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「じいちゃん、元気でいるでしょうか。身体を壊していなければいいのですが……」  その表情を見ただけでもやはり老人同様、互いのことを気に掛けて大切に思っているのが窺える。血の繋がりは無いにしても、本物さながらの家族であることは間違いないのだろう。(イェン)は何とかしてこの哀れな少年を救い出してやりたいと強く思うのだった。 「冰といったな? 実はお前さんをここから連れ帰る方法を考えてみたのだ」  (イェン)は先程紫月(ズィユエ)と話し合った救出方法を丁寧に説明してみせた。当然だが冰は驚いたようだ。 「結婚……ですか? あの……皇帝様が僕と?」  言われている意味がよく理解できないというわけなのか、冰は形のいい大きな瞳をまん丸く見開いてはポカンとした表情で固まっている。 「驚くのも無理はねえ。言うまでもねえが、お前さんも俺も男同士だ。婚約だの結婚だのといっても、なかなか想像できんことではあろうがな。いずれにせよこの遊郭街にいるとなれば、見ず知らずの客を取らされることになろう。もちろん色を売るという行為も避けては通れん。それよりもこの俺の元へ輿入れする方がお前さんにとっては幾分マシなはずだ。(ウォン)の爺さんも安心するだろう」  (イェン)は、輿入れするといっても形の上だけで構わないし、世間一般でいうところの本物の夫婦のようにして過ごさずともいいのだからと言った。 「まあ表向きは夫婦となるわけだから、お前さんには俺の邸で共に住んでもらうことになるが、これまで通り学園にも通えるし(ウォン)の爺さんと会うのも自由だ。というより、爺さん共々引っ越して来てくれりゃあいい」  どうだろう、婚姻という形を取って自分の元で一緒に暮らさないかと訊いた(イェン)だったが、まさか当の冰から意外な答えを聞くことになろうとは思わなかった。なんと冰はその申し出を断ったからだ。 「……そうか。やはり気が進まんか……」  まあ婚姻となれば人生を左右する事柄だし、会ったばかりの人間――しかも同性相手となれば断っても当然だろう。いい手だとは思ったが、やはり別のやり方を考えるべきかと思った時だった。冰がこの話を断る理由を聞いて、(イェン)は驚かされることとなった。 「あの……皇帝様……。お気持ちはたいへん有り難く思います。僕のような者の為に皇帝様がそんなことまでお考えくださるなんて……驚きと有り難さでお礼の言葉もございません。ですが、皇帝様の人生を僕の為に犠牲にするなんて……そんなことはできません!」 「ボウズ……お前……」 「確かに――ここへ連れて来られたことは僕にとっても驚きですし、ここで生きていきたいわけではありません。でもその為に皇帝様を巻き込むだなんて……」  僕には絶対にできません! きっぱりと冰は言った。つまり、有難い話ではあるがそれに甘んじていいとは思わないということだ。

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