、俺がお邪魔してるもんね」
凌久と、買って来た物を冷蔵庫に仕舞う
「これは、出しといていっか…これは冷蔵庫」
「まだまだ入るよ」
「んじゃ、これも入れとくか」
「うん」
パタンと冷蔵庫のドアを閉めると
ぎゅっと後ろから、抱き締められた
「凌久?」
「ん…早く、くっ付きたかったから…少しだけ」
「俺も…そっち向いていい?」
「ん…可愛い顔見せて」
くるりと後ろを向くと
「悠稀…」
そんな顔で見られたら…
「凌久…」
キスしてくれる?
そっと目を閉じて待つけど…
あれ?
キスしてくれないの?
「凌久?」
目を開けると…
「あ…ごめん」
「?」
「ちょっと…悠稀のキス待ちの顔が…可愛い過ぎて、見惚れてた」
キス待ちの…顔?!
「そっ…そんなの、じっくり見ないでよ!」
恥ずかしい!
「いや、じっくり見た事ないから、ふと見たら、可愛いくてさ…つい…」
「じゃあ、凌久のも見せて!」
「俺の?別にいいけど…悠稀みたいに、可愛いくないぞ?」
俺だって可愛いくないよ!
凌久が、素直に目を閉じてくれた
寝てる時とは違う
目を閉じてる顔
俺に…キスされる為に
「悠稀~…俺のは、そんな見る様なもんじゃないって」
「あっ!目開けないでよ!」
「だって…もう我慢出来ない…」
「んっ!」
俺だって我慢出来ないけど
もうちょっと…
普段は見れない凌久の顔
見てたかったのにな
凌久の顔は綺麗で
いくらでも見てられる
「ん?悠稀…何か考えてんの?」
「…え?」
「俺とキスしてんのに、何か考えてる…」
「凌久の…キス待ってる顔…もうちょっと見たかったなって…」
「なんだ…そんな顔より、俺のキスで、もっと感じてよ」
「ふぁっ…んんっ…!」
待って…
凌久のキス…気持ちいいから
あんまり気持ちいいのしちゃうと
今日は、これから長い時間一緒なのに
今から、いっぱい気持ち良くなっちゃったら…
「んっ!…んんっ!」
凌久の腕を掴んで、胸を押す
「ん?…どうした?」
「はっ…はぁ…ちょっと…」
離してくれた
「キス、したくない?」
「そうじゃ…なくて…」
「じゃなくて?」
「まだ…始まったばっかりだから……明日まで…長いから…」
不思議そうな顔で、凌久が見つめる
何言ってるの?って顔してる
「今から…あんまり気持ち良くなっちゃうと…明日まで持たないかもしれない…から…」
「………」
少しびっくりした様な顔で見た後
ぎゅって抱き締めてくれた
「あんまり可愛い事言うと…俺の理性、崩壊しちゃうから…」
「…え?」
「明日帰るまで…優しい彼氏で居られるかな…俺」
「凌久が優しくなくなる日はないよ?」
「そんな事ねぇよ。悠稀の前では、いい人ぶってんの」
「嘘…凌久は、優しいで出来てるもん」
「ぶっ!…そんなん思われてたら、意地悪な彼氏になれないじゃん」
意地悪な凌久も
優しい意地悪だよ
強引な凌久も
優しい強引だよ
凌久の根底が優しいんだもん
「悠稀の家ん中、案内して?」
「うん。案内する程ないけど…」
凌久に俺の家の案内
嬉しい
トイレ…洗面所…お風呂…
俺の部屋
「一応、敷き布団もあるよ?」
「不要だな」
「うん!」
凌久とソファーに座る
「このソファーで、悠稀に押し倒されたんだよなぁ…」
「…え?!」
「ほら、八神さん家行った後さ、すげぇ勢いでキスしてキスしてって、床に倒された」
「あ…頭打ったって…その時?!」
「ああ…そうそう」
「うっ…ごめんね…」
ほんとに全然覚えてない
凌久と、ここに座った事あるんだ
「その、すぐ後に八神さんがコンビニから帰って来て…悠稀が、なんでキスしてくんないの?って泣きそうになってんの目撃された」
「えっ?!」
「八神さん…かなり衝撃的だったろうなぁ…早々に俺から鍵を受け取って、去って行ったよ」
八神さん…そんな話、一切しない
俺の失態を…
全て見た上で、触れない様にしてくれてるんだ
「凌久と…初めてここに座ったの…ちゃんと覚えてたかったな…」
「いや…あの時は、緊急措置だったし、今日が初めてって事でいいだろ?」
「うん…凌久が、このソファーに座ってるの、不思議」
「やっぱソファーいいよなぁ……いつかさ、2人で暮らすなら、ソファー買おうな?」
「うん!」
凌久と一緒に選ぶソファーは、どんなだろ?
どんな素材で、どんな色で
何軒か、お店一緒に回ったりして
他の家具と色合わせようかなんて、話したりするのかな
考えただけで幸せ過ぎて
そんな日が
早く来て欲しい様な
まだまだ来て欲しくない様な
「悠稀、なんでニヤニヤしてんの?」
「えっ?ニヤニヤ…してた?」
「うん。ソファーでエロい事しようか、妄想してたの?」
「ちっ…違うよ!凌久と…どんなソファー選ぶのかな…どうやって選ぶのかなって…考えてたの!」
「なんだ……悠稀って、1人で居てエロい事考えたりすんの?」
「なっ?!…えっ?!」
何でそんな事!
そんなの…そんなの…
「~~っ…凌久の事…考えたり…するよ…」
「俺の事考えて、抜いたりする?」
「っ?!…~~っ…」
別に…
悪い事じゃないけど…
俺が凌久の立場なら嬉しいけど…
凌久を目の前にして言うのは恥ずかしいよ
言葉で答える代わりに
こくこくと頷く
顔…熱い
絶対、凄く顔赤くなってる
「悠稀…いちいち可愛いとこ見せられると、俺に襲われるけど、いいの?」
「えっ?おそ…」
「ほら、その顔…隠しとけ」
「凌久…」
凌久が抱き寄せて
俺の顔を、肩の上に置いてくれた
「凌久に襲われるなら、いいよ」
「まだ始まったばっかなんだから、あんま煽んな」
凌久になら、なんだって
何されたって嬉しくて
幸せな思い出になってくよ
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