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17 つがい、ですと?✨

「俺とお前が、つが……、恋人同士になるってことだぞ」 「は、い?」  すごい剣幕で早口で喋る深森は今まで見たこともないほどの焦りようだ。卯乃の方がむしろ驚いてきょとんっとした表情で小首を傾げた。 (はあ、深森からぐいぐいくるとか、そこまで考えてなかった……。一回だけニャニャモに似た本性の姿見たいってお願いして、オーケーだったら、バイト代で深森が今欲しいもの買ってあげるとか、食べ放題奢るとかそんな感じで手を打ってもらおうと思ってたんだけど)  口にした方がいいか、むしろしない方がいいか逡巡している間に、今度はぐっと頭を引き寄せられた。 「卯乃、好きだ」 「み、もっ」  手を離される代わりに腰を抱かれてずりずりと、あっという間に腕の中に抱き込まれる。そして二の句を告げられぬまま激しく唇を重ねられた。 (ひゃあああ、深森にキスされたあああ!)  小さなころに年の離れた兄や姉にちゅっちゅっとやられたのを数に数えなければ、これはきちんとした初めてのキスということになる。過去にも男にされかけて頭突きをかまし、文字通り脱兎のごとく逃げ出したことは何度かあるが、逃げそびれたのは初めてだ。 (嫌じゃないから、油断した。嫌じゃないのが……、困るじゃんか)  角度を変えて何度も何度も押し当てられる深森の唇が火のように熱い。拒めぬままに侵入を果たしてきた大きな舌のざりっとした感覚に、猫獣人とのキスは刺激的だと話していたクラスの女子の言葉が重なる。  彼が巧みなのかは卯乃には経験がないので分からないが、小さな卯乃の口いっぱいに頬張らされた舌が、口内を蹂躙していく様は肉食獣にまるで味見されているようだ。兎の遺伝子に組み込まれた被食者としての何かが、ゾクゾクとした倒錯の快感を産みだしていく。 (ざりざりって、口ン中舐められんの、気持ちいい) 「くぅん……」  卯乃は鼻から甘い吐息がこぼすと、すぐに顔をとろんと赤らめ、身体からふにゃんっと力が抜けた。  兎獣人は性的な刺激にめっぽう弱い。季節に合わせて発情期に入りやすい他の動物に比べると、すぐ発情するし、多産傾向が強くてかつ、押し負けやすい。  深森が兎のその性質を心得ていないはずはないだろうが、ここぞとばかりに甘く優しい手つきで、ことさら大切そうに卯乃の頬に触れ、髪に触れ、柔らかな耳にも触れてきた。 「耳、だめぇ」 「なんでだ? 気持ちいいだろ?」 「力入らなくなっちゃうからあ」 「とろとろになってる、そういうとこがみたいんだ。お前、可愛いから。そういう顔、もっと沢山見たい」

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