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第9話

(がぁーーー! もうっ!)  ライモはユリにドカドカと近付いた。  するとユリが音に気付き、重たげに頭を上げライモを見つめてくる。  エメラルドを嵌めたような緑の美しい瞳は涙で潤み、薄紅色の柔らかそうな唇は力無く開いている。  普段は一糸乱れぬように束ねられている髪は、今は生乾きでバラっと(ほど)かれ、美しい顔の周りに散らばっていた。 「っ……!」  ライモは歯を食いしばると、ユリが脱いだびっしょりの服を掴んで逃げるように庭に出た。 (ヤバい、ヤバい、ヤバい! もう無理! もう限界だっ!)  心の中で叫びながらユリの服を井戸水で軽く洗い、庭の物干し竿に乱暴に干す。  『ムスコ』がもう極限状態だった。  早く開放しないとむしろ不能になるのではと思うくらい激痛が走っているし、庭まで漂ってくる香りに頭がクラクラする。  服を干し終え、ライモは戸口からユリに声をかけた。 「おい、俺はこれで出るからなっ!」  ユリが顔を上げ、驚いたようにライモを見た。

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