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★ 「やっぱ後でセグメントに変えよう…」  リップピアスの三角キャッチはかなり気に入っていたが、服を着替える時や今みたいに噛んでしまうことが多く弊害が大きい。セグメントピアスはキャッチがなくワンタッチで閉じられるリング型のピアスで、噛むことも引っかかることもない。  どこに置いてたっけなあと頭の中の引き出しを開けたり閉めたりしながら食事を終え、風呂を沸かす。今日は立香が風呂掃除もしてくれていたので、栓をさしてお湯をはるだけだ。湊はなるべく湯船に浸かりたいタイプなので、眠たくて限界などという時以外は湯を張るようにしていた。  風呂が沸いたことを知らせる機械的な女の声を聞き、クローゼットから下着をバスタオルを取り出して洗濯機の上に置く。全裸で風呂場に入り全身鏡の前に立つと、服で隠れていた異様に白い身体に鈍い銀色が目に止まる。  最初に目につくのは右鎖骨の舌に沿うように開いたクラヴィクル。もうそろそろ排除されそうなそれを指で伝って、昼に引っ掛けたせいか少し赤くなっている臍のナベルに軽く触れる。  そして視線は陰性にまでさがる。平均か、それより少し小ぶりなその亀頭を、水平に貫通し左右からボール型のキャッチを覗かせているそこは、耐性のない人が見れば思わず顔を顰めてしまうだろう。本来は中央をつらぬくそれは、尿道をずらして開けたため排尿に問題はないが、開けた時はこの世のものとは思えないほどの激痛だった。  それでも、その痛みがあったから今、自分はなんとか生きていれるのだと思う。へにょん、と力のないそれに触れ、あの地獄のような心の痛みを代わりに担ってくれたことに感謝しながら、全ての思考を消し去るようにシャワーと全開にした。

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