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第49話 水の魔王(10)
4ー10 必然
「落ち着いて、テシガアラ」
怒りを露にするハジメにリリアンが声をかけた。
「もし、ラクウェル兄にとってレリアスお兄様が無価値な存在だったならすぐに殺されていたのよ」
リリアンがふぅっとため息をつく。
「なんであれ、レリアスお兄様が生きててくれてよかった。私は、そう思うわ」
確かに。
もし、僕が色なしの王子でなかったなら、たぶん、ラクウェル兄は、僕を殺していただろう。
どんな目にあわされたにしても生きていられたことは、僥倖だ。
「でも!」
ハジメは、僕をちらっと横目で見た。
「俺は、納得できない!レリアスがあんなことされなくちゃならなかったなんて許せっこない!」
「それは、我々だって同じだよ、テシガアラ」
ラグナック学園長が拳を握りしめた。
「しかし、過ぎてしまったことは、どうすることも我々にはできない。レリアス様には、申し訳ないが野良犬に噛まれたとでもおもっていただくしかない」
「野良犬?」
ハジメが吐き捨てる。
「そんなかわいいもんかよ!あいつらは、悪魔だ。俺が魔王だと言うなら、それは、俺の手であいつらに止めをさすために違いない」
「レリアス様は、間違えたと言われたが聖女召喚で聖女ではなく、魔王であるテシガアラが召喚されたのはきっと偶然ではないだろう」
ラグナック学園長がテシガアラと僕を見た。
「これは、女神の考えに違いない。必然だったんだよ」
「とにかくこれからは、レリアスお兄様をお守りして、王城に巣くう邪神とその仲間たちを倒さなくては!」
リリアンが僕とテシガアラを見てこくりと頷いた。
「大丈夫。レリアスお兄様が受けた責苦に比べればなんてことはないわ。そうでしょ?テシガアラ」
「ああ」
ハジメが僕の髪にちゅっと口づけする。
「俺のレリアスを守るためにもやつらを滅ぼさなくてはな」
僕は、手を伸ばして横に座っているハジメの手をぎゅっと握った。
正直。
ラクウェル兄とは、もう戦いたくなかった。
でも。
それが僕の宿命だとしたら逃れることは叶わない。
「僕も戦うよ!」
僕は、ハジメの手を握ったまま告げた。
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