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誰かに頭を撫でられている。優しくて、安心する手。ゆっくりとまぶたを開くと、ベッド横のパイプ椅子に座っている蓮と目があった。
「…れん…」
「おはよう、怜」
「…おはよう」
蓮だ。思わず頬が緩んでにこにこしてしまう。
「悠から倒れたって聞いて驚いたよ。昨日無理させたから」
怜の頭を撫でながらごめん、と謝る蓮に、ううん、と首を緩く振る。
「ただのいつもの貧血だよ」
すり、と蓮の手に頭を寄せてじんわりと伝わる温もりを堪能する。言葉は交わさず窓からはいる心地の良い風に吹かれながら、穏やかな時間の流れを感じる。
最終下校時間の15分前を知らせる校歌が放送され始め、朝一の学年集会からどれだけ寝ていたのかと驚く。
ガラガラと保健室のドアが開かれ、先生がコントラクトカーテンから顔を覗かせた。歩いて帰れる?先生が送ろうか?と言ってもらえたけれど、良く寝たおかげかふらつきも無く、蓮と帰れるのは貴重なので丁重にお断りした。
散る桜の雨を浴びながら、怜のカバンを持ってくれている蓮の指先に触れると、蓮は優しい笑みと共にぎゅっ、と力強く握ってくれる。嬉しくてまた頬が緩む。
「そういえば、蓮がベッドまで運んでくれたの?」
「え?」
「蓮がそばにいて頭撫でてくれてるの、夢だと思ったらほんとだった」
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