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★  立香の指すスーパーはマンションから徒歩で二十分ほどの場所にある、大型ショッピングモールの一階に入っている。傘を差しながら走っていたら、その中間あたりで見慣れた姿を見つけた。 「お、湊ー!」  いつもはセットされている髪が雨にうたれペタンとして幼く感じる竜二の姿にドクンと心臓が大きく鳴った。側に駆け寄り自分が使っていた傘を伸ばしてその中に竜二を入れると、大きな口で歯を見せながら笑う。 「立香から湊が来てくれてるって連絡あったんだけどさー申し訳なくて」 「もー竜司さん、風邪引くよ…」  持っていた傘を渡そうとすると、感謝の言葉と共に「でももう意味ねーかも」と苦笑いされる。困った顔をしている湊を見兼ねた竜司が言う。 「じゃーコレ、いれて」  竜司は湊の伸ばした腕から傘をとり、湊と自分の間で持った。相合傘だ。家を出る瞬間、一瞬気の迷いで故意に作ろうとした状況になって、嬉しさと困惑が混ざる。傘を取るときに触れた手も、いつもよりずっと近い距離にも心臓がうるさく鳴る。触れたり離れたりするほど近い左半身が敏感になっているように感じた。 「湊、髪の毛すごいことなってる。さっきまで寝てたろ」  わしゃわしゃとスーパーの袋を持った手が伸ばされ寝癖に触れられると同時に、起きたときに見た鳥頭を思い出してサッと青ざめる。一番見られたくない人に見られた後悔と恥ずかしさで思わず手を跳ね除ける。 「急いできたんだし…!」  思わず竜司の方を見上げてキッと睨むが、優しく細められた目を見ると、好き過ぎて苦しくなった。 「そっか、笑ってごめん。ありがとな」  湊はやさしいなーとさっきとは違いなぐさめるように頭を撫でられて、また俯く。 「別に…いいよ…」  ぶっきらぼうな物言いしかできない自分に後悔しながら、たまに話をふられてその返事程度の、少ない会話をしながらマンションへ帰った。

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