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23 ガサゴソ!!!!

そのまま、ぺろぺろともちもちの頬、小さな顎、ほっそりした頤を舐め続けられ、こそばゆくて身をよじり降参するように喉を晒すと、今度は感じやすい首筋をべろりと長めに舐め上げられた。そのまま首筋を何度も何度も。さらに垂れさがった耳を咥えられた時、ぞくぞくとした得も言われぬ感覚に、腰のあたりがずくりと反応しかけた。 「あっ……」  相手は猫の姿なのに舐められて快感を拾ってしまう自分が恥ずかしくて思わず目を瞑った。するとがっしりしているのにどこかしなやかで、褐色の肌が色気ある人間の深森が、大事そうに卯乃に触っているような、倒錯的な感覚になってしまう。卯乃は深森の蠱惑的な眼差しを想像してはぶるりっと震えた。 (ああ、これなんか、続けたら駄目な感じがする!) 「駄目ぇ、くすぐったいから、やめて」  しかしうっすら目を開けた時、深森のもふもふの頭越しに見えた壁に、ある衝撃的なものが目に入ってきた。 「うぎゃああ」  咄嗟に卯乃がものすごい馬鹿力を発揮して深森を抱きしめたまま飛び起きると、慌てて布団から飛びのく様に後ろに下がって畳に尻もちをついた。 「深森! やばい! あそこ! でた!」  ガサガサガサっと動く黒い影、余りのおぞましさに卯乃は総毛だちながらまたもや絶叫した。 「とってとってとって! オレ無理なんだよ、ゴキブリ!」  卯乃の腕から音もなく前にあった布団の上にすとんっと下りたった深森は、黒い虫に向かって飛びかかろうと一瞬姿勢を低くした。しかし急に諦めたように腰を上げて伸びの姿勢になった。 「深森! お願い!」  すぐに猫深森の身体がむくむくと大きくなる。引き締まった褐色の大殿筋が目の前に晒されたので「ひゃっ」っと卯乃が声を上げると、深森は面倒くさそうに有名スポーツメーカーのアンダーウェアーを拾い上げて足を通す。 「おい、素手で潰すのは流石に俺でも無理だ。なんか丸めて殴っていい奴くれ」 「この部屋にはないよ。オレの部屋にいったら机らへんに雑誌あるけど。そこの下、通っていかないとだから」  ちょうど虫が襖戸の真上の壁あたりにいるため、卯乃は固まったように動きが取れない。深森が襖をばしっとあけると、ゴキブリが羽ばたきかけて恐ろしさに卯乃は「ひいぃ」と悲鳴を上げ、掛け布団を引き寄せひっかぶった。 「情けない奴だな。俺の田舎じゃ、もっとでかい虫がごろごろいるぞ」 「オレは都会育ちなんだよ! 虫全般無理! 親が引っ越し前に燻蒸の薬まきまくって、いなくなったはずなのに」 「こんなもん夏ならどっからでも飛んでくるだろ」 「とってって!」 「なんだ、一生のお願いその三か?」

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