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2 久々の再会
卯乃はビロードのように滑らかなオレンジ色の耳を揺らし、またぴょんこっと深森に飛びついた。すりりっと厚い胸に頬ずりすれば、急いで自転車を漕いできてくれたせいか、深森の心音もドッドッと早くなっている。彼の尻尾が背後で嬉し気にぴーんと伸びて、背中に回した卯乃の手の甲にふわふわが触れた。
「くふっ」
それで卯乃も嬉しくなった。彼は微笑み混じりの吐息を漏らす。
「……分かっちゃいたんだが、俺ら、夏休みにはいってから全然会えなかったな。お前が呼んでくれたお陰で、やっと顔が見れた」
そう言って浮かべた笑顔が爽やかで、男同士とはいえ胸がキュンとしてしまう。
「ふわあ」
(いつもみんなから何考えてんだかわかんないって言われてる深森が、今日はめちゃめちゃ素直だ)
久々に二人きりになったせいか、甘い雰囲気にまたまた胸がドキドキしてしまう。
卯乃は恥ずかしそうにくしゅ、くしゅっと手の甲で顔を擦ってから上目遣いに目線を合わせると、瑞々しく美しいマスカットグリーンの瞳が蕩ける様に優しく卯乃を見つめ返した。形も色もその輝きも大好きなのに、卯乃はなんだか照れてすぐ目を逸らしてしまう。
日頃構内で隣同士でいる時も、深森はごくたまにこんな風に甘い目線を送ってくる。誰にも懐かない孤高の猫が自分だけは特別に思ってくれているようで、そのたび卯乃はなんだかどぎまぎしてしまう。
外の熱気はまだまだすごい。卯乃は照れ隠しのようにいそいそと、握っていた冷たいペットボトルを差しだした。
「まあ、これでも飲んで!」
「ああ」
深森は雄々しく褐色の喉を動かし、ごくごくと一気にそれをあおって口元をぐいっと拭う。サッカーの練習中、ピッチ横ではそんな仕草一つにすら女の子たちがわーきゃーいっていたのを思い出す。
(何気ない仕草に目が行くって、ほんとのイケメンだな)
隣に並ぶといつも上目遣いになってしまうほどの長身。筋肉で覆われた頼りがいがある体躯を見たら彼女たちが色めき立つ気持ちもわかってしまう。
深森は大学の強豪サッカー部に所属する非常に忙しい身の上だ。猫獣人にしては大型種の恵まれた体格で、強豪サッカー部の一年生ながらキーパーを任された逸材。期待の新人だ。
(寂しいから会いたいなんて、ただの友達のくせして彼女も真っ青なとんでもないワガママ言ったのに、くっそ忙しい深森がチャリ飛ばしてきてくれたなんて……)
遠征間近の忙しいこの時期、明日も朝から練習があるはず。それを思うと申し訳なくて涙が出そうになる。
「なんか、色々ごめん」
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