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第51話 水の魔王(12)

 4ー12 魔王  「い、やだっ!」  僕は、叫んだ。  「僕は、あなたのものじゃない!」  「黙らないか、レリアス」  ラクウェル兄が僕の側にきて僕のシャツのボタンを引きちぎり僕の下腹を暴く。  そこには。  赤く輝く淫紋があった。  「こんなに輝いているとは、よほど飢えているのだな、レリアス」  ラクウェル兄が僕の下腹に触れてそこに魔力を流した。  「淫乱なお前のことだ。こっちでも魔王たちにさかっていることだろうと思っていたんだが」  「いやっ!」  僕は、ラクウェル兄から逃れようとしたが、触手に捕らえられた手足は、身動きできない。  ラクウェル兄は、僕を見て冷酷な笑みを浮かべる。  「今度は、人間らしい心も残さないぐらいにまで堕としてやるからな、レリアス」  その言葉の意味を知り僕は、恐怖のため体が強ばるのを感じた。  「い、や・・いやっ!助けて!ハジメ!」  「レリアス!」  ハジメがぎん、とラクウェル兄を睨んだ。  「レリアスを返せ!」  「返して欲しければ力づくで奪うことだ」  ラクウェル兄が僕の頬を撫でる。  「奪えるものなら、だが」  「そうだな」  ハジメが手を前に出してそれと同時にハジメの周囲に巨大な魔方陣がいくつも展開されていく。  氷の粒が辺りに舞い、気温が下がっていくのがわかった。  ハジメを中心にして世界が凍りついてく。  僕を捕らえている触手も凍てついていった。  「それぐらいでいい気になるな!」  ラクウェル兄が手を振ると触手を包んでいた氷が砕ける。  と、そのとき、僕の周囲の触手を氷の刃が切り裂いていった。  「なんだと?」  驚いているのは、ラクウェル兄だけではなかった。  僕も驚いていた。  ハジメが魔法を使うのに無詠唱ということだけでも驚きなのに、同時にいくつもの魔法を使役していることが僕は、信じられなかった。  怯んだラクウェル兄の隙をついてハジメは、付き出した手を握りしめた。  しゅうしゅうと音がして触手たちがうねりだした。  苦しんでいる?  触手は、僕を取り落としたので僕は、急いでハジメの方へと逃げた。  「レリアス!」  後を追おうとしたラクウェル兄に向かってハジメが話しかけた。  「いいのか?お友だちが苦しんでいるようだが?」  触手たちは、みるみるうちに干からびて粉々に崩れて散っていく。  「くっ!」  ラクウェル兄の姿が闇の中へと消えていく。  「覚えていろ、魔王め!」

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