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第46話 水の魔王(7)
4ー7 妹
「でも、あんた、本気なのよね?テシガアラ」
リリアンがどすん、と僕たちが座っているソファの前の椅子に腰を降ろした。
「言っとくけど、うちのレリアスお兄様を傷つけるようなことがあったら、私があんたを殺すからね!」
「ああ?」
ハジメがリリアンを睨み付ける。
「誰に向かって言ってるんだ?」
「あんたに向かってよ」
リリアンは、テーブルの上にあったサンドウィッチを一切れつまむとはむっとかじりついた。
「レリアスお兄様は、ね」
リリアンがもぐもぐしながら話した。
「私が小さかった頃からかっこよかったんだけど、ちょっと気が弱くって女の人ともあんまりダンスとかも踊れなくてさ。ただの人見知りなだけなのに、いつの間にか、氷の王子とか噂されちゃって。ほんとは、すごくロマンチストで、流行りの恋愛小説とか隠れて読んでたんだから。たまに野良猫に餌をやってたり、ほんとに、ほんとに、かわいい人なの!」
リリアンがもぐもぐしていたものをゴクンと飲み込んだ。
「だから!世間の奴らがなんと言おうとも、レリアスお兄様だけは、幸せになって欲しいの!」
「リリアン・・」
僕は、ほろりとしていた。
あの、小さかったリリアンが。
1人で眠れなくって、いつも僕のベッドに潜り込んできてたあの幼い女の子がこんなに僕のことを思いやってくれるなんて。
僕は、そっと涙を拭おうとした。
それを見たハジメがリリアンをじろっと睨んだ。
「俺のレリアスを泣かせてんじゃねぇぞ」
「こ、これは、違うんだ」
僕は、すぐにハジメに言おうとしたけどハジメは、聞く耳持たない。
「レリアスはな!魔王である俺と結婚してくれるっていうようないい奴なんだぞ!こいつを逃したら、俺は、もう、一生童貞決定なんだよ!幸せにするに決まってるだろうが!」
「なら」
リリアンが冷たい目でハジメを見た。
「速攻抱こうとかせずに、ちゃんと婚約して、手順を踏んでからやることはして。じゃなきゃ、聖女の呪いをかけて二度とできなくしてやるからね!」
こわっ!
僕は、びびっていた。
リリアン、怖すぎる。
聖女の呪いって、何?
ハジメがぐぅっと呻くのを見てリリアンが勝ち誇ったような笑顔を浮かべた。
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