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第56話 番*
梶さんが帰宅し、悠里は玄関で抱きしめられた。
最初の頃このマンションで梶さんと共に暮らすようになって、帰宅するたびに抱きしめられたのを思い出す。
あの頃のように、悠里も腕を梶さんの背中に回しギュッと力を込めた。
「このままキスしてしまうと悠里を押し倒してしまいそうだから」
そう言って額に優しく口づける。
テーブルでは悠里の得意料理のもつ鍋が、美味しそうにグツグツ音を立てている。
久しぶりに二人で食卓を囲む。悠里は幸せだなと嬉しくなった。
早速二人でビールを開けて乾杯し、会えなかった間のことを話した。
「その裁判の判事は誰だった?」
Ωの少女の売春裁判の話をすると梶さんが判事の名前を聞いてきた。
「谷判事です。直接話す機会があったのですが緊張してしまって、挨拶もまともにできませんでした」
「ははっ、まあそういうこともある。谷判事はなかなか人情派で知られる判事だな」
梶さんも知っているなら、谷判事は相当有名な人なんだろう。
大橋裁判官があの裁判を悠里に見せて伝えたかった事は、Ω專門法務士の必要性だと悠里は思った。
Ωであるがゆえの不遇、それを助けるための資格、Ωにとっての希望の光がΩ專門法務士であることを。
そして谷判事は凄かった。
自分こそが正義だと確信できなければ判決は出せない。
谷判事は周囲を圧するような威厳があった。公明正大な裁判だった。
「悠里は福岡でもいろんな出会いがあったんだな。知らないうちにどんどん悠里の周りには人が集まってくる。最初は俺だけのものだと思っていたのに、なんだか少し嫉妬してしまう」
「たくさんの出会いがあって自分は成長したと思っています。けれど梶さんは特別です」
そう言って朔也は梶の肩に手をかけて抱きついた。
落ち着ける場所はやはり梶さんの腕の中だ。
食事の後片付けを終えると、一緒にお風呂に入ることにした。久しぶりなので恥ずかしくて少し照れてしまった。
中学生頃あの家に居場所はなかった。酒に溺れて始終自分をののしる母親。最後まで面倒を見なければならないと他の選択肢を選べなかった自分。
今ある当たり前の居場所、愛する人に抱きしめられる安心感。これ以上の幸せはないんじゃないかと悠里は思った。
少しでもこの人を不安な気持ちにさせたたくない。
「……梶さん僕を番にして下さい。僕のうなじを噛んで欲しい」
熱い湯船の中で梶はより一層深く悠里を抱きしめた。
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「なんだか……感無量だ」
ベッドの上で梶さんは悠里の体を余すところなく愛撫している。舌を這わせながら施される巧みなキスに悠里の白い肌が熱を帯びて火照ってゆく。
触れられているすべての場所が気持ちいい。
艶を帯びた唇が優しく重ねられた。
梶さんのまなじりが少し潤んで見えた。
愛おしい人、僕の全てだ。悠里は梶さんの舌を味わいながら、胸いっぱい彼の匂いを吸い込んだ。
太くごつごつした梶さんの指が悠里の窄まろうとする肉壁を押し開いてゆく。浅い入口の所を何度も抜き差しし指を増やされる。
執拗に繰り返されるその動きに、悠里は苦しそうに目を瞑って眉間にしわを寄せる。
悠里の表情をじっくり観察しながら、梶さんは興奮している。息遣いが荒くなっている。
「最高にエロイな」
「も……早く……」
悠里は一刻も早く梶さんの太い血管が隆々と浮いて脈打つソレが欲しくて、腰を浮かせた。
久しぶりに異物が体内に入り込んでくる衝撃は、電気を帯びたようにびりびりと朔也の太ももを震わせた。
ガッガッツと堀えぐられ朔也の最奥まで力強く侵入し突きえぐられた。
こんなに大きかったのだろうかと思うほど、猛々しい梶さんの熱塊に、悠里は悲鳴に近い声をあげる。
「む……無理です、抜いて、凄い、ちょ、と待って」
「もう十分待った……」
梶さんは貪欲に悠里の中を蹂躙し、肉の杭を根元まで沈めた。
「ああ!」
もうイク、と思った瞬、梶さんは自分のモノを引き抜き、悠里をうつ伏せにして腰を持ち上げた。
もうイキそうだったのにと「んん……」と悠里は不満げな声をあげた。
けれどすぐに後ろから悠里のモノを扱き愛撫され、先端を指の先でぐりぐりしてくる。
梶さんの指使いに、またすぐに興奮し気持ちよくなる。
されるがままの状態で、お尻だけ突き出した悠里を、梶さんはまた後ろから一気に貫いた。
とてつもない快感に、脳が解けてしまいそうだ。
ぐちゅりぐちゅりと音がして、滑る梶さんの熱い塊を悠里は肉壁で締め上げる。
ただ気持ちがいい。気持ちがいい、と悠里はよりいっそう腰を突き出しおねだりする。
自分はこんなに厭らしかったのかと思うくらい喘ぎ、制御不能に陥り、先から蜜を滴らせている。
「すげえたまらない。奥まで突きまくるぞ……」
梶さんはスピードを上げる。きゅうっと身体の奥深くが切なく疼いた。
「……っつ」
激しい出し入れ、後ろから違う角度で抜き差しされもう限界だ。
「悠里、愛してる……」
梶さんは激しく息を吐きながら、絞り出すように声をあげた。
「ああ……ダメ……もう、イク!」
悠里がそう言ったと同時に梶さんは悠里のうなじに噛みついた。
ゴリっと音がするほど、それは深く、痛く、強かった。
噛まれた項から血が滲む。
悠里はだらりと首を垂れるとそのまま意識を失った。
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