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第30話 生け贄の王子(4)

 3ー4 背負わせてくれ  魔法学園には、貧しくとも優秀な学生を援助するための制度がある。  それが特待生だ。  でも、僕は、たった今までリリアンが特待生になってるなんて知らなかった。  「リリアンが?」  僕の問いにテシガアラが頷く。  「ああ」  「そんな、まさか」  僕が知る限りリリアンが特待生になるなんてことは、無理なことだった。  リリアンは、バカではないが勉強があまり得意ではない。  いつもどちらかというと後ろから数える方がはやいぐらいの生徒だ。  それが、特待生?  僕は、テシガアラのいうことが理解できなかった。  テシガアラが僕に話す。  「俺もがんばって特待生になるつもりだ。それに放課後は、働いて生活費を稼ぐよ」  「そんなの」  僕は、混乱していた。  「無理だよ」  「いや、実際にリリアンはやっているらしいし」  テシガアラが僕にいうには、リリアンは、放課後に街のパン屋で働いてお金を稼いでいるらしい。  「そんな・・リリアンが?」  僕は、冗談だと思っていた。  だって、リリアンは、王女様なんだよ?  この前まで1人で服も着れなかったんだよ?  そのリリアンが働いてるって?  とうてい信じられる話じゃない。  それに、僕は、リリアンのために毎月仕送りをしてるし。  「レリアスは、がんばりすぎなんだよ」  テシガアラが僕の頭を撫でる。  「言っただろう?もっと、俺を頼ってくれって」  「で、も・・」  僕は、いろんなことがありすぎて頭が真っ白になっていた。  リリアンを働かせているなんて!  僕は、情けなくって。  たった1人の妹に苦労かけてるなんて兄として悲しかった。  「なんで?」  僕は、涙に潤んだ瞳でテシガアラを見た。  僕は。  もう、必要がない人間なの?  僕は、なんのためにラクウェル兄の責め苦に堪えてるんだ?  僕の頬を涙が濡らすのを見てテシガアラがため息をつく。  「泣かないで、レリアス」  立ち上がったテシガアラがテーブル越しに僕を抱き寄せた。  僕は、もう、止まらなくて。  涙が次から次へと溢れてくる。  「ぼ、僕、は」  「レリアス」  テシガアラが僕の背をポンポンと叩いた。  「もう、1人で背負わなくてもいいんだ。ていうか、俺やリリアンにも背負わせてくれよ」  

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