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★  入店音と共に聞こえるらっしゃーせーといつもの気の抜けた深夜バイトの声を聞き流しながらコンビニの中をいつものように物色する。弁当コーナーを見ていて惹かれたトンカツ弁当を手に取りかけて、そういえば立香が作り置きしたおかずを持ってきてくれていたんだと思い出した。  弁当を買うのはやめて、ドリンクコーナーの酒の棚からフルーツ酎ハイを二つ取り出してかごに入れる。スイーツコーナーも物色するが特にめざといものはなく、アイスコーナーでいつも通りモナカとバニラアイスに板チョコが挟んであるアイスをかごに放った。  レジに向かいカゴを上げると、夜勤バイトの男はだるそうに商品をかざしていく。 「年齢確認ボタンタッチおなしゃーす」  会計が機械で自動的に行われるようになってからコンビニの年確はますます緩くなって、まだ二十歳の誕生日を迎えていない湊の顔もろくに見ないままボタンタッチを促し会計を済ます。  あざっしたーと最後まで緩い声を聞きながらコンビニを後にする。もうすでに蒸し暑くなってきた六月の夜は夏の匂いがほのかに香った。  最寄駅すぐそばのコンビニから徒歩五分ほどで自宅マンションに着き、エントランスを通り自分のポストを確認してからパスワードを入力し開錠する。鍵で開ければいいのだが、リュックを下ろして中から取り出すのが面倒なので湊はいつも番号を打ち込んでロビーの鍵を開けている。  エレベーターで12のボタンを押し、閉を押す。奥の鏡にもたれかかってふう、と息をついた。少しの浮遊感の後、チン、と軽快な音を立てて開いたエレベーターから降りて一番右手の部屋へ向かう。部屋番号は1201。  玄関前に置いてある小さな鉢の中に隠してある鍵で部屋の鍵を開け、もう一度そこへ鍵を戻す。オートロックを信じ過ぎている、不用心だと立香には怒られるが、楽なので仕方ない。

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