「はい、ガニュメデスはマッチングアプリをメインに使用しながら、お客様のご判断で提携先である結婚相談所のコンサルタントやカウンセラーにご相談できる仕様です。そのため、提携先の結婚相談所のご紹介を利用された際は、通常のメッセージのやりとりからではなく、担当者を交えたお相手とのお見合いからスタートが可能なのでございます」 「結婚相談所のほうで精密に個人情報を確認済してあるからできること、ですか？」 「作用でございます。もちろんメッセージのやりとりも、恋愛やパートナーを見つけていく上で大切な過程となります。しかしながら、会ったことが一度もない方と初デートをするのが不安だという方がいるのも事実です。そのような方には、私たち担当者が同席または近くで待機している状況で、お相手の方とお見合いをしていただきます。お相手の顔や声、喋り方、話を聞く姿勢や仕草、香りといった対面でしか得られない情報を摑むことで、最初からお相手との相性や価値観、性格の不一致がないかを最低限確認してからデートをする、という形です。最初のメッセージのやりとりが上手くいかない、デートをしてもお相手がしっくりしない、次のデートにつながらないというお客様から、ありがたいことに好評をいただいています」 「そうなんですか」 　そんなシステムがあったことに驚きながら、ぼくは北野さんとどうやって、デートまでもっていくか考えた。 「もちろんお見合いを選択しなくても大丈夫です。ご安心ください。今回、村山様は結婚相談所の紹介制度をご利用となります。北野様にも村山様とお会いしたい意思があると確認がとれましたら、24時間以内にガニュメデス上の電話機能、オンラインミーティング機能も無料で開放されます。私と北野様の担当の者が承認となり、外部連絡申請の手続きを行いますので、お手間は取らせません」 「もしも、北野さんにお見合いを申し込むとしたら普通の結婚相談所みたいに入会金や月額料なども発生するのでしょうか？」 「いえ、お見合いからデートの設定までは無料で行えますよ。――ガニュメデスは基本料無料のマッチングアプリで、広告収入と課金をメインに収入を得ています。また、お客様の紹介料金や手数料、集団でのお見合い・顔合わせなどの参加費が収入源です。結婚相談所とも提携をしており、無料での相談を売りにしています。しかしがなら、デートの設定を結婚相談所の人間が3回以上行って仮交際や真剣交際に進んだ際は、ガニュメデス上の規約にもとづいて料金が発生します。そのため、二回目のデート終了後に結婚相談所と契約を交わしていただく規則がございます。そうしますと、お客様側に万単位での入会金や月額料金を支払っていただく形になり、結婚相談所にもお金が入るという仕組みです。弊社の場合は、月額料金はコースによって5,000円から3万円とお選びいただけますが、初期費用で20万から50万の金額をお支払いいただくことになります。 　中には、ガニュメデスのマッチングアプリを利用するよりも提携先の結婚相談所のほうが安心できるということで、結婚相談所一本にシフトチェンジをされる方もいます。それ以外にも、いろんな方と出会って相性抜群の相手を見つけたいと考え、お金を払って併用されるお客様もいるのが実情です。ですが、村山様はまだ学生でございます。アルバイトをしながら学校へ通っている状況で、就職先もまだ決まっていません。私個人としてはこのままご相談や、お相手のご紹介、お見合いのお手伝いをメインにさせていただけますと幸いです」 　お金があるといっても、芝谷さんとソウジたちのことで弁護士費用の出費が、かなり痛手になってる。おまけに、両親からの仕送りも実質途絶えている状況だ。奨学金を借りて大学に通っているわけじゃないし、アルバイトも週後5日で毎月入っているわけでもない。 　いくらなんでも今ここで天ヶ原に数十万を注ぎこむことは、不可能だ。そんなことをすれば生活が成り立たない。 　誠実に対応してくれた有島さんに感謝する。このまま相談などの無料サービスを利用していく形に留めたい意思を伝えた。 「承知いたしました。北野様とはお見合いをなさいますか？　それともガニュメデスでデートの日程調整メッセージなどを使用して行いますか？」 「その、一番最短で北野さんと会える方法は、どれでしょうか？」 「そうですね……。北野様や北野様の担当の者がどう動くかによって状況が変わるため、明確なことは言えませんが――私から北野様の担当の者に連絡をとり、北野様が村山様にお会いしたいご意思があることを確認してから、マッチングアプリに移行してデートの日程調整をお二方で行っていただく――というのが最短ルートになるかと思います。必要最低限の情報は紙面でご確認いただけますし、何より担当の者が仲介してお見合いの形態や日程調整を行うタイムラグの発生を防げます。その方式でお話を進めてもよろしいでしょうか？」 「はい、お願いします」