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第17話
ライモはユリが齧るリンゴを指して言った。
「それ、食えてんのか?」
ユリはリンゴの皮を小さな歯で削り取っているだけで、全く食事が進んでないように見える。
ライモはテーブルにあった小刀を手にし、ユリからリンゴを取り上げた。
「切ってやるよ」
リンゴに刃を入れていると、ライモの肩にユリがもたれ掛かってきた。
「皮も剥いて」
ユリが甘えるように言ってくる。
「ワガママなヤツだな」
そう言いつつ、ライモは慣れた手つきでリンゴの皮を剥き、小さく切り分けた。
リンゴのカケラを「ほら」とユリに渡すと、ユリは手で受け取らず「あー」と口を開いた。
「お前なぁ」
ライモは笑いながらリンゴをユリの小さな口に入れてやった。
ユリはライモの肩に頭を預けながらシャクシャクとリンゴを食べる。
ユリにはライモの服を着せたが、大き過ぎて肩から胸にかけてはだけてしまう。
ライモはユリの口にリンゴを運びながらも、チラチラと見えるユリの胸を盗み見ていた。
「私の名前、知っていたのだな……」
ふと、リンゴを食べながらユリが言った。
「……ユリ様って呼ばれてたからな」
先程ユリが驚いたようにライモを見たのは、名前を呼ばれたかららしい。
「ライモ?」
ユリが突然ライモの名を呼ぶ。
ユリに名前を呼ばれるのは初めてで、ライモの心臓が大きくはねた。
「そ、そうだ。それが俺の名だ」
何となく気恥ずかしくて耳が熱くなる。
ユリは「ふふ」と微かに笑った。
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