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第44話
「ふっ……ざけんな……」
ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!
「ふっ……ざけんな……朔也。お前……忘れてたろ?」
「いえ、決してそんな事はございません」
かなりキレ気味にロッカー室から倉田さんは出てきた。
朔也は倉田さんがロッカー室に、いまだに閉じ込められているなんて思ってもみたかった。
電話が通じない事から、まさかと思い朔也は事務所へやってきたのだ。
誠さんに電話で倉田さんの事を聞いてみたら、知らないと言われた。今なら事務所の鍵を下の喫茶店のマスターに借りられるから適当に救出してくれと言われた。
スペアを持っているらしいマスターに鍵を借りて、急いで事務所へ行きロッカー室を開けてみたら、ドアの前で般若のような顔をした倉田さんが立っていた。
朔也は自宅でシャワーを浴びていた。
昨日まで気が重かった佐藤弁護士との関係がスッキリして、沈んだ気分が晴れ爽快だった。
けれど何か大事な事を見落としている気がする。昨日あのままバタバタと事務所を後にしたけど、そうだ思い出した!倉田さんをロッカールームに取り残していたことを。
彼は佐藤弁護士と朔也が話をしている間、何かあってはと思いロッカールームで待機していてくれた。
ドア越しに二人の話を聞いて、これは男をめぐっての痴情のもつれだなと思っていたらしい。
媚薬の話が出て、朔也が飲むように強要された時に、いざ、ドアから出ようと思ったら電子ロックが解除できない事に気がついたみたいだった。
なんとかロックを解除しようとしているうちに事務所のメンバーがなだれ込んできて、なんかよく分からないが朔也の彼氏も登場した。
出ていくタイミングを完全に失った倉田さんは事が落ち着くまで静かに見守ることにした。
いつの間にか辺りがシンとしたなと思っていたら、みんな帰ってしまっていた。
という事らしかった。
シャワー室もあるのでシャワーを浴びて、水は蛇口から飲んだみたいだ。最悪月曜日までこの状態だなと腹を決めていたら、朔也がやっとやってきた。
「忘れてんじゃねーよ」
機嫌悪そうにつぶやくと、飯をおごれと言われた。
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祝日の昼過ぎなので、家族連れが多かったが、ファミリーレストランで食事を奢った。
倉田さんはガッツリ3人前のハンバーグを平らげて、グラスワインを何杯も飲んだ。
デザートのサンデーまで注文して、やっと満足がいったようだった。
「んで、結局、佐藤なにがしは納得したの?」
「そうですね。堂本さんが、えっと、僕の彼ですが、彼女を説得しました」
「へー凄いな。あれは結構、イタイ女だったからな。なに言ったって無理じゃね?って思ってたんだけど」
「そうですね。洗脳されてるとか言ってましたしね」
どうやって説得したのか、気になると言われたので、朔也は包み隠さず話した。愛しているとかいった訳ではなく、セックスが気持ちいいからと彼が言ったというと、倉田さんはドリンクを吹き出した。
「お前の彼氏はただモノじゃないな」
「そうですね。それに納得した佐藤弁護士もどうかと思いますが、最終的には、堂本さんの事を気持ち悪いと言ってましたんで、キモがられて終わりました。愛情が覚めたんじゃないでしょうか、なにせキモいんで」
はははと声を出して倉田さんは笑った。
「今日は?彼氏は置いてきたの?結局顔が見られなかったから。俺だけ会ってないんだけど」
「今日は実家へ帰らなければならないらしく、僕1人です。倉田さんは堂本さんに会ったことがあります。バニーボーイのアルバイト先でキスしていた男性が堂本さんです」
「は?え?あいつ?なんで、マジかよあそこの客だったの?」
仕事関係で初めてきたらしいと言っておいた。自分がバニーボーイをしていたのですごく驚いたらしく。帰ってから説教されましたと説明した。
「なんだかよくわからんが、彼氏を逮捕したくないから詳しくは聞かない事にする」
倉田さんは苦笑いしながら、よく別れずに無事でいられたなと言った。
普通自分の恋人があんな店でバイトしてたら引くだろうと。
「ま、もし別れる事があったら、俺に報告しろ。マジでセックスが気持ちいいらしいから試してみたいわ」
冗談とも本気ともつかない言葉で朔也をからかった。
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