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第45話 重ならない思い⑦※
咲人は晴と別れた後、急いで理央のいる寮へと向かう。
知らなかった。自分のせいで、理央がそんなことになっていたなんて。
焦る気持ちを抑えながら、咲人は理央の部屋の前まで辿り着いた。
するとなぜかその扉が開き、理央の手が伸びてきて咲人の腕を掴んだ。部屋の扉が、音を立てて閉まる。
「どこ行ってたの?」
理央は咲人の腕を掴みながら、咎めるような声色でそう言った。
どこか冷たさを感じる理央に怯えながらも、咲人は顔を上げ、その瞳を見つめる。
「理央の家族に……晴くんに会ってきたよ」
「なんで咲人が晴と会ってるの?」
掴まれた腕に、力が込められる。
「っ、晴くんがお前のこと心配して俺に手紙くれて、それで……理央、あの薬のこと聞いた。お前一度、向こうで倒れたんだろ?」
「そうだね、そんな事もあった」
なんとも軽いその返事に、咲人は戸惑う。けれどこの様子では、理央はきっとまた同じことを繰り返す。
「理央……家族に言われたことはちゃんと守らなきゃ、だめだろ?守れないなら、あの薬は俺が、預かる」
そう言うと、理央に掴まれていた腕が放された。
「わかったよ、じゃあもうあの薬は全部捨てる」
「え……あ、ああ。それなら別に、良いんだ」
まさかそんな簡単に手放してくれるなんて思っていなかったので、咲人は拍子抜けしてしまった。理央が部屋の方へ歩き出したので、咲人も後を追う。
「ああ、そうだ。咲人には明日から、僕の部屋で生活してもらおうと思って」
「……へ?」
「先生にも既にそう伝えてあるから。荷物全部、まとめてね」
理央はさも当然のように、そんなことを言った。
「そんな、急に言われても……なんで勝手にそんなこと、するんだよ」
「持てる力は全て使わないと。咲人はすぐに僕以外のところへ行ってしまうから」
僕以外のところ?咲人の心が理央以外に向くことなんて、ありえないのに。
「……なあ理央、何がそんなに不安なんだ?俺はお前以外の人のこと、好きになったりしないよ」
すっと細められた、冷たい瞳。咲人はこの目が苦手だった。まるで、自分の知っている理央じゃない様に見えてしまうから。
「咲人は僕のことが好きなのに、同じ部屋になるのは嫌なんだ」
「そうじゃないけど、俺が下弦寮に入るなんて……そんなのおかしいよ」
咲人は俯き、足を止める。
「じゃあ咲人の部屋でセックスしよっか」
「……え」
理央の口調は淡々と、冷たさを孕んでいる。
「君が僕の部屋に来ないなら、もう二度とあの部屋には帰れなくしてあげる」
「理、央……」
「北見くんに見られながらしたら、咲人も興奮するのかな」
「っなんでそんなこと言うんだよ!理央はそんなこと言う奴じゃないだろ……っ」
理央の言葉に、思わず涙が溢れてくる。そんなこと、理央に言って欲しくなかったのに。
「泣かないで、咲人。他人にこんな可愛い顔、見せるわけないでしょ。僕だけのなんだから」
「そゆことじゃ、ないっ……んっ」
体を壁に押し付けられ、深いキスをされる。咲人は理央の舌から逃れるように肩を押し返すも、強引に絡めとられてしまう。
「ふっ……んっ……んん」
咲人の口内を満足するまで蹂躙した後、理央の唇は離れていった。
「僕に黙って他の男と会ってたなんて、咲人は悪い子だね」
言葉とは裏腹な優しい指先が、咲人の頬を撫でる。
「ごめん、なさい」
理央の視線から逃れる様に、目を逸らす。この後自分がされる事は、もうわかっている。
俯いた咲人の手を、理央が掴む。そのまま手を引かれて、ベッドの上に押し倒された。
「なあ、理央とちゃんと、話したいよ」
咲人は懇願するように、理央の頬を優しく包む。
「いいよ、でも咲人が気持ち良くなってからね」
耳元にキスをされた後、優しい声で残酷なことを告げられる。理央は咲人の話を聞く気なんて、初めからないのだ。
シャツの中に理央の手が入ってきて、胸元を弄られる。
理央に沢山弄られてきたその部分は、触れる前から既につんと尖っていた。そこを可愛がるように指先で優しく擦られ、押しつぶされる。
「んっ、や……お願い、理央」
胸の高さまでシャツがたくし上げられて、胸の先端を口に含まれた。
「あ……っ」
気持ちよくてつい、甘い声が漏れてしまう。それを隠すように、咲人は口元に手の甲をあてた。きゅっと吸い付くように食まれ、尖らせた舌で押し潰すように刺激される。口が離されたと思ったらもう片方にも吸いつかれて、咲人は再び声を漏らす。散々食まれた方は理央の唾液でいやらしく濡れていて、それを塗り込むように指先でくるくると弄られた。生温かい口の中で、指先で、もどかしい刺激ばかり与えられ、咲人の全身に理央の甘い毒が周り始める。
