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第86話 邪神の国(8)
7ー8 商談
ダンジョン産の作物は、特別な力を宿していた。
味は、もちろん、食べた者の体力を増強させる力を秘めていた。
しかも、たった一晩で成長し実をつける。
ハジメとレディ カルプニアは、数ヵ月で世界の食料事情を変革してしまった。
それだけではない。
二人は、広大なダンジョンで様々な植物を育成した。
その上、ダンジョン内に牧場や、織物工場なども作った。
ここまでくると僕は、ハジメに質問した。
「そこで働く人はどうしたの?」
いくらチートでも働き手なしでは、これだけの規模の農場やら牧場やら工場やらを運営はできない。
ハジメは、僕の質問に答えた。
「俺は、ダンジョン核を手に入れていたからな。つまりダンジョンの主となったわけだ」
つまりダンジョンのボスとなったハジメは、すべての魔物を操り働かせることができたわけだ。
オークやゴブリンの働く農場。
想像ができないな。
だが、彼らは、やったわけだ。
「すでにシュテルツ王国で流通するすべての食料を俺とレディ カルプニアで管理している。つまり、もう、食料などの心配はないわけだ」
マジですか?
それどころか、ハジメたちは、ダンジョン産の生産物の輸出を計画していた。
ダンジョンで作られた織物や、肉の加工物をこのマハラート王国に輸出する計画をすすめるために今回の僕の訪問に同行したのだという。
うん?
僕は、ちょっと戸惑ってしまった。
ってことは、僕がどうこうしなくても別に大丈夫なんじゃね?
「いや。レリアスには、ぜひ協力して欲しいんだ」
ハジメが僕に話した。
「だって、ハジメは、邪神の神子だから」
このマハラート王国は、豊かな国だし、決して他国に対して閉じられてはいない。
だが、とっても保守的な国なのだ。
だから外交するにも苦労することが多い。
ましてや交易をするのは大変だ。
しかし。
このマハラート王国は、この世界でも珍しい邪神信仰のある国だ。
邪神の神子である僕がいれば、商談もうまくすすむというものだ。
実際に、リトアール公爵の許可は、得たもののなかなかハジメとレディ カルプニアたちは、商談をすすめることができずにいた。
だが、僕が邪神の神子であることがわかった。
「レリアスのおかげで俺たちは、マハラート王国の連中に受け入れられそうだ」
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