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第39話 生け贄の王子(13)
3ー13 救助
「お、かまいなく」
僕は、ベッドの上で丸まってシーツを被って身を隠していたが、その人外メイドは、僕の側を離れようとしない。
でも、いったいどうやってトイレの世話をするつもりなんだ?
僕は、ぱかっと口を開いていた人外メイドの手を思い出して震えていた。
こわい!
こわすぎる!
人外メイドのせいで僕は、すっかり引きこもってしまっていた。
昼頃のこと。
人外メイドが食事を用意してくれたが、僕は、すっかりびびっていて一口も食べられなかった。
「召し上がっていただかないと」
人外メイドが僕を叱責した。
「ラクウェル様にお知らせするしかございませんが」
僕は、ぐぅっと呻いた。
それは、それで嫌かもしれない。
ラクウェル兄に僕が正気に戻っていることが知れたらまた、あの責苦を与えられることになるかも。
そう思うと。
僕は、ぞわぞわと冷たいものが背筋を走るのを感じていた。
もう、あれは、嫌だ!
どうにかしてここから早急に逃げ出さなくては!
僕は、さっきから尿意を覚えていて逃げ出したい思いは切実だった。
そのとき。
いきなりすごい爆音が耳をつんざいた。
「ふぇっ?」
僕がシーツの中から外を覗くと部屋の窓が吹き飛んでいた。
人外メイドが慌てて僕の方へと駆け寄ってくる。
だが、遅い。
「レリアスお兄様!」
爆発の時の煙に紛れてリリアンが僕のもとに駆けつけていた。
「リリアン!」
「もう、大丈夫ですわよ!ご安心くださいませ!」
リリアンが僕を立たせようとしたが僕は、足枷のせいで動けない。
リリアンがちっと舌打ちした。
「テシガアラ!」
「おう!」
窓の方からテシガアラが人外メイドの一部をぶら下げて現れた。
いや!
そんなもの、持ってこないで!
っていうか、テシガアラ、君、その人外メイド、1人で倒したの?
僕がぐるぐるなっている内にテシガアラがシーツごと僕を抱き上げた。
「しっかりつかまってろ!」
「らじゃ!」
リリアンがテシガアラの背にしがみつく。
テシガアラは、僕を抱いたままリリアンを背負って窓だった場所へと向かった。
「待て!」
王城を警備している騎士たちが駆けつける足音が聞こえる。
「テシガアラ!」
「2人とも落ちるなよ!」
テシガアラの背中が盛り上がって透明な水の翼がはえた。
「ええっ!?」
驚いて口をはくはくさせている僕ににっと笑いかけるとテシガアラは、飛んだ。
マジか?
僕は、ぎゅっとテシガアラに掴まると目を閉じた。
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