「はぁ……っ、ん……っ」
熱を持ってしまった中心が切なくて、咲人は足を擦り合わせて誤魔化す。すかさず理央の手が太ももに伸びてきて、その足を割り開く。
「触ってもいいよ。こっち、弄っててあげるから」
「あ……っ」
手を握られ、自分のものへと誘導される。触れられるのを待っている自分のそこは、切なそうに愛液を垂らしながら震えていた。理央に見られながらするなんて、とても恥ずかしいことなのに。
咲人は目を瞑りながら、自分のものに、触れた。焦らされていたそこは、触れただけで快感が走る。擦ると、吐息が漏れるほどに気持ち良くて、手の動きが止まらない。
「可愛い、いつもそうやってるんだ」
理央に、見られている。恥ずかしいのに、それが興奮材料になって、どんどん熱が溜まっていく。胸の先を指で弄られながら、唇で強く吸われた瞬間。腰がびくりと揺れて、手の中に精が吐き出された。その手を絡め取られて、自分が吐き出した白濁を理央に舐めとられる。蕩けた瞳でその様子を見つめていると、理央に組み敷かれ、身体中にキスをされた。額、唇、首、お腹、理央の唇はどんどん下へ降りていく。太腿を持ち上げられて、そこへ唇が寄せられた。
「ああっ」
理央の牙が、刺さっている。内腿の柔い部分から、血が吸われていく。理央はその柔らかな感触を味わうように、何度も咲人の肌を食んだ。痛くて、でもたまらなく気持ち良くて。頭が熱に浮かされていく。
牙が抜かれた後、理央の手が咲人の後ろへと触れた。愛液で厭らしく濡れたそこへ、理央の指が侵入してくる。浅いところを擦るように触れられ、咲人の屹立が期待するように涎を垂らし始めた。
「はぁ……っ」
もっと奥に触れてほしくて、理央の瞳を見つめる。すると理央が動き、咲人の腰を持ち上げた。尻たぶを割り開かれ、そこへ理央の顔が近づく。
「やっ、理央……っ」
理央の舌が中に入ってきて、思わず両手で口を塞いだ。
ぬろぬろと舌で唾液を送り込むように出し入れされて、体の力が抜けていく。舌が離れた後はすぐに指が入ってきて、先ほどよりも深いところまで沈められる。それを何度か繰り返され、少しずつ後ろが慣らされていく。
咲人はもう、息も絶え絶えだった。腰を下ろされ、慣らされたそこへ理央の硬く張り詰めたものがあてがわれる。
理央のものが、入ってきた。快感に震えてしまう体を、理央が優しく抱きしめてくる。それからゆっくりと、咲人の官能を揺らすように、理央の腰が動き始めた。
「も、やぁ……」
いつもよりも緩慢なその動きは、なかなか高みに辿り着けず、咲人は快楽の狭間を彷徨っているようだった。
「あ……っ、理央、いきた……んっ、んん」
「だめ、感じてるところもっと見たい」
快感に耐える咲人の頬は、熟れた桃のように可愛らしく染まっている。
「咲人はもう中だけでいけるもんね?」
あれはだめだ。何も考えられなくなってしまうから。
ゆっくり、咲人の体を溶かすように、刺激される。お腹の奥がびくびくと不自然に震えてきた。
そして一番感じてしまう場所に理央の先端があたって、咲人の頭の中は真っ白になった。
「やぁ……っ、んっ……あ……っ」
咲人は中でいってしまい、凄まじい快楽の波にのまれた。腰が勝手に浮いてしまって、枕の端を必死に掴む。
「っ……すごい……ね、もっとしてあげる」
理央はそう言うと、咲人の体をひっくり返した。
後ろから何度も何度も激しく穿たれ、部屋の中は耳を塞ぎたくなるほどの淫猥な音が立っている。理央が腰を打ち付けるたび、咲人の体は壊れたおもちゃのように揺れ、繰り返し絶頂に達していた。
「あっ、ああっ、も、や、いってる、からぁ」
「咲人は僕の部屋に来るよね?」
「あ、ああ、っあ、あああっ」
「僕の部屋に来るって言って!」
ばちゅんっと一際大きな音が立ち、咲人の中がうねる。
「んああっ、わかったからぁ、も、だめ、い……っ」
咲人は体をしならせ、痙攣するように体を震わせながら、果てた。けれど先端からは、とろとろと勢いのない白濁が力なく出ているだけだった。理央のものに貫かれたまま、後ろからすり、と頬に顔を寄せられ、抱きしめられる。
「嬉しいな、これから毎日一緒に寝れるんだ」
「はぁっ……はぁっ……」
「眠くなるまでたくさんしようね。そしたら咲人と同じ夢、みれるのかな」
遠のく意識の中で、理央の嬉しそうな声が聞こえる。その声を聞きながら、咲人は意識を手放した。
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