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身体が浮いて思わず強張ったが、逞しい腕に抱かれているのを感じて安心する。意識が浮いたり沈んだりして心地よい微睡みに浸っている中、ふわりと鼻腔を満たすのは甘い金木犀の香りで、いつまでも嗅いでいたいと思った。
くしゅん、とクシャミをひとつしてすん、と鼻を啜るとより香りが濃密になり、とくとくと心臓が少し駆け足になった。
「…俺がベッド使ってたせいで冷えちゃった?ごめんな」
ゆっくりと身体が柔らかなベッドに降ろされる感覚がする。まぶたを開こうとするけど、眠気が勝ってしまい意識がまた沈んできた。
布団をかけられ、心地よい重さと温もりにほっと息をはくと、顔にかかった髪をさらりととかれる感覚がする。どうしてこんなに安心感があるのだろう。もっと撫でていて欲しくて、すり、と頭を寄せると、ふっと笑った声が聞こえてまた撫でてくれる。
心地よいその手と香りを感じながら、怜は再び意識を手放した。
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