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『14時にキャンパスの図書館で』
バイト終わり、終電でドアの端にもたれながら音楽を聴くためスマートフォンを開くと、LINEに簡潔なメッセージが届いていた。
『分かりました』
了承の旨とお辞儀のスタンプを送りアプリを閉じようとして、なんとなくアイコンをタップした。アイコンも背景写真も初期設定のままで、淡白な性格なのだろうなと考える。
今日の授業終わり塁は、今日は仕事あるから明日ね、と湊の予定も聞かずに颯爽と帰っていった。ちょうどバイトも入れておらず全休だったので良かったが、塁の強引さには少し戸惑った。しかし湊は文句が言える立場ではないので大人しく従うことにする。
そもそも仕事ってなんだろう。長期インターンとか…?
リュックサックを前に抱えて目を瞑りながら考えていたが、だんだんと音楽アプリのランキングトップ100からランダム再生して流れ出した曲の方に意識が向いていった。
今上映中の、大人気アニメの映画の主題歌。
♩次に逢える約束の日だけでいい
あなたの隣で素直に笑いたい
脳裏に竜司の笑顔が頭に浮かんで、そのすぐ隣に立香が現れる。二人とも笑顔で湊を受け入れてくれる。立香の笑顔を思い出すと、こんな気持ちをもっている自分が恥ずかしくて消えてしまいたくて、慌てて音楽を止めた。
ドアの窓から流れる景色を見る湊の反射した顔は、酷く醜く見えた。
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