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第50話 水の魔王(11)

 4ー11 夏の夜  ラグナック学園長のもとを辞して僕たちは、魔法学園の庭園を歩いていた。  夏の夜は、暑くて僕は、首筋に流れる汗をハンカチで拭いながら歩いていた。  庭園には、爽やかな夜風が吹いていて僕たちの他にもちらほらと人影があった。  「リリアン様!」  神殿の神官らしい人影がリリアンを呼び止める。  「神官長がお呼びでございます」  「わかったわ」  リリアンは、僕たちに向き直るとちょっと不満げに口を尖らせる。  「せっかくこれからいいところなのに!でも、無視したらうるさいからちょっと私は神殿に行ってくるからくれぐらも」  リリアンは、きっとハジメを睨み付ける。  「いい?くれぐれもレリアスお兄様に不埒なことをしちゃダメよ!いくら婚約したからって、私が許さないからねっ!」  そう言い残すとリリアンは、神殿へと走り去った。  残された僕とハジメは、顔を見合わせてくすっと笑った。  「いい妹だな、レリアス」  ハジメに言われて僕は、こくこくと頷いた。  「ほんとに。僕には、もったいないいい妹だよ、リリアンは」  なんだか。  僕たちは、パーティーにも顔を出しにくくて、そのまま僕が暮らしている職員用の家までゆっくりと夜道を歩いていた。  遠くにみなが浮かれ騒ぐ声がきこえていた。  僕たちは、手をつないで歩いていた。  僕の住んでいる職員用の家は、庭園の外にある。  急げば10分ぐらいの距離を僕らは、ゆっくりとそぞろ歩いた。  空には、星が輝いていて。  僕たちは、途中で立ち止まっては、キスをした。  「こんな幸せが僕にもあるなんて思ってなかった」  僕が呟くとハジメがふっと口許を緩める。  「俺も、さ。まさか、異世界でこんな素敵な恋人ができるなんて思ってもいなかった」  ハジメに頬に口づけをおとされて僕は、ドキドキが止まらなくなっていた。  なんだか。  頭がぼぅっとして、まるで夢でも見ているようだ。  庭園には、いい薫りが漂っていたけど花は、今は、あまり咲いていなかった。  今の季節に咲く花は、貴重だ。  僕は、ふと茂みに咲く白い花に気づいて足を止めた。  僕の見つめているものに気づいたハジメは、僕から離れると花の方へと歩いていく。  僕もついていこうとしたそのとき、僕の足元に白い魔方陣が浮かび上がった。  「何?」  光の中から肉色の触手が伸びたきて僕の手足を拘束した。  「レリアス!」  「ハジメ!」  僕は、触手から逃れようとしたが触手は僕の体を縛り上げて。  僕は、悲鳴をあげていた。  「ぃやあっ!」  「レリアス!」  僕を助けようとするハジメの前に金色の人影が歩み出た。  「ラクウェル・・兄上!」  「悪いがこいつを取り戻しにきたぞ、魔王よ」  ラクウェル兄がハジメをねめつけた。  「これは、私のもの、だ。返してもらう」  

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