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第43話 重ならない思い⑤※

 辿り着いた場所は、先ほどよりも人気のない場所にある教室だった。  ここは何かの準備室のようで、狭く、カーテンが閉まった教室内は昼間なのに薄暗くて、重たい雰囲気に包まれている。 「そこに手突いて、立って」  理央に言われた通り、咲人は壁に手をつく。そしてすぐ後ろに理央が立ったのが分かった。  いつもとは違う冷たい雰囲気に、少しだけ怖さを感じてしまう。すると突然後ろから抱きしめられて、ネクタイを緩められた。 「今から君の血を吸うけど、僕がいいって言うまでそのままでいて」 「え……今、吸うのか?」  今理央に血を吸われてしまったら、確実にこの後の授業には戻れなくなるだろう。 「じゃあ、やめよっか」  咲人の心が揺れているうちに、理央の手が離れていく。慌てて理央のシャツを掴み、首を振る。 「吸って、いいから」  咲人は自ら包帯を外して、首筋を晒した。そうして言われた通り壁に手を着くと、首筋に理央の息がかかる。 「痛くても、気持ち良くても……我慢してね」  そう言われ、咲人が目を瞑った瞬間。理央の冷たく尖った牙が、咲人の首筋にゆっくりと刺さった。  首筋からじわじわと広がる快感に、咲人の足が震え出す。 「んん……っ」  気を抜いたら、一気に膝から崩れ落ちてしまう。でも今膝をついたら、理央にしなくてもいいことをさせてしまう。自分のせいで理央が悪者になってしまうのは、絶対に嫌だ。 「や……んん……っ」  咲人は歯を食いしばり、壁についた手に力を込めて必死に耐える。  気持ちいい。この快感を、全身で味わいたい。膝を、折ってしまいたい。  下半身は痛いほどに勃ち上がり、そこからとろとろと蜜が零れているのが分かる。あと少しで、果ててしまう。咲人の体がびくびくと震え始めたところで、首筋から牙が抜かれてしまった。 「……咲人、いいよ」 「っ……!」  体の力が、一気に抜ける。その場に崩れ落ちそうになったところで、理央に後ろから抱き止められた。 「はぁっ……はぁっ……」  下半身に溜まった熱が中途半端に放置されてしまい、たまらなく、辛い。理央に血を吸われたらこうなることは、わかっていた。  いきたい。この熱を今すぐ吐き出したい。痛いくらい張り詰めた自分のそれに、自然と手が伸びてしまう。 「ん……っ理央、みない、で」  涙が溢れる。恥ずかしい。けど、今すぐそこをたくさん擦って、出したい。  しかし理央にその手を握られ、壁に戻されてしまう。 「僕がいるのに、一人で気持ちよくなったらだめでしょ?」  耳元で咎めるようにそう言われて、咲人の限界まで保たれていた理性は完全に失われた。 「理央、おねがい、触ってほし……っ」  涙を流しながら理央のことを見つめ、懇願する。理央の喉がごくりと動いたのが、見えた。 「いいよ。ちゃんと我慢できたから、ご褒美をあげる」  そう言うと理央は咲人の体を机まで移動させた。咲人が机に手をつくと、理央の手によってズボンのベルトが緩められる。太腿の位置まで下着をずらされた後、股の間にぬるりとしたものが入ってきた。 「咲人、脚締めて」  言われた通り、咲人は太腿でそれを挟むように力を込めた。ぬるぬると出入りするそれはいつもの行為を匂わすかのような動きで、視覚的にも刺激されてしまう。裏側を理央のもので何度も擦られて、堪えきれない甘い声が漏れ始める。 「んあっ、んんっ、ああっ」 「しーっ……外に聞こえちゃうよ」  理央にそう言われ、咲人は自分の手の甲で口元を押さえる。 「んっ……んんっ、んっ」  何度か出し入れされているうちに、ぐり、と尻のあわいに理央のものが押し付けられた。 「や、だめ、入っちゃう……っ」 「慣らしてないから入らないよ」  だから大丈夫、もっと力入れてと、優しい声で吹き込まれる。 「でも、んっ、んんっ……ああっ!」  ぐっ、と押しつけられた瞬間、先端が少しめり込んだ。 「ああ、ちょっとはいっちゃったね」  理央は悪びれる様子もなく、何度か同じことを繰り返しては咲人を焦らす。  再び太腿にそれが戻され、腰を打ちつけられる。限界が、近づいていた。 「だめ、理央っ、あ、ああっ、い……っ」  咲人が果てた瞬間、尻のあわいに温かいものがかけられた。  ぐっ、ぐっと、浅いところにそれを塗り込むように動かされ、その度に咲人は声を漏らす。 「はぁっ……んっ、あ……」  咲人は上半身を机にべったりと預けるように、倒れていた。理央が満足したところで、咲人の手に触れる。 「ここ、自分で噛んじゃったの?」  いつの間にかできていた手の甲の噛み跡を、理央の舌で丁寧に舐めとられる。  その僅かな刺激にさえも咲人の身体は快感をとらえ、震えている。 「言うこと聞けて、偉かったね」  もうおしまいだよ、というように理央は咲人の身支度を整えた。  足りない。もっと奥まで欲しい。理央のでたくさん、気持ちいいところ擦ってほしい。  咲人の頭の中は、それしか考えられなくなっていた。 「今から戻っても遅刻だね……どうしよっか?」  ちら、とこちらを見つめながら、理央はそんなことを言ってくる。 「僕の部屋でなら、この奥をいっぱい突いて、咲人のこと満たしてあげれるけど……」 「あ……」  理央は人差し指で、咲人のお腹をすっとなぞる。あくまで咲人に選択を委ねた状態で、そんなことをしてくるのだ。  今言われた事を想像しただけで、お腹の奥が勝手に期待し、収縮しているのがわかる。  こちらをじっと見つめる妖艶な瞳に、咲人の思考は完全に囚われた。 「……理央の部屋、連れてって」 「うん、おいで」  熱に浮かされた頭で手を引かれながら、咲人はただ理央の後ろをついていく事しかできなかった。

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