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第38話
食事会の片付けが終わって、朔也は堂本さんと一緒に入浴していた。
「悪かったな、準備大変だっただろう。俺たちは同棲しているわけだけど、どっちも仕事をしているし、家事とかお互いが協力してやるべきだと思う。朔也の方が料理が上手いしつい任せっきりになってしまう」
「別にそんなことはいいです。たまにしか作らないし」
堂本さんの首に腕を回して鎖骨の辺りに顔を埋めた。バスルームは湯気で視界がぼやけている。
「志津香って、名前呼びなんですね」
「え、ああ……いや?」
「なんでかなと思って」
「同期だから。みんな同期の奴等は名前で呼んでたからな。俺だけ佐藤さんっていうのも何だし」
お互いに名前呼びをしている事に違和感がある。嫌かどうかと訊かれれば嫌だけど、じゃあ明日から佐藤弁護士には名字で呼んでもらって、という訳にはいかない。
二人で湯船に浸かっている今の状態は、彼女にはできない事で、それは朔也が堂本さんの恋人だからできる事。
自分には恋人だけに与えられる特権がたくさんある。贅沢は言ってはならない。
「朔也も俺の事、名前で呼べよ」
そう言って堂本さんは朔也にキスをした。
名前で呼ぶことに抵抗があるわけではなく、堂本さんと呼んでしまうのは単なる癖だ。
そこにこだわっているわけではない。多分、自分は心が狭く、佐藤弁護士をあまり好意的に見ていないから気になるのだろう。
浴槽から出て、堂本さんは身体を洗ってやるからと言って、朔也を椅子に座らせた。けれどその手は明らかに洗う以外の意図をもって動き回る。
朔也の感じるところを大きな手が滑ってくるたびに、声を我慢しなくてはいけない。
壁が薄いわけではないけど、バスルームは声が反響して響いてしまう、お隣さんからクレームがくるかもしれないと思うと、きがきじゃない。
「もうベッドへ行きたい?」
その問いにコクコクと何度も頷く朔也だった。
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「俺が一番興奮する時って、朔也が感じているのをみる時なんだよな」
裸であおむけに寝かされた朔也は、かたくなった堂本さんの下半身をのモノを腰の辺りに感じながら乳首を摘ままれる。
首筋から舌を這わされると、くすぐったいし我慢できずに体をくねくねさせてしまう。
「あ、あっ、あ……」
自分の感じるところの開発は、堂本さんによってすすめられた。
今ではそんなところも気持ちよかったんだ、と新しい発見に驚かされてしまう。
危うく乳首だけで絶頂を極めてしまいそうになり腰をひねって回避した。
「どうした、痛かった?」
堂本さんの顔が近づき、朔也の耳元に息がかかる。
「ち、違う……中で。中でいっしょにいきたくて」
朔也は我慢できずに堂本さんにねだった。
「朔也、お前、どんだけエロイんだよ」
染みひとつないすべすべの肌は女性のものとは違う。ある程度の筋肉によって引き締まっているので、肌が重なる時、肉を感じない。
言い方は難しいが、ぷよぷよしていないというか、弛んでいない身体は気持ちがいい。
「入れていい?我慢できなくて激しくするかもしれないぞ」
後ろをほぐしながら、リズミカルに前を刺激されてもう限界に近い。
「激しくして、いいです」
快感に身を震わせていると、朔也の両足を割って、堂本さんの大きなモノがずずずと押し入ってきた。
「やばい。きついし、柔らかいし、すごく気持ちがいい」
淫猥な音を立てながら何度も打ち付けられる腰に、動きを同調させ、堂本さんの背中に朔也は爪を立てた。
与えられる刺激が強すぎて制御不能になる。
朔也は興奮して声をあげてしまう。
「あ……はっ、……や……」
激しくすると言った言葉通り、やや手荒に何度も奥まで突かれ、その度にぎゅうぎゅう中を締め付けてしまう。
「しょ、翔平さん、もう……いく」
最後は彼の名前を呼びながらお互い同時に達したのだった。
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ふと目を覚ますと、隣に微笑みながら朔也を見つめてる堂本さんがいた。
少しばかり気を失っていたのかもしれない。
「よかった?」
事後にそういう事を聞かれるのは、恥ずかしいので嫌だ。
快楽にとろけた顔を腕で隠そうとすると、堂本さんははっと笑った。
朔也は堂本さんから少し距離をとって、今日媚薬の袋を佐藤弁護士に見られてしまった事を話した。
部屋の中にある川端ボックスの中身を見られてしまった。そこに媚薬が入っていたと。
「例えば、媚薬を使って堂本さんを陥れたのかとか、黙って飲ませたのなら犯罪じゃないかとか……そう言われたらどうしようかと」
不安に思ったことを打ち明けた。
堂本さんは顔色を変えずに訊いてきた。
「んーと、朔也は俺の身体目当てで、あの媚薬をカクテルにいれたの?」
「いえ、違います」
だよなと頷く。
「朔也は俺と付き合いたいとか、恋人になってほしいとかそう思って、あの2階の部屋に誘ったの?」
「いえ、その、自分のせいで体調を崩したんだから休める場所を……」
「なら、何の問題もないだろう?わざとじゃないのはわかっていたし、正直、あの時そんな関係になるなんて思ってなかっただろう。まぁ、俺の身体目当てで媚薬を飲ませたんだとしたら、逆にちょっと嬉しいけど」
笑いながら堂本さんはそう言った。
確かに、わざとやった訳ではなかったし、あの時体の関係を望んでいた訳ではない。
被害者の堂本さんが問題ないと言っているんだから、自分は気にし過ぎなのかもしれない。
そもそもあの媚薬は、精力剤のようなものだった。
それを飲ませたからと言って、朔也を相手にする必要はなかったはずだ。場所的にも、そういう店、いわゆる風俗店が近くに沢山あったので行こうと思えばすぐに行けた。
でも、なぜ?
今考えると、堂本さんもノンケだったのに、あの時なんで朔也を抱こうと思ったんだ?と不思議に感じた。
「あの時、男の僕をなんで抱こうと思ったんですか?今考えたら不思議です」
堂本さんは驚いたように目を開いた。
「……いや、だって……お前、手でするの下手だったから」
あの時、なんとか堂本さんにイってもらおうと朔也は手で頑張ったんだ。
「え?」
「……え?」
朔也は堂本さんめがけて枕を投げた。
「ちょ、ちょっと待て、冗談だから。な、嘘、うまかった。すげープロみたいだった」
堂本さんは真っ赤になって怒っている朔也を羽交い絞めにした。
「朔也、さっき翔平って呼んでくれたよな?もう一回呼んで。っていうか何回でも毎日呼んで。やってる時に名前呼ばれると、すっげぇくる。結構興奮する秒でイキそうになる」
話を変えて機嫌を取ろうとする。
「しょうへい」
仕方なく堂本さんの名前を呼んだ。
「翔平、翔平……」
何度も名前を呼ぶと、堂本さんが上に乗っかってきた。
「ひゃ……あ、あっ……や……」
そして朔也はプンプン怒っていたことも忘れて、お互いもう一度激しく愛し合った。
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