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第47話 日本

子供たちの分の請求が済んだら、その後母親たちから慰謝料請求していくつもりだった。 終わったと思わせて、また次を仕掛ける。 いくら内密に事をすすめようとしても、どこからか話が漏れるのは時間の問題だろう。この人数の愛人と子供がいたわけだから、隠し通せるものではない。他言無用だと言ってもそうは問屋が卸さないだろう。 この事実が明るみに出れば株価は下がり田中井物産の存続は厳しいものになる。 先を見越して、早急に決着を付けなければならない。と飯田弁護士は考えていた。 金がなくなる前にとどめを刺す。 悠里が帰ってくるまでに、できるだけ話を進めておく。 悠里は司法修習生になると、副業禁止で、仕事ができない。ひとりの依頼人の立場で田中井と戦う事になる。 けれどこの仕事がうまく行けば、今まで虐げられてきたΩ性の人達に希望が生まれる。 そして今後、バース性による、いかなる差別も許されないという認識を世間に広めることができるだろう。 佐倉悠里。君が未来を作るんだ。 飯田弁護士は、事務所の椅子の背もたれに体重を預け大きく伸びをした。 悠里のいない日本で、今飯田はひとりで頑張っている。

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