53 / 85

21.トイプードル2※(2)

 そのまま颯斗は浅く数度達してしまった。  やっと止めてもらった頃には、惚けたように意識が朦朧として、時間経過すらわからない。  とにかく全身が熱く脈打っていて、シーツに擦れることすらむず痒いほどに敏感になっていた。 「おい、へばるな」  善の手のひらが、颯斗の太ももをパチリと叩く。  痛みはないが、体が勝手にピクリと揺れた。 「挿入れるぞ」 「へっ、あっ」  善がバスローブを脱ぎすてて、その裸体が颯斗の眼前で顕になった。  目を見開き凝視する。  隆起した筋肉が室内の薄明かりに照らされて、下腹部に視線を落とせばいつの間にコンドームを被せた性器が猛々しく迫り上がっていた。  その造形に颯斗はごくりと唾を飲む。  善が颯斗の膝裏を抱え上げ、その先端を後孔に押し当てた。 「あっ、まっ……ひぃっぁぁぁ!」    熱い性器が異物に嬲られ敏感になった颯斗の内壁を掻き分け押し広げた。 「あんまり締め付けんなって、ちゃんと挿入んねぇだろ」 「あ、ごめ、んなさ、で、でもっ……ま、まって!」  颯斗は善の動きを制止するかの様に、無意識にその腹を押した。 「ヤリまくりで慣れてんだろ? さきっぽしか入ってねぇぞ」  そう言って颯斗に結合部を見せつけるかのように、善がリードを引いた。  双丘の間に、善の性器の先端が沈んでいる。  覚悟して自ら望んだはずのその光景に、颯斗は恐怖すらも感じてその体は小刻みに震え、視線を背ける。 「なに、怖いの? 震えてんじゃん」  嘲るように笑った善は、わざとらしく先端を浅く出し入れしながら水音を鳴らした。 「あっ、ち、ちがっ……武者震いですっ!」 「なんだそれ」 「あっ、ぁぁぁ……!」 「おら、力抜け」 「あっ、ま、まって……も、入らないっぃっひゃぁ!」  さらに奥に押し込まれ、重苦しく腰を抑えつけられるような感覚と、じわじわと内壁を掻き分ける感覚に、颯斗は悲鳴に近い声を上げた。  散々嬲られたシコリのさらに奥まで入れられたところで善が一度その動きを止めた。 「Look(見ろよ)、ちゃんと入った」  善の言葉に、颯斗はまた下腹部に目をやった。  後孔が善を根元近くまで咥え込んでいる。見ただけで勝手に内部が閉まり、善が微かに眉を寄せた。  颯斗は繋がった部分に手を伸ばした。  湿ったその部分が微かに水音を鳴らし、そこから善の性器を辿る。確かに繋がっている。そう思ったら、あらゆる感情がないまぜになった涙が溢れ出した。 「痛い?」 「ち、違います……大丈夫」 「まあ、大丈夫じゃなくても、やめてやんないけど」 「あっ、んっんっ!」  善が腰を前後に揺らし始めた。  最初は慣らすようにゆっくりと内壁を掻き分けていた動きは、次第に小刻みになり、カリの部分が颯斗のシコリを執拗に擦った。 「はっ、んっ……ぁっ……」  既に何度も達した後で、颯斗の体は本能的に快感から逃れようと腰を引いている。  善はそれを阻むようにリードを引き、颯斗の腰を抑えつけた。 「逃げんなって」 「あっ、で、でもっ……んっ、あっぁぁっ!」  すっかり敏感になってしまった颯斗の体は最も容易く達してしまう。また射精はしないまま、颯斗は中を蠢く善の性器を締め上げた。 「颯斗、俺のちんこ気に入った?」 「あ、まっ……も、くるしっ……あっんんっ」  さらに奥へ押し込まれ、善の先端が大袈裟なストロークで内部を掻き分ける。  ギリギリまで腰を引いた後でまたズブズブと入れ込まれる。それがまた敏感な部分を掻いて、颯斗は何度も小さく達して善の性器を締め付けた。 「やべぇ、ずっとイッてんだろこれ、めっちゃ気持ちいい」 「んっ、も、もう……イきたくない……へ、変になるっ……」  視界がチカチカと弾け、頭の奥が白んでいる。  だけど善が逃すまいとリードを引くたび、颯斗の意識は呼び戻された。  目元にはとめどなく涙が溢れて、遠のきそうな意識の中で何度も「助けて」と口にした。その度に、攻め立てる善の動きが深まっていく。 「あっ、ぁぁっ……せんぱっ、んぁっ、も、もう無理です! も、やめて、ぁぁ」 「無理じゃねえよ、頑張れ」 「ムリ……ひっ、ぁぁ、と、トイプードッむぐぅっ!」  善の手のひらが颯斗の口元を覆った。セーフワードがその中に消えていく。  ついに最奥を先端が穿ち、結合部で皮膚がぶつかり合う音が室内に響き渡っている。  喘ぐ事さえ許されないまま、颯斗は口を塞いだ善の腕を掴んだ。しかし体を揺り動かされ、内部を激しく刺激される状態では力が入り切らない。次に肩を押したが、善は動きを止めてくれなかった。 「んっ……んんんっ!!」  今までで一番強い波が押し寄せ、颯斗の内部が激しく収縮を繰り返した。  善が額に皺を寄せ小さく呻くと、コンドーム越しに放たれた精が、どくどくと颯斗の内壁を刺激した。  後頭部に冷たさが走り、視界の隅からぼんやりと白んでいく。  瞬きをした目元から涙がまた溢れ落ち、口を塞いでいた善の手のひらがそれを撫でたところで、颯斗は意識を手放した。

ともだちにシェアしよう!