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あのときから蓮は変わったと思う。
元々自分よりも怜を優先する蓮だったが、その度合いが目に見えて過剰になった。
蓮が自分を優先しているのが分かる度、胸が苦しくなる。
蓮が怜を思うのと同じくらい、怜も蓮が大切で同じように救いたいと、役に立ちたいと思っているから。
けれど蓮はそれを望まない。
怜が幸せになることが何よりも大事で、それが蓮の全部だって知っているから。
そうじゃないよ、そんなことしなくていいよって否定もできない。
それになにより、怜自身が蓮の存在に寄りかかって依存しきっている自覚がある。
さっきのように、いるはずの蓮がいない状況はたとえ数分でも耐えられない。
真っ暗で何も見えなくて聞こえなくて、怖くて堪らないとき、ずっと傍にいて手を握っていてくれたのは蓮だけだった。
怜にとって、光は蓮だけだったから。
蓮の言葉に何も返すことが出来ず、ただその心音を聞いていた。
ぐう、と怜のお腹が鳴るまでは。
「…………」
恥ずかしい。
空気を読めない腹の虫を心の中で叱責する。
「はは、そっか、もうとっくにお昼過ぎてたもんね」
俯いた怜の顔を覗き込んで、蓮は笑う。
蓮の言葉に、ゆっくりを顔を上げてテレビの上の時計を見ると、長針と短針は丁度3の位置に重なっていた。
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