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第13話【第二章】
あの時から3年が過ぎた。
朔也は大阪の債務整理系の事務所に就職した。
新人弁護士の場合、債務整理系や一般民事系の事務所は年齢に関しては比較的柔軟だった。それに借金の過払い金請求が増えている昨今、事務所は潤っていて仕事は常に忙しかった。
中には、なんでそんな事になったの?と驚くような借金をしてしまっている人や、アホとしか思えない行動で借金が雪だるま式に増えてしまった人の、自己破産の手続を朝から晩まで何ヵ月もしている事もあった。
自己破産するにもお金がかかることを、知らない人が多すぎて、スマホを持っているのになぜ調べられないのかと不思議に思う事も多かった。
金を払うんだからやって当たり前だろうという態度の依頼者に、着手金を吹っかけて追い返す技も覚えた。
世の中の汚いものをたくさん見てしまう職業だと実感する。自分はこの仕事が本当にやりたかったのか疑問に思いながら毎日を過ごしていた。
「顔が悪い」
「……はい?」
「お前は顔が幼すぎるし、依頼者の信頼を得るには可愛すぎる若造だ」
「褒められてるのか、けなされてるのか、よく分からないんですけど」
先輩弁護士にパワハラまがいの事を言われている。いつもの事だし聞き流していた。
彼が厳しい事を言っても自分を育てるための愛の鞭だと思える性格が功を奏して、事務所ではそれなりに可愛がられて仕事をしている。
ある日、パワハラばかり受けてしまい仕事が続かない。いつも辛い思いをしているから会社を訴えたいという依頼者がきた。
同情したように依頼者の話を聞く先輩。
毎回、職場内で同じようなイジメを受けてしまう。転職回数は片手じゃ収まらない依頼者をみて、朔也は、世の中にはこんな運の悪い人がいるんだと不憫に思い、依頼者との初回の相談を終えた。
「パワハラばかり受けている人の殆どは、その人の人格に問題がある。弁護士は弱い者の味方だと思っているかもしれないけど、金が稼げる方の味方だ。俺らは事をこじらせて金をとる商売だからな」
依頼者が帰った後、先輩は訴えようとしている彼の会社の名前を確認すると、ここは駄目だ。やっても負ける。と言った。
慈善事業で商売をやっているわけではないので、相談を受けても着手するかどうかは、支払い能力のない依頼者に限っては考えなくてはならない。
どこからか、例えば法テラスや国、地方自治体。なんかのNPOとか慈善団体からお金を引っ張ってくることが可能な場合もあるので、依頼者は頑張って何度も色んな所へ相談に行くしかない。
自分で調べ考え電話し足を運ぶ。
たまに存在する女神のような人に、自分は偶然助けてもらえるなんて考えは甘い。
世の中は世知辛いものだし、とても意地が悪い。
朔也がこの事務所で学ぶことは多かった。
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