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想い合えた時間に感謝
俺の衝動的な行動によって
本日の買い物収穫ゼロ
2人で晩ごはんのデリバリーをする事となった
「ごめんな?せっかく2人で料理しようって言ってたのに」
「それはいいけど……凌久…必要な物、買いに行きたいよね?今からでも、買いに行く?」
「いや…なんか、ネット注文になれたら、全然不自由ないわ」
「ほんと?じゃあ、散歩行く?」
「悠稀…」
悠稀の家泊まって分かった
悠稀は、まだまだ俺の事心配で…不安なんだ
悠稀を抱き締める
「凌久?」
「悠稀のせいで外出れないなんて不満ないよ」
「………普通に…生活したいよね」
「別に困ってないって。それより、そんなどうでもいい事で、万が一…また……悠稀を少しでも不安にさせる様な事になる方がやだ」
「…弱くてごめんね……なかなか前に進めなくて…」
それだけのもの…
与えてしまったからだろ?
俺が消えて…
あの部屋で沢山泣いてたんだろな
「悠稀…ちょっと、これ見てくれる?」
「何?」
スマホを出して、見せる画面を検索してると
悠稀が、後ろに回って抱き締める様にしてきた
「こうやって見てもいい?」
「ふっ…凄くいい。悠稀、これ…」
「…ペアリングだ」
「ん…俺が今まで見た中で、気に入った物を、集めてみた」
「わぁ…シンプルで綺麗だね…」
「ん…飾っとく訳じゃないからさ。あんまりゴツイのとか、壊れそうな形じゃない方がいいかなって…」
俺がそう言うと
悠稀が、ぎゅ~っと抱き締めてきた
「悠稀?」
「うん…飾っとく訳じゃないからって…凌久の言葉にぐっときた…」
「…ああ…でも、大学では一応…う~~ん…どうかなぁ…」
「…だめ?」
「…目敏く見付けて聞いてくる奴ら居るだろ?そういうの煩わしくて、色々聞かれたくない場合、ネックレスにしてる人も居る」
「ネックレス…」
俺を抱き締めてる、悠稀の右手を取り
俺の胸の真ん中辺りに持って行く
「凌久?」
「ネックレスにするとさ…この辺に指輪くるだろ?」
「うん…」
「心臓に近いんだ…ハートに近くなる。せっかくのペアリングさ…薬指に付けたい」
悠稀の右手の薬指に触れる
「うん」
嬉しそうな声…
「そしたら、必ず聞かれる。彼女とのペアリング?って…」
「っ…」
「別に、恋人とのペアリングだよ。そう答えればいい…けど、聞かれる度に、何処か悲しい気持ちになる」
「凌久…」
悠稀の右手をそのまま持って
薬指にキスをする
「せっかく幸せ感じるペアリングしてるのに…関係ない人達に…そんな思いさせられたくない。一緒に笑ってたい。俺と悠稀が知ってて…思ってればいい事だから…だから…」
「分かった…分かったよ凌久…」
悠稀が、もう一度ぎゅっと抱き締めてくる
「でも…それでも悠稀が、そうしたいってんなら…」
「ううん…凌久の事隠したくない。けど…聞かれて…自慢出来ないくらいなら…聞かれたくない。凌久の言う通り…関係ないから。俺と凌久が知ってて…想い合ってればいい事だから…」
「うん……でもさ、そういう…聞かれて困る様な人達が居ないとこでは、指輪しよ?」
「うん。凌久…好き」
「俺も…好きだよ、悠稀…」
悠稀が、頬や首の辺りにキスしてくる
「凌久…」
「ふっ…ダメだ。結局、夕食もまだ頼んでないし…」
「ちゅっ…凌久凌久…」
「こら…誘惑すんな。ちゃんと、俺オススメのペアリング見ろよ」
「凌久…ちゅっ…凌久凌久…ちゅっ…」
「ふっ…夕食ナシになっても知らないからな…」
俺を後ろから抱き締めてる悠稀に
軽いキスをする
「悠稀…」
「ん…凌久…」
わざと軽いキスを繰り返してると
「ん…ん……凌久…」
「ん?」
「キス…」
「ん…キスしてるよ」
そう言うと
「~~~~っ…そうだけど…」
「ん?」
「いつもみたいの…」
「いつもみたいの?」
「ん…いつもみたいの…して欲しい…」
降参
悠稀に勝てる訳ない
そんな可愛い顔して
泣きそうな顔で…
「分かった…もっと気持ちいいやつな?」
「ん…凌久……んっ…んっ…」
気持ち良さそうな顔
満足そうに
俺のキスを堪能してる
徐々に力抜けてく悠稀を
ゆっくりと振り返る様にして
優しく押し倒す
「悠稀…これが欲しかった?」
「んっ…凌久……」
「もっと欲しい?もう満足?」
「~~っ…もっと…凌久…」
俺と同じ気持ちになってくれて、ありがとう
自慢出来ない
ペアリング2人で付けて歩けない
人の目を気にしなきゃなんない
少しずつ…少しずつ…
現実が見えてきて…
どれだけ異質な存在にされてるか
実感してきて…
じゃあ、出来ない事いっぱいじゃん
そんなんじゃ幸せになれない
そんな風に思うんじゃなくて
俺達2人が想い合ってればいい
分かり合ってればいい
そんな同じ気持ちになってくれて
ありがとう
きっと…
まだまだ、これからも
悠稀が知らなかった
知りたくなかった事
気付かされるよ
それでも…
傍に居てくれるかな
「…凌久?」
「ん?」
「なん…か……考えてる…の?」
こういうの
ほんと鋭い
「何も…悠稀の事だけだよ」
「………俺の…どんな事?」
「悠稀が可愛いなって…」
「…嘘」
「嘘じゃないって…」
「凌久…嘘吐く時の癖…」
出た!!
