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第10話

「ここは結界が張ってあるから、俺以外は入って来れない。発情期が終わるまでここで過ごせ。食料は好きに食っていい。三日後に補充に来るからっ」  ライモは早口でそう言うと「じゃ」と言ってその場を立ち去ろうとした。 「ま、待って!」  ユリが呼び止めてきた。 「なんだ?」  その表情はとても動揺しているようだ。 「……だ、抱かない、のか……?」  ユリがそんな事を言ってきてライモは驚き、目を見張った。  しかし、いわばユリはオークに(さら)われて来たのだ。  当然、酷く暴行されると思っていたのだろう。 「オークが皆、野蛮で無節操ってわけじゃない。俺はお前に無理矢理そんなことはしないっ」  ライモは静かにそう言ってユリに背を向け庭に出た。  呪文を唱え結界を開く。 「ま、待って! 行かないでくれっ」  ユリは庭に飛び出し、そのままライモの背中に抱きついた。 「なっ⁉」 「む、無理だっ! こ、こんな、一人でどうしたらいいか……」  布一枚身体に引っ掛けただけで、ほぼ全裸のユリ。  その首にはΩ(オメガ)の証とも言える首輪だけがつけられている。  顔をライモの背中に埋めたままユリが(うめ)くように言った。 「お、お願いだ……。だ……抱いて欲しい……」  ユリからはより濃い香りが立ち昇っていた。

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