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番外編 未明の深森 昼下がりの卯乃 14
「身体辛い?」
「うーうん。なんか、嬉しいのに、今がずっと続けばいいのにって思ったのに、続かなかったらって思って寂しくなっちゃった」
深森は頷く代わりに卯乃の肩にぐりぐりっと額を押し付けてきた。ニャニャモそっくりのふわふわの耳は今は湿って、卯乃の頬をなぞる。
「卯乃はすぐに寂しくなるんだな。こんな甘えん坊が一人でよく生活できてた」
「だからさあ、昨日が限界だったんだってば。だから、深森の事呼んだんだよ」
「ああ、そうだったな。他の誰でもなく、俺の事を呼んでくれて良かった」
ちゃぷ。湯船の中で何とか体勢を変えて、卯乃は半分だけ身を捩って振り返り深森に抱き着いた。
「そんなの、最初から深森一択だよ」
そして続けることといったらこの言葉しかない「だから、お願い。これからもずうっと一緒に……」
うとうと夢見心地の卯乃はそのまま深森の腕の中、身体を預けてうっとり心地よい疲労感に包まれて眠りに落ちていった。
※※※
寂しい気持ちになって眠ったのに、お腹がぐーぐー音を立てていて目が覚めたら機嫌は戻っていた。ぬいぐるみみたいに抱っこされて深森の腕の中で目覚めたからかもしれない。
朝方まで卯乃を抱いてから練習に行き、さらに自転車を漕いで戻ってきた深森も隣で静かな寝息を立てていた。
「深森、お腹すいた。ご飯食べよーよ」
高い鼻を摘まんで悪戯したら、深森もすぐにぱっちりと目を覚ました。
「まだ眠い? 疲れた?」
「いや。大分すっきりした。飯食うか」
「うん」
狭い卯乃のベッドで折り重なるように眠っていたから、下になっていた深森は重かったはずなのに、卯乃を上に乗っけたままひょいっと上半身を起こせるのは流石としか言えない。悪戯心を起こして首に腕を回したら、片腕で卯乃を抱いたまま立ちあがったので「深森、力持ち」と卯乃はケラケラ笑う。
好きな人と一緒にいると、何をしてても面白くて堪らないのだ。
二人して階段をギシギシさせて一階へと降りていく。春から一人暮らしをしていたから、人の気配があるだけで心がほっこり温かくなる。買ってきてくれた冷蔵のご飯はちゃんと冷蔵庫に深森が入れてくれたようで、「勝手にしてごめん」と謝ってくれたが卯乃も「こっちこそ流されてシャワーまで浴びた上に寝ちゃってごめんね」と謝って笑いあった。
冷房を切っていた一階はむわっと蒸し熱い。窓を開けたら風と共に雨が吹き込んできたので慌てて閉めた。向かい合って深森を上目遣いにじいっと見上げる。ニャニャモ似の瞳はいつ見ても飽きることがない。
(嬉しいなあ。一人で家にいてもつまらないんだもん。二日も連続で深森が家に居てくれるなんてすごく嬉しい)
なんだ? とでもいうように耳がぴくぴくっと動くのが可愛い。見つめすぎていたせいか、深森が屈んでまた唇にキスをしてきたから卯乃は後ろによろけて「あぶないな」と深森に背中に手をあて抱き寄せられた。
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