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「みなとちゃん、やっと一緒に受けてくれるんだね」
にこにこと、男の湊に振り撒くには勿体無い綺麗な笑顔で見つめられるので、思わず顔を180度逸す。
この隣人には会いたくなかったが、もうすでに欠席回数が上限だったため来ないという選択肢はそもそもなかった。別の授業であればもう捨てていただろうけど、必修科目なので落とすと来年取り直さなければいけなくて面倒なのも大きな理由である。
「この授業、まじで課題大変だから今度こそ一緒にやってもらうよ」
そらした顔をガシっと掴まれて向き直され、圧のある笑顔でそう言われてはじめて前回言われたことを思い出した。
「ペアで課題出して点貰うの、俺だけ頑張ってんのフェアじゃないよね」
「す、すみません…」
言われていることは最もだ。湊だけ何もせずに単位が貰えるなんて虫が良すぎる。
「あの、今回からは俺ひとりで頑張るんで、」
むぎゅっと両頬を潰されたままそう告げると、いや、と遮られる。
「やらなきゃ頭入んないしせっかく勉強してんのに勿体無いじゃん。俺もやるよ」
「あ、はいすみません…」
なんという向上心だ。それに課題を二人分やらされていたのに憤ることもなく寛容さも感じる。
「だから、はい」
「…はい?」
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