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オペラ座のような派手で華美な装飾は何度見ても圧倒される。三階席の最前列だったのでクッション性の高い赤い座席に腰を下ろして下を覗き込むと、ぞろぞろと蠢き席を埋めていく人の姿がなんだか面白くて見ていると、無人だった一階席に特進コースが列をなして入ってくる姿が見えた。
一瞬、いつものように蓮の姿を探したがそういえば生徒会長になったのだからステージ裏にいるのだった、とすぐに興味がなくなる。
普通コースの教室がある東棟は大講堂と直結しているが、特進コースの教室がある西棟からは渡り廊下を渡らなければならず移動に時間がかかるのだ。
「げ!赤被ってる!」
同じく下を覗き込んでいた悠の声に、赤なんて在り来たりだよ、と返すと豊かな表情はがーん、と効果音がつきそうなほど消沈した。
「特進、相変わらず奇抜なやつばっかだぜ」
「あっちも悠には言われたくないと思うけど…」
手摺に頬を乗せながら適当に返事して数分、ふっと講堂内の光が消えて一階にあるステージが照らされる。舞台袖から学長が出てきて演台の前に立ち、開式の言葉と形式だけの生徒達の安寧を述べすぐに引っ込んだ。年の割にしっかりとした足取りで貫禄を感じる。
司会の、次に新会長からの挨拶です、という言葉と共に舞台袖から出てきた蓮の姿をみてばっと笑顔で頭を上げたが、その後に続いて出てきた男を見てすぐに怜の眉間に皺が寄る。
その男は、演台の前まで歩いて止まった蓮の隣に立ち、マイクが少し低いことに気付いたのか蓮の身体の前に入ってスタンドの高さを調節した。艶のある細い黒髪がサラサラと落ち、端正な顔立ちに影を落とすとハッとするような色気を醸し出す。
声は当然聞こえないけれど、ありがとう千景、と動いた口元といつも自分に向けられている優しい微笑みが向けられているのを見ると、墨の滴が垂れてじんわりと広がっていくようなどす黒い嫌な気持ちになった。
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