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第20話 残された絆⑭
理央は土曜日、毎週帰省している。
そのため咲人は一人で自習するか、北見たちと自分の部屋で過ごしている。
今日も北見と高山と三人で、持ち寄ったお菓子を広げながら、適当に過ごしていた。
「神崎くんって毎週帰省してるの?」
「うん。なんか色々やらなきゃいけないことがあるんだって」
「そっか……神崎家って色々大変そうだもんね」
「理央の家ってそんな有名なの?」
「うん。吸血種の間で知らない人はいないよ。名家だから」
名家か……じゃあ図書館とかで探せば、何か載ってるのかな。
「でも神崎くんのお義母さんの代で、子供ができなかったみたい。それで神崎くんを養子として迎えたって聞いたよ」
「じゃあ神崎家は吸血種しかいないってこと?」
「うん。そうじゃないと、吸血種政権とかにも関わってくるからね」
「マジか……」
理央の今いるところって、そんなに権力がある家なのか。
そういえばあの時長谷川もそんなようなことを言っていた。
──あいつに聞いてみるか。
月曜日の朝、咲人は早速前に会った場所で長谷川を待ち伏せしていた。
理央にバレたらまずいので、北見に伊達メガネを借りてきた。これで咲人とはバレないだろう。
噂をすれば、前方から目的の金髪頭がやってきた。
「おい長谷川」
「げっ……綾瀬かよ、もう俺お前と接触禁止令出てんだから来んじゃねーよ」
「俺から接触してんだから別にいーだろ」
咲人が少し近づいただけで、長谷川は心底嫌そうな顔で距離を取る。まるでこっちがやばい奴みたいで、ムカつく態度だ。
「なあ、神崎家ってそんな偉いとこなの?」
「偉いも何も……この学園に一番金入れてんのも神崎だよ。あいつ見てればわかんだろ?」
確かに理央は一人部屋だったりと、何かと優遇されているが。
「言い方は悪いが、神崎家は吸血種のいるところに金ばら撒いてんの。つか、そんなの本人に直接聞きゃいーだろうが」
「聞けないからわざわざお前に聞いてんだろ」
「チッ……アイツに見つかりたくねーから俺はもう行く」
「ありがと。じゃーね」
──吸血種のいるところに……か。
理央と再会した時、神崎家は吸血種を信仰していると言っていたが。理央からそれ以上の詳しい話を、聞いたことがなかった。
自分は吸血種じゃないし、人の家のことなんて聞きづらい。だから理央の昔の家のことも、咲人はあまり知らないのだ。
長谷川と別れ普段通り登校していると、理央の姿を見つけた。
声をかけようとしたが、見たことのない男子生徒と何やら話し込んでいる。
──だれだろ、あれ。特進の人かな?
すると、その男子生徒は理央の肩に手をかけて、自分の首元を見せた。
咲人は咄嗟に近くの植え込みに隠れる。
まさか、こんなところで出くわすなんて。
きっとあの男の子が、理央に血を提供している生徒だ。
咲人は早鐘を打つ胸を押さえながら、二人の様子を伺った。次の瞬間、理央がその生徒の手を掴み──
その先を見るのは怖くて、咲人はその場から全速力で逃げ出した。
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