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さっきまで身体をあたためてくれていた布団を放り投げて、蓮に抱き着く。
勢いのあまり鎖骨に強烈な頭突きをかまして蓮は呻いていたけれど、直ぐに抱擁して頭を撫でてくれる。
シャワーを浴びていたのだろう、微かな石鹸の匂いと湿った身体から素肌を通して体温が伝わってくる。
さして身長は変わらないのに、蓮に抱きしめられていると自分の方が小さく感じるのが不思議だ。
蓮の抱擁で胸の焦燥も不安も落ち着いた後、心地の良い心音を同じ位置で感じながら尋ねる。
「巽たつみさん、元気そうだった?」
「ん。進級祝いだってクレカの上限上げてくれた」
「え…そんな、今のままで十分っていうか、むしろ多すぎるくらいなのに」
「…使えるもんは使えばいいさ」
蓮の言葉に、怜は今この場にいない巽さんに恐縮する。
10歳の頃に両親を事故で亡くし、身寄りも無く施設に放り込まれるはずだった怜たちを保護してから七年間、今住んでいるマンションや学費諸々の金銭面を援助してくれている巽さんには感謝してもし切れない。
「事務所の手伝い、僕も出来ないかな」
「駄目だ。俺だけで十分足りてるって何度も言ってるだろ」
強い口調で諭されて押し黙る。
普段はこんなに荒い言葉で咎められることは無いが、このことに関してだけは蓮は頑なに拒む。
何度もしたこの押し問答の流れはもう分かってる。
なんで、と問えば俺の方が頭が良いからだの怜は理数がポンコツだからだの、要は頭の出来が違うから足でまといだと言われる。
当然、巽さんに迷惑をかけたい訳ではないから理不尽な言い方をされても黙るしかない。
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