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第19話 残された絆⑬
何とか理央と仲直りをしてから、しばらく経った頃。
月ノ宮学園の制服は夏服になり、校内は爽やかな雰囲気を纏っていた。
雲一つない青空の下で、理央と同じ制服を着て並んで歩く。それだけで咲人にとってはザ・青春みたいな感じだ。
今日は珍しく、咲人と理央は学園の外にいる。
理央の部活が休みになった為、せっかくこの時間から一緒になら、と二人で外出届を出したのだった。
と言っても、月ノ宮学園は山に囲まれているため、バスで街まで降りないと遊べるような場所はない。
二人はバスに乗って、駅前の市街地までやってきていた。
特に目的はなく、色んな店に入っては商品を見たり、思い出話に花を咲かせたり。
「そういえば、ちびすけは元気?」
「うん。だいぶでかくなったけど、まだまだ元気だよ」
最近あいつには会えてないから、咲人も会いたくなってきた。
「理央、また遊びに来てよ。母さんもお前に会いたがってるから」
母親には、理央とまたこの学園で会えたことをメッセージで伝えている。
ずっと理央のことを心配していたから、報告した時は嬉しそうにしていた。
「僕も……咲人の家族に会いたいな」
寮に戻り、身支度を終えた咲人は理央の部屋にいた。
いつものように授業の復習から始めて、わからないところを理央に質問した……はずなのに。
気づけば理央に口を塞がれていたのだ。
「んっ………む……っ」
咲人が自分からしたような、あんな可愛いらしいキスじゃない。何度も舌を吸われ、歯列までなぞられて。
思わず掌をぎゅっと握りしめる。咲人の手には、シャーペンが握られたままだ。
やっぱり息が苦しくて、咲人は肩に置かれた理央の手を叩いた。すると名残惜しそうに、理央の唇が離れていく。
「っ……理央、ストップ!勉強進めないと……」
「咲人にそんなこと言われる日が来るなんてね」
そう言って微笑みながら、こちらを見つめてくる理央。その瞳は、咲人の真意を探ってる。
「……わかったよ。進めよっか」
助かった。これ以上されてたら、危なかった。
あれから理央とは、自然とキスをするようになった。
主に昼休みや、こうやって理央の部屋で勉強している時。つまり、二人きりの時は必ずしているのだ。
友達同士でキスってするんだろうか。しかもなんかちょっと、エロいやつ。
……そう、理央はいちいちエロい。舌を入れながら、体も触ってくる。でもあの手に触られるとどうでもよくなるというか……最近理央にキスをされると、咲人はもっと触ってほしくなってしまうのだ。
すぐ隣に座っている、涼しげな横顔。普段は淡白 そうにすました顔をしてるのに。
「……ん?わかんないところでもあった?」
「うん……わかんない……」
今の自分達の関係って、なんだろう。
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