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第38話 溢れ出した欲望⑧【理央side】※

 二人で寮に戻るとすぐに、理央は咲人のことを後ろから抱きしめた。  咲人の首筋に流れる汗を舐め取ると、非難の声が上がる。 「ちょ、俺いま汗だくだからシャワー浴びたいよ」 「だめ」  理央は一言だけそう呟くと、咲人の首に巻かれた包帯の結び目に、手をかけた。緩んだ布の隙間から見える、咲人の素肌。  そこへゆっくりと、理央は牙を落とした。皮膚に突き刺さる、柔らかな感覚。 「へ……?」  状況を理解できてない咲人がこちらに振り向こうとする。  それを許さぬよう緩く顎を押さえ付けると、溢れ始めた咲人の極上の血を、ゆっくりと吸い上げた。 「理央……なんで」  少し強めに吸い上げると、咲人の体がびくりと揺れる。 「あ、ああ……まって、なんか……っ」  自分の口を手で押さえながら、何かに耐え始めた咲人。そのまま前のめりになっていく体を抱え直すと、理央は音が立つほど強く血を啜った。 「んあっ、あぁ……っ、やだ、んああっ」  咲人の喘ぎ声と血を啜る音が部屋に響き渡る。  限界を知らせるように咲人の体が震え始め、それを押さえる理央の手に爪が立てられた。 「理央、やめ……出るっ、出ちゃう、やああ……っ」  びくんと咲人の体が震えた後、完全に力が抜けていく。 「んっ、んん、ん……っ」  数回に分けて精が吐かれているようで、びくびくと咲人の体が揺れている。  その体を支えながら理央がゆっくりと牙を抜き取ると、それにも感じてしまった咲人が小さく喘いだ。 「可愛い……僕に血吸われて、気持ち良くなっちゃったんだね」  理央は愛おしむように咲人の頬にすり、と顔を寄せる。  牙を刺した場所からはまた新しい血が出てきていて、理央はそれを舐めとった。 「……なんで?俺、理央に血、吸われただけなのに……っ」  咲人が困って、泣いてる。可愛い。可愛い。理央はその涙を舌で舐めとる。  放心状態の咲人は理央にされるがまま。そして縋るような瞳でこちらを見つめてくる。 「はぁっ、体が熱い……から、助けて、理央」 「うん……僕が助けてあげる」  理央は咲人を抱えベッドまで運ぶとその上にゆっくりと降ろし、力の抜けた咲人の衣服を脱がせていく。  ぐっしょりと濡れた下半身を隠すように咲人が足を動かすと粘着音が立って、咲人の顔が更に赤くなった。 「いいよ、咲人の恥ずかしいところぜんぶ見せて?」  閉じられた足をそっと割り開き、濡れた布の上から咲人のものに触れる。  咲人が一番感じやすい先端部分を優しく包み刺激すると、くちゅくちゅと音が立つ。 「んっ、やだ理央、これ脱ぎたいよ……っ」  首を振って嫌がる咲人の首筋から鮮血が流れてきて、その血をなぞるように舐めとり、傷口をもう一度吸う。  たっぷりと精を含んだ下着を抜き取ると、咲人のものは可哀相なくらい先端から涙を流し勃ち上がっていた。 「俺、おかしい……全然おさまんない」 「大丈夫、おかしくないよ」  目尻にキスを贈ると、咲人が辛くならないよう腰の辺りにクッションを敷く。後ろを慣らすために足を割り開くと、先端から透明な液体がぷくりと滲み出す。咲人の形に沿って流れ落ちていくそれは後ろの方にまで垂れていて、奥にある小さな窄まりを濡らしていた。そのあまりにも淫猥な光景に、思わず理央は唾を飲む。  穴の周りをくるくると撫でつつ、時々中心へぐっと指を押し込むように触れていると、そこが理央の指にきゅっと吸い付くように動いた。 「理、央……っ」  涙の膜を張った瞳が、こちらを見つめている。理央はローションを取り出すと、自分の指に垂らした。  咲人が手を伸ばしてきたので理央はその手を握りしめながら、ゆっくりと指を侵入させていく。咲人の感じる場所を刺激してあげながら指を増やしたところで、咲人の中がうねり始める。揃えた指を中で動かすと、指がきゅっと締め付けられ、咲人が精を吐いた。  すかさず指を増やすと、果てたばかりの咲人がぎゅっと理央の手を握りしめてくる。 「んあっ、あっ」 「凄いよ、咲人。僕の指美味しそうに飲み込んでる」 「言う……な……っ」 「今までたくさん慣らしてきたもんね」  中を広げるように指を動かしていくと、咲人は甘えたような嬌声を上げる。  しばらくそうしているうちに手をぎゅっぎゅっと握りしめられ、理央は動かしていた指を止める。 「理央、おねが……もっと奥ほしい……っ」 「いいの?まだ痛いかもしれないよ?」 「い、いいから……も、はやく……理央っ」  理央は早る気持ちを抑えながら、自分の服を脱ぎ去る。  そして散々慣らした咲人の窄まりに自分のそそり勃つものをあてがうと、そこへローションを垂らした。  ぬめりを纏わせたそれを、咲人の中へゆっくりと沈めていく。 「理、あっ……んん……あああっ」 「……っ……咲人の中、すごい……」  最後まで納めきった後、ぐっと奥を刺激するように腰を動かす。 「あぁっ!」  中がうねり、咲人の目尻から涙がこぼれた。 「……っ、馴染むまでゆっくりするから」  体を前に倒し、咲人の髪を撫でる。うるうるとした瞳と目が合ったので、微笑みかける。  腰を揺らし始めると咲人が口元に手をあてたので、その手を絡めとる。 「ここ気持ちいいの?」 「あっ、わかんな……っん……ああっ」  首筋の傷から血が流れるのが見えて、理央はそこへ舌を伸ばす。 「やっ、だめ、こわい……っ」 「うん。吸わないよ、こっちに集中しようね」 「理央、キス、してほしい……っ」  涙目でそう言われ、理央は咲人の唇を塞いだ。舌を絡ませながら腰の律動を速める。  咲人の中は頭が茹るほど気持ち良くて、自分が高みに上り詰めるための動きを止められない。  奥をかすめた瞬間中がうねり、咲人も限界が近いことを察する。 「あっ、ああ、も……いく……っ」  咲人が果てた後、凄まじい締め付けを受け理央も咲人の中へ果てた。  すべて出し切ると、理央はゆっくりと咲人の中から自分のものを抜く。その瞬間、咲人の中で吐き出した精がこぽりと溢れ出す。  自分の精で汚れた咲人を見て、理央はこの上ないほどの幸福感を味わっていた。  しばらく咲人を抱きしめながら息を整えていると、腕の中の咲人がもぞもぞと動きした。 「うぇ……まずい」  自分の血の味に顔を歪めた咲人が、水を飲みたいと騒ぐ。 「咲人にだけ教えてあげたのに。これが君の味だよ」 「全然おいしくない……」  腕の中から抜け出そうとする咲人を許さないように、首元に顔を埋める。 「じゃあぜんぶ僕にくれる?」 「んっ……最初から理央のだよ」  当然のようにそう答える咲人。 「咲人……大好き、愛してる」  これで本当に咲人は、自分のものになった。  ──もっともっと、咲人を僕のところまで堕とさないと。  仄暗い欲望が体の内側からじわじわと滲み出てくるのを感じながら、愛しい人の真っ赤に染まった唇を塞いだ。

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