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第21話 残された絆⑮※
その日の夜。咲人は理央に話を聞くことにした。
授業中もあの男子生徒のことが気になって、全く集中できなかったのだ。
「……なあ理央。今朝一緒にいた男の子って、同じクラス?」
「今朝?ああ……あの子のことかな。そう。たまに話しかけられるんだけど、別に仲良くないよ」
やっぱり特進クラスの人なんだ。ということは、相手も吸血種の可能性が高い。
「……その子のさ……」
血を吸ってるの?なんて。やっぱり咲人には怖くて、聞くことができない。
「……いや、話しかけてくれんなら、仲良くしろよ」
「ちょっと面倒なんだよ、彼。そんなことよりも長谷川くんが今日、僕の話を聞かれたって言ってたんだけど」
アイツ……理央に言ったのかよ。やっぱ最低な奴だな。
「神崎のことが気になるなら、僕に直接聞けばいいのに」
「いや……そんな大したことじゃなかったから」
「また僕に隠し事?咲人が言いたくないなら、無理には聞かないけど……長谷川くんに近づくのはだけはやめてね」
隠し事してるのは、理央の方だ。血が欲しいなら言ってくれればいいじゃないか。そしたら、血なんていくらでも差し出すのに。
なんで理央は自分じゃなくてあんな……だめだ。これじゃただの嫉妬だ。
「なぁ、長谷川とも仲良くしろよ。同じクラスメイトなんだからさ」
「咲人にあんなことした奴と、仲良くなんてできるわけないでしょ」
「俺は……理央が良い奴だって知ってくれる人が増えてほしいんだ。ずっとそう、願ってたから」
そう言って理央を見つめるも、理央は目を伏せてしまう。
「……なあ理央。お前って中学の時も周りとそんな感じだったのか?」
「……咲人は知らなくていいよ」
ふと、下唇を親指でなぞられ、無意識に体が強張ってしまう。
その仕草が気に障ったのか、理央は目を少し細めた後、咲人の耳元あたりから手を差し込み、顔を上向かせた。
「ねえ、今日は咲人からキスしてほしいな」
「だから……勉強するって言ってんだろ」
咲人がそう言っても、理央の手は離れない。理央はじっと、咲人を見つめている。
この瞳に見つめられると、どうしても抗えなくなる。
咲人はいつものように理央の上に跨った。この姿勢だと、咲人の唾液がいっぱい貰えて、理央は好きらしい。
ゆっくりと理央に近づき口付けると、すぐさま頭の後ろに手が回り、固定された。
「……ふっ……ん……っ」
もっともっと、と唾液をねだるように舌を吸われ、静かな部屋に淫猥な音だけが響いている。
苦しくて理央の肩を叩くも、より強く頭と腰を引き寄せられ、拘束が強くなってしまう。
上顎を何度も舌で擦られるとぞわぞわとした感覚が下半身に走り、中心に熱が集まっていくのが分かる。
たっぷりと唾液を吸われ唇が離れた後、理央の視線が咲人の下半身へと向けられた。
「咲人……勃っちゃったんだね」
「……へ?」
そのまま理央に抱き上げられ、ベッドの上にぽすんと押し倒された。
咲人が驚いているうちに、理央に素早くズボンを剥ぎ取られる。
「待っ!待って!!それはダメだって」
「でもほら、もうすごい染みちゃってるよ?」
咲人が履いてるグレーのパンツの中心には、理央とのキスで感じてしまった証拠が丸い染みとなって現れていた。
その中心部分に理央の手が伸びてきて、布の上からするりと触れられた。
「あっん……触んなって……、理央があんな……するからだろ……っ」
恥ずかしいのと情けない気持ちでいっぱいになり、咲人は思わず手のひらで目元を覆う。
するとすぐに、素肌に空気が触れる感覚がした。下を向くと同時に、咲人の中心は理央の温かいに口内に包まれた。
「嘘だろ?やめ……っ、理央っ、んっ……あぁっ……んん……っ」
理央の口淫に為す術もなく、咲人はあっという間に理央の口の中に吐精した。
それを余すことなく理央は飲み込み、口端についた精液まで綺麗に舐めとった。
「も……なんでそんなのまで飲んじゃうんだよぉ………うぅっ」
「泣くほど嫌だった?」
「やじゃ……ないけど……っ、こんなの、恥ずかしいだろ……」
「嫌じゃないんだ」
どこか嬉しそうな理央が、咲人の頭を撫でる。ゆっくりと、何度も。
髪をとかすように優しく撫でられて、咲人は理央に今された事を全部許してしまいそうになる。
泣きながら吐精した疲れが、どっと襲ってきた。
「もう寝なよ。点呼の時間になったら起こしてあげるから」
懐かしい匂いに包まれながら、咲人は目を閉じた。
理央に、恋をしている。
出会った頃から理央は『特別』だったけれど、再会した時その『特別』は咲人の中で少し変化した。
理央と出会った頃は、理央のことを守りたいと思っていた。
理央を笑顔にしたかった。理央のことがたまらなく愛おしかった。
あの頃はまだ、恋ではなかったと思う。
そして月ノ宮で理央と再会して、咲人は理央に恋をした。
咲人は理央のことが愛おしくて、好きなのだ。
理央も咲人を大切に思ってくれてることは、わかっている。
理央からも愛を感じてる。こういうことをするようになってから、余計に。
だからこそ辛い。理央から、他の人の影を感じてしまうことが。
──わかってる。だって。
再会してから理央は、一度も咲人の血を求めてない。
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