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第46話

南国の眩しい太陽や、鮮やかなスペインのタイル、華やいだ色合いのインテリアで統一されたゴージャスな客室。全室スイートルーム。プライベートプール。 こんな幸せなひと時を味わえるなんて夢のようだ。 島の食材を使った美食の数々。朔也は美しく澄んだ海を目の前に望むレストランで、和牛や豚、新鮮な魚を食べていた。もちろん目の前にはイケメン堂本さん。ドラマティックな風景が二人の門出を祝福しているようだ。 結婚式を挙げようと言い出したのは堂本さんの方だった。 そんなものはいらないですと断っていたが、あまりに寂しそうな顔をするので、二人だけならと渋々OKしての沖縄旅行だった。 観光よりも二人だけの時間を楽しみたいと、離島へやってきた。 こんな贅沢な旅行は朔也にとっては初めてだった。 「幸せです」 「だよな。俺も幸せだ」 堂本さんは朔也を引き寄せてこめかみにキスをした。 ホテルの部屋へ帰ってから堂本さんは性急に朔也を求めた。 二人の距離が近づくと、すぐにシャツの下から彼は手を滑り込ませてくる。 まんざらでもない朔也はそれに応えるように上着を脱いだ。 長い夜が始まる。 「着替えてくれる?」 「え、またですか?」 堂本さんは笑顔で頷く。 癖になっている。 バニーの衣装は彼のお気に入りだ。そして必ず暗闇タイムを実行する。 照明のリモコンを操作し暗闇タイムに突入すると、ありえないほどエロい愛撫が始まるのだ。 あの摘発されたホテルでのパーティーが結構楽しかったのかもしれない。 暗闇の間は何でもありのルールが設けられ、堂本さんは本領を発揮する。もうハァハァ言いながら、朔也は瞬殺させられるのだ。 旅行にバニーの服を持ってきたのはお願いされたから仕方がなかったのだけど、空港の荷物検査でうさ耳カチューシャを見られたときに、知らん顔して先に歩いて行かれた恨みは忘れない。 朔也は腹が立ったので、水着ショップで一番露出度が高いブーメランビキニを堂本さんにプレゼントした。 今回この旅行の間は必ずそれをはいてビーチやプールへ行く事! そう約束させた。 「まさか裏目に出るとは思ってもいませんでした」 「ははっ。そうだな、あんなに注目されるとは、俺も大したもんだ」 堂本さんはビーチでナンパされまくった。ほとんど外国人の男性だったが、女性までもが気安く声をかけてきた。 あまりの人気に朔也は嫉妬して、今すぐジャージに着替えてくださいと叫んでしまったのだ。 衣装に着替えて堂本さんの前でお尻フリフリしながら彼の膝の上に乗る。 腰を支えられながら乳首を摘まれキスをする。 長い指がローションを滴らせながら朔也の後ろにそっと差込まれる。 「うっ……」 息を詰めながら、感じている事を隠そうとする朔也に、意地悪な質問を投げかける。 「ほら、どこがいい?ちゃんと言って。ほら、ここは?」 「あっ……あ、あ、ん……」 目一杯興奮し、何度も喘ぎ、涙を流して絶頂を迎える朔也を満足そうに眺めた。 「しょ、翔平さん。翔平、そこもっと……ついて」 「ここ?」 朔也は何度も頷く。けれどなかなか奥まで入れてくれない。 「なんで、もっと……」 もっとどうしてほしいかちゃんと言って。 「もっと……奥を突いて、激しく……お願い」 朔也の言葉を聞くと、堂本さんは暗闇タイムに突入した。 すごい速さで前後運動が始まり、ギリギリまで引き抜いてまた奥まで突っ込まれる。 肘を持たれて背中を反らせる形で何度も腰を打ち付けられる。 いやいやと首をふる朔也に構わず、どんどん勢いを増す。 男の猛ったそれはまさに凶器だ。 「中で出すぞ」 そう言うと、答えを待たずにスピードを上げる。 もう限界。もう無理…… そう思った瞬間、ドクドクと熱い液体が流れ込む。抜かずにまだ硬さを保つソレをゆっくりトルネードしながらまた、小刻みに動き始める。 性欲は尽きることがなかった。 堂本さんは腰の立たない朔也を抱えあげ、バスルームまで連れて行ってくれた。 朔也の中を綺麗にした後、二人で浴槽に肩まで浸かった。 「旅行のあるあるかもしれませんが、帰りたくないですね」 「そうだな。まだ、後3日はゆっくりできるから」 「明日は3時に教会に行けばいいですよね」 そんなに格式ばったものじゃなくて、二人だけで愛を誓おうと決めていた。 「明日チャペルを予約したから、ちゃんとした結婚式になるよ」 堂本さんは額を朔也にくっつけて朔也にそう言ってくれた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 海から吹いてくる潮風を感じながら、壮大な自然感の中、オーシャンビューのチャペルで結婚式を挙げた。 雄大な景色にパノラマ感、新しい生活の始まりに未来への希望を感じる。 大きな空に見守られながら愛を誓い合う、とても素敵なセレモニーだった。 辞書で『恋愛』という文字を調べると。 【特定の異性に対して、他の全てを犠牲にしても悔いは無いと思い込むような愛情を抱き、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと】 そう書いてある。 僕の場合は異性ではなく同性なのだが。 では結婚とどういう違いがあるんだろう? こんな仕事をしていてなんだけど、法的なことはいろいろ大変だから、戸籍などにはそれ程こだわらない。 堂本さんが何度か実家に用事があると言って帰っていたのは、朔也の為にナットのリングを作っていたからだと後になって教えてもらった。 「おふくろと一緒で嫌かもしれないけど、俺の手作りだ」 そう言って堂本さんは朔也の薬指にナットのリングをはめてくれた。 そして、そこには、こんな離島までよく来てくれたな、と思うくらい沢山の友人がいた。 『PROBE』のマスターはじめ、川端さん神吉さん。そのパートナー達。権田君。 探偵事務所の誠さん多久田君、麻衣ちゃん。それにに倉田さん。 学校をさぼったのかもしれないレイ君。 河合さんはご主人も一緒だ。 ゲストと共に素敵なセレモニーを共有できる時間。とても幸せだと思った。 ありのままの自分たちの姿や心を、受け入れてくれ、喜び合ってくれる優しい友人たち。 僕たち二人は、みんなに「おめでとう!」と祝福された。 ありがとう!幸せになりますね! 太陽が西の海のはるか向こうへゆっくりと吸い込まれていく。徐々にオレンジに染められていく沖縄の空、その海との境目の透明な光。 朔也の目に映るすべてが美しい、大切な人たちと共に見る最高の夕暮れだった。 ーーーーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーーー

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