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18 ずっと言いたかった

 口下手で無骨なはずの深森から静かな普段と変わらぬ調子で言われたから、逆にからかっているわけではないんだと変に動揺してしまう。 「か、かわいい、言うなあ」 「俺はずっと言いたかった」 「え……」  急な告白の後にまた唇をくっつけられて、卯乃はびっくりして後ろにひっくり返りそうになった。すかさず深森が軽々と背中に手を回して支える。 「いつも、すげぇ可愛いって思ってる。耳の先からちんまい尻尾まで全部、可愛い。今のその真っ赤な顔も、たまんない」 「なんだよ、みもりっ。いつもは、無口なくせにぃ」  何度も何度も愛おし気に口づけられ、心臓が飛び出そうなほどにバクバクと早鐘を打ち、身体は知らずにぷるぷるっと震えてしまった。卯乃はもう息することすら苦しいほどに乱れた呼吸を繰り返す。  深森は卯乃の様子に気が付き、名残惜し気に顔を離す。 「泣かないで」  卯乃の瞳の端に零れた涙を唇で拭って、ぎゅっと広い腕の中に閉じ込めるように卯乃を抱きしめた。 「無理やりしたりはしないから、怯えないでくれ」  しゅんっと下がった深森の耳と、気づかわし気に腕と共に卯乃の背に回された長い尻尾の温みに絆され、卯乃は耳が揺れるほどに首を振る。何だか自分ばかり押され気味なのが癪で、卯乃は少しだけわざとつんっと顔をそむけた。 「怯えてないよ……。ちょっとびっくりしただけ」 「そうか。すまん。卯乃が急にあんなことをいうから、頭に血が上った」 「深森でも、慌てることあるんだね」 「好きな奴にあんなこと言われたら誰だってああなるだろ」  卯乃は驚いてまじまじと顔を見つめ返す。 「オレの事、好きなの?」 「はあー」  長い睫毛を輝く星のように反らせ、きょとっとした顔をしたら、深森が深く長い溜息をついて見せた。 「好きでもないやつのところに、こんな夜中にのこのこ呼び出される男はいないだろ? 普通」 「へ?」 「へ? って……。お前、俺の気持ちに気づいてないのに、あんなお願いしてくるのか。どんだけタチ悪いんだ」  はあっともう一つおまけに大きくため息をつかれて、力の入らない卯乃の身体を、深森は膝の上に抱き上げる。正面から背に腕を回してぎゅうっと腕の中に閉じ込められた。そうされると胸に顔がくっついて、深森の心臓の鼓動も卯乃に負けじとせわしなく鼓動を刻んでいると伝わってきた。 (ド、ド、ドって……。ほんとの、音だ。ほんとの想いの音)  ドキドキしていたのは自分だけではないと思ったら嬉しくなって卯乃のマシュマロほっぺがさらに緩んだ。

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