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番外編 未明の深森 昼下がりの卯乃 12

普段クールで清潔感の溢れる男の野性味と色気といやらしさを感じさせる仕草に卯乃はもう、腰が砕けて足をふらつかせたが、深森が腕でがっしりと支えて逃さない。卯乃が放ったものを絡めた太い指が舌で念入りに綻ばされた蕾をさらに濡らしていく。 「お前が煽ったんだからな」  耳を打つ声は欲望でセクシーにかすれ、深森の声は少し怒っているようにも感じた。卯乃は瞑目して小さくはあはあと吐息を整えようとした。 「飛ぶほど良くしてやる」  立ったままの姿勢で足をさばかれ腰をぐっと押し付けながら一気に深森が押し入ってきた。昨日までは誰にも許したことがない身体だったのに、もうたった一晩で卯乃の身体は深森の形に変えられてしまったのか、やすやすと侵入を許す。  それでも押し入る方はきついのか半ばは入って一度身体を止めた。  卯乃の身体を蕩けさせようと、弱い耳先を食み、まだくったりとした前をゆるゆると握り摩り、そして色づいて立ちあがった胸を濡れた指先で弄ってきた。 「あんっ」  艶美な声を漏らし始めた卯乃の白い顔を覗き込んで、伝う汗ごと首筋を唇で優しくなぞる。こそばゆさと快感が紙一重で、卯乃は「きもちいぃ」と漏らして深森に全身を預けて力を抜いた。それを見計らったように、さらに太さと硬さが増したものがいいところを押しつぶしながら貫いてくる。  二人は深森が屈んでも卯乃はつま先立ちになるほど身長差がある。卯乃は壁に手をついて身体を支えようとしたが、すぐにパンパンと音がするほど激しく腰を使われて縋ることすらできなくなった。  表で雷の音と共に、土砂降りの雨が古い家屋に打ち付けてくる。鉄筋コンクリートの寮とは違い、外の気温や湿度がすぐに中に影響を与えてくる。  エアコンが届かないこの部屋は蒸し暑く、むっとする空気に互いの匂いが混じったような空間はまるで媚薬を流し込まれたようなそそる香りに満たされる。   「卯乃……、卯乃」  深森が自分に夢中になっているのが嬉しくて、昨日の筋肉痛で太ももの力が入らないのに卯乃は健気に相手をしたが、だがついていくのがやっとなほどに攻め立てられ、一番快感の炎が燃えたつ場所を大きなグラインドで突かれて悲鳴を上げた。  壁に手がつけなくなり、膝から崩れた卯乃を、容赦なく畳の上に引き倒す。ずるりっと抜かれるものがあまりにも長大で、卯乃はその刺激に中で達してしまって畳の上に腕を伸ばしたまましどけなく倒れ込んだ。  家族で暮らしていた家の、布団でもない場所で恋人とセックスしている。  両親や姉、何より過保護な兄に知られたらなんといわれるだろう。そんな風に思考がまとまったのはほんの一瞬の事だった。 「まだ、へたんなよ」  興奮冷めやらぬ深森はうつ伏せに伏した卯乃の華奢な腰を抱え上げる。完全に深森の闘争心に火をつけてしまったようだ。深森は卯乃の身体を仰向けにすると、ぎらつく瞳のまま牙を見せて笑う。 「もう降参するか?」  やっぱり卯乃も男だから、同い年の恋人に対しては対等で自分から積極的に誘ってみたいという欲が沸いてしまう。  だがそのために大変なことになってしまっても負けたくない。

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