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「父さん母さん、ただいま〜」
玄関の靴置き場の上に置いた両親の写真にそういいながら靴を脱ぐ。真っ暗な部屋の電気をつけてまわって、背負っていたリュックをベッド横に置いてキッチンに向かい、手を洗ってからさっきコンビニで買った酎ハイ一本とアイスを冷蔵庫へ入れる。
残りの酎ハイを机に起き、冷蔵庫の中に入った複数のタッパーの中からひとつ取り出し電子レンジで温めた後、冷凍ご飯も取り出して電子レンジで解凍した。
電子ポットに適当に水道水を入れて器には個包装された味噌汁の素を入れる。カチっと音がしてすぐその中に注ぎながら箸で混ぜると、味噌特有のいい匂いがした。
グラスに氷を満タンにいれてそこに外気で温くなった酎ハイを注ぎ、レンジから取り出したタッパーと茶碗に移し替えた冷凍ご飯を机に持っていって、テレビをつける。
「いただきます」
手を合わせて、タッパーの中に入っていた肉じゃがのじゃがいもを食べる。
「うま…」
味の染みたじゃがいもはほろほろとしていて、舌で触れると外側から分解されていく。肉もしらたきも美味しい。肉じゃがといえばレギュラーメンバーであろう人参がないのは、立香が湊の苦手なものだと知っているからだ。そして、変わり種のキャベツ。立香の旦那である竜司が好きなもの。
しなったキャベツを箸でつまんで、口に含む。立香の家でもきっと、今日はこのキャベツの入った肉じゃがが食卓に並んだんだろう。竜司はそれを上手い上手いと言いながら食べて、立香は幸せそうに微笑んだだろう。
ガリっ。
「いったあ!」
リップピアスのラブレットスタッドが下の歯に引っかかり悶絶する。半年経って安定してきた今も、気を抜くとピアスを噛んでしまい苦しむことがある。
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