「なぁ、悠稀…それ、教えてくんない?」
「やだ」
「そんな事言うなよ」
「凌久が嘘吐かなきゃいいんだもん」
「そりゃそうだけどさ…分かるだろ?悠稀だって、時と場合によっては、嘘吐いてんだろ?」
「凌久は、優しいから…これ以上嘘吐いたら、壊れちゃうもん」
「は?」
どういう意味だ?
嘘吐いたら壊れる?
「凌久…」
悠稀が、ペチッと俺の両頬を挟んだ
「な…何?」
「白状しなさい」
「白状……すると…」
「すると?」
「悠稀が…」
「俺が?」
こんなん言ったら
また不安にさせて
心配かけて…
俺の癖って何だよ?くそっ!
今度、絶対奏の奴、問い詰めて聞き出してやる!
「これからも…まだまだ知りたくなかった事…気付かされてくから……それでも俺の傍…居てくれるかな…って…」
何この自供…
自白剤飲まされてんのと一緒じゃん
ようやく悠稀が、手を退ける
「なんだ…そんなの……離れる訳ないよ」
「…ありがと」
「凌久…それが嫌な事でも…凌久の事以外の何に気付いたって…凌久への気持ちは変わらないよ」
「ん…ありがと」
「信用…出来ない?」
「そんな事ない。けど…縛りたくもない。信頼されてるから…好きでいてくれるからって…無理して頑張って欲しくない」
離れたくなんてないけど
そりゃ…縋ってでも掴んでたいけど
「そんな事言わないでって…言いたいけど……それは、俺も同じだから…俺が嫌になったり…他に好きな人が出来たら……その時は…頑張って無理しないで欲しいから…」
「そんな事が起こる確率は、限りなくゼロに近いと思うけど?」
「分かんないもん!!凌久…分かってないから…」
「分かってない?…って?」
何の事だ?
悠稀が、俺の頬に手を伸ばしてきた
「悠稀?何の事?」
その悠稀の手に重ねる
「凌久は…いくら言っても分かってくれない…けど……凌久が分からなくたって…勝手に魅力…振り撒いてるから…」
「…魅力……はあ?!」
「凌久は…こういう話すると、すぐに俺の話に置き換えるけど…ほんとに俺…本気で思ってるんだから…」
「悠稀…」
だって…
俺、そんなモテた事ないよ?
悠稀が心配しなきゃなんないくらい…
でも悠稀は…
って、考えるの…
俺じゃなくたって自然なのに
「ほんとは…隣歩いてる時くらい……手繋いで牽制したいって思ってる…」
「悠稀…牽制なんてする必要…」
「あるの!凌久は…全然分かってない!俺は…気付きたくなくても気付く!凌久を…見ないで欲しい…凌久に他のチャンス…与えないで欲しい…」
「悠稀……そんなチャンス…欲しくないよ」
そんなに必死になられたら
期待しちゃうよ
俺以外に興味なんてないんじゃないかって
俺より、ずっと俺の事好きなんじゃないかって
男同士は…
あまり期待しないに、こした事はない
夢見る様な未来なんて
ほんの一部の人間だけだ
それでも
やっぱり今、こんなに好きになってくれた人を
全力で愛さない訳にはいかない
好きになればなる程
離れるのは辛いけど
それでも
出逢えた事に後悔なんてないから
付き合えた事に
こんな風に想い合えた時間に
感謝しかないから
「凌久…好き…」
こんな風に…
言って貰えた事1つ1つが
全部大切な思い出だから…
「ん…俺もだよ…好きだよ…悠稀」
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