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第85話 邪神の国(7)

 7ー7 ダンジョン  それから数日後のことだった。  ハジメは、僕にすばらしい仕立ての礼服を用意してそれを着るようにと促した。  「パーティーがあるんだ」  「パーティー?」  僕が突然のことに驚いていると、ハジメが話してくれた。  「俺は、レディ カルプニアとある事業をすすめていたんだ。今日は、その事業の関係のパーティーがあるんだ。レリアスにも、僕の婚約者として参加して欲しい」  「僕に?」  僕は、わけがわからなくって。  まず、ハジメがレディ カルプニアと事業を起こしていたことが初耳だし。  「いったい、なんの話?」  「話せば長くなるんだが」  ハジメは、僕に説明した。  ハジメが魔法学園で生活費を稼ごうとして冒険者を始めたことからすべては始まったのだという。  学園の生徒たちがよくいく王都の近くのダンジョンにハジメが潜ったとき、レディ カルプニアに出会ったらしい。  「カルプニアは、ダンジョンの土壌の研究をしていたんだが、たまたま魔物の群れに襲われて逃げ惑っていたところに俺が出くわして」  そして。  レディ カルプニアを助けたハジメは、彼女の研究についてきき、彼女と共に事業を起こすことを決意したらしい。  「レディ カルプニアは、ダンジョンの土壌研究をしていた。知っているだろうが、シュテルツ王国は、あまり豊穣な土地ではない。彼女は、どうすればシュテルツ王国の農業を改革できるかを考えていた」  ハジメが話すには、シュテルツ王国でもっとも農業に適しているのは、そのダンジョンだったらしい。  普通に考えたらダンジョンがいくらよい土壌であってもどうすることもできないところだが、ハジメは、違う。  ハジメは、ダンジョンの奥の奥にある広い空間を開拓することを思い付いた。  そこで、ハジメは、まず、井戸を掘ることにした。  ハジメは、水の魔王だ。  水源を見つけるのはわけもない。  だが、水源があっても大地を開墾することはできない。  「そこで、便利アイテムの登場、だ」  ハジメは、そのダンジョンを攻略しダンジョン核である一振の剣を手に入れていた。  それは、パッと見たところは、みすぼらしい木剣だった。  だが、その木剣は、ダンジョンの大地と植物を操ることができるものだった。  ハジメとレディ カルプニアは、そのダンジョンに農場を作り作物の生産を始めた。    

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